血清反応陽性関節リウマチでは肺NTM症リスクが高い


血清反応陽性関節リウマチでは肺NTM症リスクが高い_e0156318_10160201.png

気管支拡張症についてはRAとの関連が指摘されていますが、肺NTM症も、という結論です。

参考記事:関節リウマチ患者では気管支拡張症のリスクが一般集団の2倍高い(URL:https://pulmonary.exblog.jp/30645875/




■韓国の国民健康保険サービス(NHIS)のデータベースを用いた大規模な縦断的コホート研究「関節リウマチと肺非結核性抗酸菌症のリスク:全国縦断コホート研究」である。本研究は、関節リウマチ(RA)患者における肺非結核性抗酸菌症(肺NTM症)の罹患率とリスクを、年齢および性別をマッチさせた対照群と比較検討し、さらにRAの血清学的状態(血清反応陽性および陰性)がそのリスクに与える影響を明らかにすることを目的としている。

■これまでにもRAと肺NTM症の関連を示唆する研究は散見されたが、それらの多くはサンプルサイズが小さい、横断的研究である、対照群が欠如している、あるいは肥満度(BMI)や喫煙状況といった重要な交絡因子の調整が不十分であるといった限界を有していた。加えて、RAの血清学的状態(リウマチ因子や抗CCP抗体の有無)まで考慮した研究は極めて限定的であったため、本研究のような包括的なデータを用いた大規模な縦断的解析が実施された。

■研究チームは2010年から2017年の間にRAと診断された20歳以上の患者60,315名と、それらに年齢と性別を1:5の割合でマッチさせた非RA対照群301,575名を特定した。RAの定義については、ICD-10コードによる診断に加え、DMARDs(従来の合成DMARDs、生物学的製剤、または分子標的薬)の処方が180日以上あること、あるいは血清反応陽性RA(SPRA)の場合はリウマチ因子または抗CCP抗体が陽性であることを要件とする希少難病(RID)プログラムへの登録を確認するなど、厳格な基準を用いることで診断の妥当性を高めている。また、肺NTM症の発症についても、ICD-10コード(A31.0)の新規請求に加え、1年以内に少なくとも2回の外来受診または入院があることを条件とし、一過性の分離や誤診を排除する工夫がなされている。

■解析にあたっては、年齢、性別、所得、喫煙歴、飲酒習慣、身体活動、BMIに加え、糖尿病、高血圧、脂質異常症、慢性腎臓病、気道疾患(喘息、COPD、気管支拡張症)、結核既往といった多岐にわたる変数を共変量として調整し、交絡バイアスの最小化が図られている。

■結果、追跡期間の中央値4.5年(IQR2.6-6.4年)において、RA群では0.23%(147例)、対照群では0.06%(189例)が肺NTM症を発症したことが明らかとなった。これを1000人年あたりの罹患率に換算すると、RA群で0.54、対照群で0.14となり、RA群における発症率は対照群の約4倍に達していた。

■交絡因子を調整した多変量Cox比例ハザード回帰分析の結果、RA群全体における肺NTM症の発症リスクは対照群と比較して3.11倍(95%信頼区間 2.50-3.88)と有意に高いことが示された。

■累積発生率曲線においても、RA群は対照群と比較して有意に高い肺NTM症の発生率を示しており(ログランク検定 p<0.001)、RA患者が肺NTM症の高リスク群であることが示された。

■RA患者を血清反応陽性(SPRA)と血清反応陰性(SNRA)に分類して解析を行ったところ、SPRA群における肺NTM症の発症率は1000人年あたり0.70であったのに対し、SNRA群では0.17にとどまった。対照群と比較した調整ハザード比においては、SPRA群では3.77倍(95%信頼区間 3.00-4.73)と高いリスク上昇がみられた。その一方で、SNRA群においては、調整ハザード比が1.18(95%信頼区間 0.68-2.04)であり、対照群と比較して統計学的に有意なリスク上昇は確認されなかった。SPRA群とSNRA群を直接比較した場合でも、SPRA群のリスクはSNRA群の3.25倍(95%信頼区間 1.87-5.66)と有意に高かった。

■この知見は、RAという診断そのものよりも、血清反応陽性という病態生理学的特徴が肺NTM症のリスク増大に深く関与している可能性を示唆している。これまでの研究ではRA全体としてのリスクは議論されてきたものの、血清学的状態による明確なリスク差を示したのは本研究が初めてであり、臨床的意義は大きいと言える。台湾の研究ではRA患者の肺NTM症リスクが4.2倍から6.2倍と報告されており本研究の結果と類似しているのに対し、カナダの研究では2.1倍とやや低い値が報告されている。この差異については、人種的な感受性の違いや、BMIなどの交絡因子の調整の有無が影響している可能性が考えられる。アジア人は他民族に比べて肺NTM症のリスクが高いことが示唆されており、本研究の結果はアジア人RA患者におけるリスク管理の重要性を強調するものとなっている。

■本研究はRA患者、特には血清反応陽性RA(SPRA)患者において肺NTM症の新規発症リスクが有意に高いことを、大規模なコホートデータを用いて実証した。





by otowelt | 2025-12-14 00:02 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28