IPFに対する抗線維化薬:気腫合併の有無は予後と関係するか?

IPFに対する抗線維化薬:気腫合併の有無は予後と関係するか?_e0156318_23414699.png

過去の研究では気腫合併が予後不良因子であるとする報告と、差がないとする報告が混在していましたが、本研究はアジアのリアルワールドデータとして後者を支持するものです。




  • 概要
■本研究は、抗線維化薬治療を受けたIPF患者において、気腫合併の有無が長期予後に及ぼす影響を明らかにする目的で実施された多施設後ろ向きコホート研究である。対象は2015年から2022年にかけて台湾7施設で診断されたIPF患者であり、ニンテダニブまたはピルフェニドンを6か月以上使用した症例が登録された。胸部HRCTによって10%以上の肺野に気腫を認めた症例を「IPF with emphysema」と定義し、それ以外を「IPF only」とした。


■研究に組み込まれた患者は275例であり、そのうち149例(54.2%)がIPFのみ、126例(45.8%)が気腫合併IPFであった。気腫合併群は男性比率が高く(95.2% vs 69.1%)、喫煙歴を有する割合も多かった。またばち指や合併症の頻度も高く、HRCT上のUIPパターンをより明確に呈していた。呼吸機能においては、FVCおよびFEV₁は高値であったが、FEV₁/FVCは低値を示した。DLCOについては両群で有意差を認めなかった。


■全体の追跡中央値は3.7年であり、全死亡率はIPFのみ群45.6%、気腫合併群48.4%と差はなかった。Kaplan–Meier解析でも全生存率に有意差はなく、両群の長期予後は同等であることが示唆された。ただし、画像パターンおよびDLCOに基づく層別解析では差がみられた。すなわち、probable UIPの患者はdefinite UIPと比較して生存率が有意に良好であり(53.5% vs 34.6%)、またDLCOが49%以上の群は49%以下の群に比べて予後が良好であった(53.9% vs 31.4%)。


■多変量Cox回帰解析によれば、低BMIは死亡率の上昇と関連していた。また肺高血圧症の併存は死亡リスクを2倍以上に増加させることが明らかとなった。他方、気腫合併そのものは独立した予後不良因子とはならず、また使用された抗線維化薬の種類(ニンテダニブまたはピルフェニドン)による差はなかった。


■死亡原因の内訳としては、肺炎などの感染症が最も多く(65.9%)、次いで悪性腫瘍(10.9%)、COVID-19(7.8%)が続いた。


■結論として、本研究は台湾における多施設後ろ向きコホートの解析から、抗線維化薬治療を受けるIPF患者において、気腫合併の有無は長期予後に影響せず、低BMIと肺高血圧症が独立した死亡予測因子であることを明らかにした。






by otowelt | 2025-08-27 07:11 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31