特発性肺線維症の死亡:世界の動向


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皆さんご存知の、原田洸先生らの論文です。




■本研究は、2001年から2022年における特発性肺線維症(IPF)の死亡率の世界的傾向を、WHO死亡統計データベースを用いて分析した観察研究である。期間中にデータが利用可能であった64か国を対象とし、IPF関連死亡を特定した。

■対象期間中に合計87万4,998人のIPF関連死亡が確認された 。世界的な粗死亡率(人口10万人対)は、2001年の2.10(95%信頼区間 1.77-2.43)から2022年には3.14(95%信頼区間 2.71-3.57)へと上昇した。一方、年齢構成の変化を調整した年齢調整死亡率については、2001年の1.41(95%信頼区間 1.24-1.58)から2018年に1.59(95%信頼区間 1.51-1.67)でピークに達した後、2022年には1.57(95%信頼区間 1.35-1.79)へとわずかに減少した。

■50〜54歳の粗死亡率が10万人当たり0.72に過ぎないのに対し、60〜64歳で2.98、70〜74歳で11.07、80〜84歳では28.86と急峻に上昇した。全死亡の87.5%が65歳以上で発生しており、IPFが高齢者に偏在する疾患であることが改めて確認された。また、性別では男性の死亡が全体の57.0%を占め、年齢調整死亡率も一貫して男性の方が高かった。男性の年齢調整死亡率が2001年の1.83(1.62–2.04)から2022年の2.18(1.91–2.45)へ約1.2倍増加しているのに対し、女性は1.13(0.97–1.28)から1.10(0.90–1.29)と有意な変化は認められず、男女差が時間とともに拡大する傾向が示唆された。

■地域別ではアメリカ大陸で最も高い死亡率が観察され、2022年の年齢調整死亡率は1.80(95%信頼区間 1.50-2.11)であった 。これは欧州の1.11や西太平洋地域の1.21と比較して高値である。特にラテンアメリカ諸国での上昇が顕著で、2010年から2022年の平均年間変化率はニカラグアで15.9%、キューバで6.7%、グアテマラで5.4%という高い増加率を示した。対照的に北米では減少傾向にあり、アメリカで-2.0%、カナダで-1.0%の変化率が記録された。西太平洋地域でも、韓国やニュージーランドでは変化率がそれぞれ2.3%、1.9%と増加していたのに対し、オーストラリア(−1.7%)、シンガポール(−3.7%)では低下しており、同一地域内でも国ごとの異質性が大きかった。

■IPF死亡率は世界的に高止まりしており、特に高齢男性やラテンアメリカ地域での増加傾向に対する継続的な監視と対策が必要である。





by otowelt | 2025-12-08 00:51 | びまん性肺疾患

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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