非HIVにおけるPCP、高リスク薬剤以外の原因が増加
2025年 09月 12日
PCPの常識が経年的に変わってきている、と主張する報告です。
- 概要
■2016年11月から2023年11月まで、台湾の国立台湾大学病院本院および関連6施設において、18歳以上の非HIV患者PCP症例を収集した。診断はEORTC/MSGERC 2021年基準に基づき、臨床症状・画像所見・宿主因子とともに、喀痰または気管支洗浄液のPCR陽性(Ct値<30)によっておこなわれた。HIV感染例および小児例は除外した。
■対象患者は薬剤曝露歴に基づき、①既知の高リスク薬剤群(抗白血病薬、プリンアナログ、高用量ステロイド、抗CD20抗体、チェックポイント阻害薬、JAK阻害薬など)、②疑いリスク薬剤群(化学療法、免疫療法、分子標的薬、DMARDs、mTOR阻害薬、カルシニューリン阻害薬など)、③リスク薬剤なし群、に分類された。
■また基礎疾患として、造血器悪性腫瘍、固形癌、自己免疫疾患、移植、複数疾患を区別した。
■主要評価項目は臨床像、治療、予後であり、60日死亡率をKaplan-Meier曲線で比較した。
■最終的に470例が抽出され、HIV症例80例と小児13例を除外し、420例が解析対象となった。全体の平均年齢は62.3歳で、男性が63%を占めた。群別では、既知高リスク薬剤群が209例(49.8%)、疑いリスク薬剤群が106例(25.2%)、リスク薬剤なし群が105例(36.9%)であった。注目すべきは、2016年には既知高リスク薬剤群と非該当群がほぼ同数であったが、2023年にはリスク薬剤を持たない症例が61%に達し、年々増加していたことである。基礎疾患の推移を見ると、従来優勢であった造血器悪性腫瘍から固形癌へと主役が移行していた。
■臨床像として、全体の74.8%が呼吸不全に陥り、61.2%がICUに入室、53.3%が人工呼吸管理を要した。ショックは42.1%に発生し、極めて重篤な病態であった。60日死亡率は43.8%、院内死亡率は51.0%と高値であり、薬剤群間での差は有意ではなかったが(P=0.08)、基礎疾患別では固形癌群が最も不良で、60日死亡率58%、院内死亡率62.7%を示した。一方、造血器腫瘍や自己免疫疾患群では死亡率がやや低い傾向を示した。
■薬剤別の分布をみると、既知高リスク薬剤の中では高用量ステロイドと他の免疫抑制薬併用が最多であった。造血器腫瘍では抗白血病薬が主であったのに対し、固形癌では化学療法や免疫療法、分子標的薬が中心であった。移植群ではカルシニューリン阻害薬、mTOR阻害薬、プリン合成阻害薬が主体であった。また年齢別解析では、PCPの発症は55〜64歳にピークを持つが、高齢になるほどリスク薬剤非該当例の割合が増加し、85歳以上では35%がリスク薬剤非該当であった。これは加齢そのものがリスク因子となりうる可能性を示唆している。
■本研究は、非HIV患者におけるPCPが従来のリスク枠組みを超えて拡大していることを示した。すなわち、既知の高リスク薬剤を用いない患者が近年増加し、固形癌が造血器悪性腫瘍を凌駕して主要な基礎疾患となった。高齢者や併存症を多く有する患者でもPCPが発生しており、死亡率は依然として高い。
by otowelt
| 2025-09-12 02:24
| 感染症全般










