ARISE試験:未治療・再発肺MAC症に対するアリケイス上乗せの効果
2026年 01月 25日
KOLがオーサーに並んでいます。Daley先生らによるアリケイスのARISE試験の結果です。培養陰性は2回にしておられます。対照群(アジスロマイシン+エタンブトールの2剤療法)では6ヶ月間の治療で一時的に培養陰性化を達成できても、菌を根絶できておらず治療中止後に速やかに再燃する例が多いことを示唆しています。
同じ集団を対象とした12ヶ月治療のENCORE試験が続いて報告されると思います。
- 概要
■現行ガイドラインでは肺MAC症に対してマクロライド、エタンブトール、リファマイシンの3剤併用療法を培養陰性化後12ヶ月間継続することが推奨されているが、副作用による治療完遂困難例が多く、治療成功率は約60%にとどまる。アミカシンリポソーム吸入懸濁液(ALIS)は、6ヶ月間の治療後もMAC陽性が持続する治療抵抗性患者に対して承認されているが、新規診断例における有効性は不明であった。
■ARISE試験は、非空洞性の新規肺MAC症または再発肺MAC症患者を対象としたランダム化プラセボ対照二重盲検多施設共同国際試験である。主目的はQOL-B呼吸ドメインとPROMIS F SF-7aという2つの患者報告アウトカム(PRO)測定ツールの心理測定学的特性を検証することであり、微生物学的アウトカムの群間比較を検出する検出力は元来設定されていなかった。抗菌薬治療未開始の成人患者が、ALIS(590mg)または空リポソーム対照剤を、アジスロマイシン(250mg)およびエタンブトール(15mg/kg)とともに1日1回6ヶ月間投与され、その後1ヶ月間の治療終了後フォローアップを受けた(治療開始7か月目評価)。培養陰性化は2回連続した受診時にすべての喀痰培養でMAC陰性化と定義された。
■99名がランダム化され(ALIS群48名、対照群51名)、年齢中央値は69.0歳、77.8%が女性であった。72.7%が初回MAC感染であり、大部分の患者はM. intracellulare(43.4%)、M. avium(32.3%)感染だった(他はM. chimaeraなど)。6ヶ月時(治療終了時)の培養陰性化はALIS群で80.6%、対照群で63.9%に達成された(推定治療差16.7%、95%CI: -1.4〜34.9、P=0.0712)。7ヶ月時(治療終了後1ヶ月)の培養陰性化はALIS群で78.8%、対照群で47.1%であった(推定治療差31.7%、95%CI: 12.9〜50.5、P=0.0010)。初回培養陰性化までの期間中央値はALIS群で1.0ヶ月、対照群群で2.0ヶ月であった。試験期間中に培養陰性化を達成した患者のうち再発を経験したのは、ALIS群で12.8%であったのに対し対照群では50%だった。
■PROについては、ALIS群の平均QOL-B呼吸ドメインスコアはベースラインから7ヶ月時まで改善したのに対し、対照群では3ヶ月後にプラトーに達しその後低下した。培養陰性化を達成したALIS群患者ではQOL-B呼吸ドメインの改善がより大きく、培養陰性化と症状改善との間に正の相関(相関係数0.35-0.36)が確認された。一方、PROMIS F SF-7a(倦怠感)スコアは両群で改善したが群間差は観察されなかった。
図. QOL-Bの平均変化(CC BY 4.0)
■試験期間を通じて、ALIS(MIC 128μg/mL以上)またはマクロライド(クラリスロマイシンMIC 32μg/mL以上)に耐性を示すMAC分離株を発現した患者はいなかった(報告されたアミカシンに対する最大MICは64μg/mL)。ただし、6ヶ月という比較的短い治療期間であること、また培養陰性化率が高くALIS群では80.6%が6ヶ月時に陰性化したことから、耐性評価の機会自体が限られていた可能性がある。
■最も頻繁に報告された有害事象は発声障害(ALIS群41.7%、対照群3.9%)、下痢(両群約26%)、咳嗽(ALIS群27.1%、対照群7.8%)であった。重篤なTEAEでALIS関連と判断されたものはなく、死亡も発生しなかった。聴器毒性はALIS群(12.5%)が対照群(21.6%)よりむしろ低く、腎毒性はなかった。
■ARISE試験は、マクロライドベースの多剤併用療法に6ヶ月間ALISを追加した新規または再発性肺MAC症患者において、より多くの患者が対照群と比較して培養陰性化を達成し、培養陰性化の維持率も高く、症状改善との正の相関が認められたことを示した。
■本試験は6ヶ月間の治療期間であり、ガイドライン推奨の完全治療(培養陰性化後12ヶ月継続)を反映していない点が限界である。また、PRO測定ツールの検証を主目的としており、微生物学的アウトカムの統計学的比較を検出する検出力は設定されていなかった。
by otowelt
| 2026-01-25 00:01
| 抗酸菌感染症












