日本の多くのICUでは家族面会が制限されている

日本の多くのICUでは家族面会が制限されている_e0156318_00033254.png

家族を「訪問者」ではなく「ケアの一部」として捉える視点が、ようやく日本のICUにも求められていることを、この調査は浮き彫りにしています。医療の高度化が進む一方で、家族へのまなざしはまだ制度設計の周縁に置かれています。




■日本の三次救急医療機関におけるICUでの家族面会方針および待機室の整備状況を多施設横断的に調査したものである。

■研究は、厚生労働省が認定する全国292の三次救急医療機関に対して郵送およびWebを併用した質問票調査として2024年8月に実施された。回答率は51.7%(151施設)であり、主に地域中核病院(75.2%)からの回答が得られた。調査では、ICUの面会時間の制限や面会人数の制限の有無、待機室の設備状況、プライバシーへの配慮などを尋ねた12項目の設問が含まれていた。

■多くのICU(79.5%)では面会時間を午後の数時間に限定し、同時に面会可能な家族数も制限していた(最大2~3名が中央値)。一方で、患者の病状悪化時(80.8%)や終末期(79.5%)には柔軟な対応が行われていた。また、夜間に呼ばれた家族が院内で休息できる設備を持つ施設は半数にとどまり、ベッドサイドの簡易ベッド(15.2%)や院内の専用部屋(20.5%)の提供は限定的であった。

■ 家族待機室に関しては、回答施設の95.4%(144施設)が設置していたが、その多くが50㎡未満の狭小空間であり、基本的な家具(椅子96.5%、テーブル76.4%)は整っているものの、読書材料(13.9%)、仮眠スペース(10.4%)、調理設備(3.5%)、シャワー(2.1%)、冷蔵庫(0.7%)などの付加的な設備はきわめて乏しかった。また、プライバシーが確保されていると報告した施設は全体の32.6%に過ぎず、開放的なロビータイプの待機室が38.2%と最も多かった。

■ベッド数やICU病床数による施設規模の違いが面会方針や待機室設備に影響を与えているかの検討では、有意差はほとんど見られなかった。ただし、待機室の設置場所についてはICU病床が10床未満の施設で異なる階に待機室を設置している割合が高く(8.3%)、これは病院構造上の制約を反映している可能性がある。

■本研究は日本のICUにおいて依然として家族面会が制限され、待機室の設備やプライバシー確保が不十分であることを明らかにした。家族の満足度向上とPICS-F予防の観点からも、訪問時間や人数制限の見直し、待機室の物理的・心理的環境の整備が喫緊の課題であるといえる。これにより、真に家族中心のICUケアが日本でも実現されることが期待される。





by otowelt | 2025-07-18 00:57 | 集中治療

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー