肺MAC症に対するシタフロキサシンは有効?
2025年 11月 21日
東邦大学医療センター大森病院卜部先生らの報告です。最近たくさん研究をアウトプットしていて、すごいなと関西のほうから熱い視線を送っております。
Discussionにもあるように、Fujitaら: 44.4% Asakuraら: 23%よりも本研究の培養陰性化率は低いです。過去の研究は対象となった観察期間が短く、過大評価の可能性があると指摘しています。
- 概要
■ニューキノロン系抗菌薬(FQ)は、in vitroおよびin vivoにおいて抗MAC活性を示すことが知られており、中でもシタフロキサシン(STFX)は他のFQと比較して強力な抗MAC活性を有することが報告されている。それにもかかわらず、肺MAC症治療におけるSTFXの臨床的有用性に関するデータは乏しく、現行のガイドラインでも推奨治療には含まれていない。
■本研究では、肺MAC症患者に対しSTFXを含むレジメンを6ヶ月以上投与した場合の臨床的有効性を評価することを目的とした。
■2015年1月から2024年3月までに東邦大学医療センター大森病院において、STFXを含むレジメンによる治療を6ヶ月以上継続した肺MAC症患者50例を対象とした単施設後ろ向きコホート研究である。外科的切除を行った症例や他菌種との混合感染例は除外された。
■対象患者は、STFX導入のタイミングと適応に基づき以下の4群に分類された。第1群は定義:手術例1例を除外した全症例(49例)である。第2群は、標準治療(GBT)の開始から6ヶ月以上経過した時点でSTFXが追加された群(初期から併用した群を除外)(40例)である。第3群は、標準治療中に画像が悪化、または改善が乏しかった(minimal improvement)群(38例)である。第4群は、STFX開始時点で、喀痰培養陽性が持続していた群(=菌が消えていない群)(19例)である。
■主要評価項目は、STFX開始6ヶ月後の「画像的改善(NICEスコアで評価)」、「菌陰性化」、「自覚症状の改善(CATスコアで評価)」とした。なお、本研究は後ろ向き研究であり喀痰採取が不定期であったため、菌陰性化の定義は「4週間以上の間隔をあけた2回連続の培養陰性」という独自の基準を用いた。
■患者背景として、年齢中央値は68歳、女性が82%を占めた。画像パターンは結節・気管支拡張型が主体であり、非空洞性が56%、空洞性が32%であった。CAM耐性菌は検査された株の14%に認められた。STFX導入の主な理由は、胸部CT所見の悪化(56%)および持続的な培養陽性(40%)であった。
■各群における治療成績は全体的に低調であった。 第1群(全体)では、画像改善率18.4%、症状改善率19.1%、菌陰性化率20.0%であった。 第2群(GBT開始6ヶ月以降に追加)では、それぞれ12.5%、20.0%、12.5%であった。 第3群(画像増悪例)では、それぞれ13.2%、18.4%、13.3%であった。 第4群(排菌持続例)においては、画像改善5.3%、症状改善15.8%、菌陰性化は評価可能であった16例中2例(12.5%)にとどまった。
■第1群における画像改善に関連する因子の解析では、単変量解析において「GBT開始後6ヶ月以内の早期STFX導入」がオッズ比5.6で有意な関連を示した。しかし、早期導入例の多くは初回治療からSTFXを併用していたため、これはSTFX単独の効果というよりは初期治療全体の効果を反映している可能性が示唆された。
■第4群(難治性排菌例)において菌陰性化を達成した2例はいずれもCAM感受性株であり、エタンブトールが併用されており、かつ非空洞性であった。この3つの条件が揃った症例においてのみ、STFXの上乗せ効果が期待できる可能性が示された。
■本研究の結果は、STFXの有効性がこれまでの報告と比較して限定的であることを示した。先行研究であるFujitaらやAsakuraらの報告では、菌陰性化率や画像改善率がより高値であったが、本研究は6ヶ月以上の長期投与例に限定しており、より現実的な臨床効果を反映していると考えられる。
■難治性肺MAC症に対するALISの治療成績(CONVERT試験での陰性化率29%、日本の実臨床データで約58%)と比較しても、本研究でのSTFX追加による陰性化率12.5%は明らかに劣っている。このことから、難治性肺MAC症の治療においてSTFXは第一選択とはなり得ず、アミノグリコシド系薬が使用できない場合の代替薬という位置づけが妥当であると考えられる。 また、近年FQの使用によりEBを省略することの弊害や、マクロライド耐性化のリスクが指摘されている。本研究で陰性化した症例がEB併用例であったことからも、STFXを使用する場合であってもEBの併用維持が重要であることが再確認された。
by otowelt
| 2025-11-21 00:30
| 抗酸菌感染症











