肺非結核性抗酸菌症の診断時の喀痰、非膿性でも差し支えない?

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飯塚病院の花香先生らの報告です。学会で発表されていたときから、論文化を待っておりました。当院からも類似の報告をしており、支持的な結論となっていることから、この議論は堅牢と考えられます。


■肺NTM症の診断には2回の喀痰培養からの菌分離が重要な基準となる。しかし、肺NTM症患者では、喀痰喀出が困難で、診断が遅延することがある。

■喀痰の質は呼吸器感染症の細菌学的評価において重要であり、日本ではMiller&Jones分類が広く使用されている。この分類では、M1-2と評価された検体は唾液含有量が高く、細菌学的分析に不適切とみなされる。質の低い喀痰は不正確な病原体同定を招き、不適切な治療や医療費増加につながる可能性がある。


■この横断研究は飯塚病院で実施され、2021年9月から2022年9月の間に肺NTM症と診断された連続患者54名から得られた158の喀痰検体を解析した。喀痰の質はMJ分類に基づいて評価された。分類はM1(唾液または完全粘液性)、M2(少量の膿を含む粘液性)、P1(軽度膿性)、P2(中等度膿性)、P3(著明膿性)の5カテゴリーである。検査にはオーラミン蛍光染色、MAC-PCR、液体培地による抗酸菌培養が含まれた。分離株はMALDI-TOF MSで菌種同定された。


■患者の年齢中央値は76.3歳で、女性が72%を占めた。最も頻繁に同定された病原体はM. avium(48%)とM. intracellulare(35%)であった。胸部CTでは空洞性病変が35%に確認された。26%の患者が喀痰採取時に治療を受けていた。


■喀痰検体の分布は、M1が15%、M2が48%、P1が20%、P2が10%、P3が7%であり、非膿性喀痰(M1とM2)が全体の63%を占めた。オーラミン蛍光染色の陽性率は全体で8.9%であり、M2検体で13.2%と最も高かったが、喀痰の質と染色陽性率との関連は統計的に有意ではなかった(p=0.23)。MAC-PCR検査は46検体で実施され、32%が陽性であったが、喀痰の質との有意な関連は認められなかった(p=0.46)。抗酸菌培養は48.7%で陽性であり、M1で33.3%、M2で51.3%、P1で48.4%、P2で56.3%、P3で54.5%の陽性率を示した。培養陽性率と喀痰の質との間にも統計的に有意な関連は認められなかった(p=0.55)。細菌の共検出は19検体(12%)で観察され、膿性喀痰(P2とP3)で有意に高率であった(p=0.0008)。Pseudomonas aeruginosaが最も頻繁に検出された。


■本研究は、非膿性喀痰でも臨床的に有意義なNTM検出率が得られることを示している。培養陽性率はM1で約33%、M2で50%以上であり、喀痰の膿性は診断精度と関連しなかった。これは、膿性喀痰が微生物学的診断に不可欠であるという従来の見解に異議を唱えるものである。これらの知見は、特に軽度または非空洞性肺NTM症患者において、膿性にかかわらず繰り返し喀痰提出を推奨することを支持するものである。




by otowelt | 2025-10-25 11:42 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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