マクロライド耐性肺MAC症に対する外科治療
2026年 01月 08日
よくぞここまで形にされたと感動いたしました。薬剤耐性という治療上の難題があるにもかかわらず、外科的切除が高い安全性をもって実施され、なおかつマクロライド耐性肺MAC症が感受性例と同等の成績が得られたことには大きな意義があります。
■本論文は、マクロライド耐性を有する肺MAC症患者に対する外科的介入の臨床的意義と長期予後を検討した多施設共同研究である。
■ガイドライン推奨から逸脱した単剤療法やエタンブトール併用の欠如などが原因となり、マクロライド耐性肺MAC症が出現することが臨床的な課題となっている。本研究は、マクロライド耐性肺MAC症に対する外科治療の臨床成績を非耐性症例と比較し、マクロライド耐性であっても外科的切除によって長期的な感染制御が可能かどうかを検証することを目的とした。
■2008年4月から2024年3月までの間に、参加4施設において肺MAC症に対して肺切除術が施行された連続248例を解析対象とした。
■このうち34例(13.7%)がマクロライド耐性肺MAC症であり、残りの214例が非マクロライド耐性肺MAC症であった。マクロライド耐性の定義は、クラリスロマイシンのMICが32μg/mL以上とされた。手術適応の決定には、気道破壊病変(空洞や気管支拡張)の有無と化学療法への抵抗性を組み合わせた「DR分類」が用いられた。具体的には、限局性の破壊病変を有し、かつ薬物療法に抵抗性を示す症例が手術の適応と判断された。周術期の化学療法はATS/IDSA等のガイドラインに準拠して行われ、術前にはアミノグリコシド系薬が投与された。術式は、原則として解剖学的肺切除(区域切除以上)が選択され、可能な限り胸腔鏡下手術(VATS)が行われた。
■患者背景においてマクロライド耐性肺MAC症群は非マクロライド耐性肺MAC症群と比較して年齢の中央値が高く(65歳 vs 58歳)、両側肺手術を要した割合(38.2% vs 14.5%)や切除肺区域数(3.5区域 vs 2.5区域)が有意に多かった。これはマクロライド耐性肺MAC症群においてより進行した、あるいは広範な病変を有する症例が含まれていたことを示唆している。それにもかかわらず、術後合併症の発生率には両群間で有意差は認められなかった(8.8% vs 11.9%)。
■主要評価項目である予後に関しては、観察期間の中央値62.4ヶ月において、5年全生存率はマクロライド耐性肺MAC症群で100%、非マクロライド耐性肺MAC症群で98.5%であり、統計学的有意差はなかった(p=0.72)。同様に、5年無再発生存率についても、マクロライド耐性肺MAC症群で85.4%、非マクロライド耐性肺MAC症群で67.9%となり、マクロライド耐性群の方が数値上は良好な傾向を示したものの、統計学的な有意差はなかった(p=0.47)。
■術後の感染再発に関連する因子を特定するために多変量解析が実施された。高齢であること、および周術期にアミノグリコシド系薬が投与されなかったことが、独立した再発リスク因子として抽出された。一方で、マクロライド耐性の有無自体は、術後の無再発生存期間に対する独立した予後予測因子とはならなかった。これは、傾向スコアを用いたIPTW解析によっても確認され、マクロライド耐性は術後の再発リスク悪化と関連しないことが示された。
■マクロライド耐性肺MAC症であっても、限局した破壊性病変を有し、耐術能のある患者に対しては、適切な周術期抗菌薬療法(特にアミノグリコシド系薬)を併用した外科的切除を行うことで、非耐性症例と同等の良好な長期成績が期待できることが示された。マクロライド耐性という因子単独で外科手術の適応を除外すべきではなく、むしろ薬物療法の限界を補完する確実な局所制御手段として、適切な時期に外科的介入を検討することの重要性が示唆された。
by otowelt
| 2026-01-08 06:13
| 抗酸菌感染症










