BMIが非嚢胞性線維症気管支拡張症に与える死亡リスク

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低体重が非嚢胞性線維症気管支拡張症の予後を悪化させる一方で、過体重や肥満がむしろ予後を改善するという“肥満パラドクス”の存在を示しています。





■非嚢胞性線維症気管支拡張症(non-CF bronchiectasis)は、気道の不可逆的な拡張を特徴とし、慢性咳嗽、喀痰産生、反復する呼吸器感染や増悪などの症状を伴う慢性呼吸器疾患である。その罹患率は米国、欧州、中国、韓国をはじめとした各国で増加しており、COPDや喘息に次ぐ三番目に多い慢性気道疾患となっている。これまでの研究では、年齢、高頻度の増悪、併存疾患、1秒量低下、緑膿菌の定着、呼吸困難の進行などが予後不良因子として報告されてきた。加えて、低体重(BMI<18.5)は死亡率や入院率の上昇と関係していることが示されている。しかし、過体重や肥満が予後に及ぼす影響については議論が分かれており、明確な結論は得られていない。

■本研究では、世界規模のリアルワールドデータベースを用い、BMIが気管支拡張症患者の転帰に与える影響を明らかにすることを目的とした。

■本研究は後ろ向きコホート研究であり、TriNetXのデータベースを用いて、2012年から2017年にかけて非嚢胞性線維症気管支拡張症と診断された18歳以上の患者を対象とした。2002〜2011年の診断例はウォッシュアウト期間として除外され、嚢胞性線維症診断歴のある患者も除外された。対象はBMIによって以下の4群に分類された:低体重(<18.5)、正常体重(18.5–24.9)、過体重(25–29.9)、肥満(≥30)。

■主要アウトカムは5年間の全死亡率とし、副次的アウトカムには、集中治療の必要性、肺炎、結核またはNTM症の罹患、急性増悪、急性呼吸不全、人工呼吸器使用、人工呼吸器依存状態を設定した。

■解析対象となったのは14,469例であり、BMI分類別には以下のように分布していた:低体重974例(6.7%)、正常体重5,925例(40.9%)、過体重2,494例(17.2%)、肥満5,076例(35.1%)。

■正常体重群と比較して、低体重群は有意に死亡率が高く(24.3% vs 15.3%、HR 1.83、95%CI 1.49–2.25、p=0.0150)、一方で過体重群(16.6% vs 21.4%、HR 0.77、95%CI 0.68–0.88、p=0.0138)および肥満群(16.8% vs 20.2%、HR 0.79、95%CI 0.71–0.87、p=0.0356)は、いずれも死亡率が低かった。

■副次アウトカムでは、低体重群で以下の有害転帰のリスク上昇が認められた:集中治療の必要性(HR 1.59)、肺炎(HR 1.44)、急性呼吸不全(HR 1.34)、人工呼吸器の使用(HR 1.68)。NTM感染や気管支拡張症の急性増悪、人工呼吸器依存状態についてもリスク上昇傾向がみられたが、統計的有意差には至らなかった。 一方、過体重および肥満群ではこれら多くの副次アウトカムがむしろ改善していた。たとえば過体重群では、肺炎(HR 0.71)、NTM感染(HR 0.42)、急性増悪(HR 0.61)などのリスクが有意に低く、肥満群でも同様の傾向が確認された。さらに、過体重群と肥満群を直接比較したサブグループ解析では、肥満群で肺炎や呼吸不全のリスクが相対的に高かったものの、NTM感染リスクは有意に低かった。

■低体重は非嚢胞性線維症気管支拡張症における死亡率や多くの有害転帰のリスクを高める一方、過体重や肥満はそれらのリスクを低下させる可能性がある。これらの知見は、臨床におけるリスク評価や栄養介入の検討に資する可能性があるが、BMIの上昇が実際に転帰を改善するかどうかについては、今後の前向き研究での検証が必要である。





by otowelt | 2025-07-15 00:41 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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