CLEAR試験:気管支拡張症に対する高張食塩水・カルボシステイン


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ERSで話題になった論文の1つです。

論文にあるように、EMBARCでは、28か国16,723人の患者のうち28.0%が粘液溶解薬(去痰薬)を使用しており、内訳はカルボシステインとN-アセチルシステインが17.2%、ネブライザー高張食塩水が8.6%という状況でした。有効性エビデンスの不足が、使用法の不統一をもたらしている主要因と考えられていました。

そこで実施されたのがCLEAR試験です。




■これはイギリスの20施設で実施されたオープンラベルの2×2因子試験であり、非嚢胞性線維症の気管支拡張症で日常的に喀痰を産生し頻回の肺増悪既往を有する成人を対象とした。被験者は標準治療を受けることを前提に、6%高張食塩水(吸入)群、カルボシステイン(経口)群、両者併用群、標準治療のみ群のいずれかに割り付けられ、主要比較は「高張食塩水あり vs なし」と「カルボシステインあり vs なし」で行われた。主要アウトカムは52週における独立委員会によるEMBARC基準に基づく「完全適格な肺増悪件数」であった。試験は2018年に開始されCOVID-19パンデミックの影響を受けたが、登録は継続され最終的に288例がランダム化された。

■ベースラインの特徴は群間で概ね均等であり、平均年齢は約65〜66歳、女性比率は約60%であった。人種構成は白人が大多数を占め、喫煙歴のない者が約60%前後であった。参加者の約3分の2弱は既に何らかの気道クリアランス療法を行っており、緑膿菌の慢性定着は約11〜14%にみられた。

■主要解析の結果、修正ITTにおける52週の調整平均増悪回数は、高張食塩水使用群で0.76回(95%信頼区間 0.58–0.95)、非使用群で0.98回(95%信頼区間 0.78–1.19)であり、群間の調整平均差は−0.25(95%CI −0.57〜0.07、P=0.12)であった。カルボシステインの比較では使用群が0.86回(95%CI 0.66–1.06)、非使用群が0.90回(95%CI 0.70–1.09)であり、差は−0.04(95%CI −0.36〜0.28、P=0.81)であった。いずれの比較でも統計学的に有意な増悪抑制効果は確認されなかった。

■安全性に関しては、全体の有害事象および重篤な有害事象の総発生率に有意差はなかった。高張食塩水群で16人(17件)の重篤事象、非高張群で19人(22件)の重篤事象が報告され、群間差は統計学的に有意ではなかった(相対リスク 0.8、95%CI 0.4–1.5、P=0.53)。カルボシステイン群でも重篤事象の発生は使用群20人(24件)、非使用群15人(15件)で有意差はなかった(相対リスク 1.3、95%CI 0.7–2.5、P=0.37)。

■現時点で6%高張食塩水吸入および経口カルボシステインを気管支拡張症の全例に対するルーチン治療として導入するための確固たるエビデンスは示されなかった。







by otowelt | 2025-10-04 00:08 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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