肺NTM症におけるCPA合併


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多施設共同研究により、日本から大規模なエビデンスが示されました。





  • 概要
■肺NTM症に合併するCPAが近年注目されており、CPAは予後不良と関連し、臨床上無視できない合併症である。

■本研究は、日本の九州地方の18の急性期医療機関において、2010年から2017年の間に新たに診断された肺NTM症を対象に、CPAの合併率、危険因子、ならびに長期予後への影響を明らかにすることを目的とした後ろ向き観察コホート研究である。

■対象となったのは1304例であり、診断基準には日本結核・非結核性抗酸菌症学会の2008年基準を用いた。CPAの診断には日本の深在性真菌症診療ガイドライン2014年版を採用し、画像所見、血清学的検査、培養などに基づいて診断された。

■観察期間中央値は59か月であり、その間にCPAを合併した患者は45例(3.5%)であった。CPAの発症時期は肺NTM症の診断前、診断時、診断後に分かれており、中央値で26か月後にCPAを発症していた。CPAの病型としては、単純アスペルギローマが3例、慢性進行性肺アスペルギルス症(CCPA、CFPA、SAIA)が42例であり、後者が大多数を占めた。

■治療としてはボリコナゾールが最も多く用いられており、相互作用のためにNTM治療の変更を余儀なくされた例も5例確認された。

■CPA合併の危険因子については、多変量ロジスティック回帰分析の結果、男性、COPDの合併、経口ステロイドの使用、空洞形成の4項目が独立したリスク因子として特定された。

■特に空洞形成はCPA発症と強く関連しており、画像上の所見が重要な診断手がかりとなる。NTMの原因菌としてはM. intracellulareが最も多く(50.4%)、続いてM. avium(40.5%)であった。

■一方、CPAの原因菌はA. fumigatusが最多(60.1%)であり、A. niger、A. terreus、A. flavusなどが他に確認された。

■予後に関しては、CPAを合併した患者では、非合併群と比較して全死亡率が有意に高く、観察期間中の死亡率は55.6%であった。

■ロジスティック回帰モデルから得た因子に基づいて傾向スコアマッチングを行い、年齢、性別、COPD、ステロイド使用、空洞形成の5項目でマッチさせた後の解析でもCPA合併は独立した予後不良因子であることが示された(調整後ハザード比1.59、p=0.036)。

■CPA合併率は先行研究と比較してやや低めであるが、これは多施設共同研究であり、軽症例を含む症例の代表性が高いためと考えられる。また、CPAの診断には施設間で一定のばらつきがある可能性があるものの、本研究に参加した施設はいずれも気管支鏡検査および真菌抗原抗体検査が実施可能であったため、診断能力の差による影響は限定的と考えられる。

■本研究により、肺NTM症においてCPAを合併する頻度は3.5%程度であり、リスク因子としては男性、COPD、経口ステロイド使用、空洞形成が独立して関連していることが明らかとなった。CPAの合併は独立した予後不良因子であり、特にリスク因子を有する症例においては、CPAの合併を早期に疑い、適切な診断と治療を行うことが重要である。





by otowelt | 2025-06-28 00:41 | 感染症全般

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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