日本人における気管支拡張症患者のCFTR変異
2026年 02月 12日
本研究は、日本人における肺非結核性抗酸菌症(NTM)および気管支拡張症の背景に、CFTR遺伝子変異が関与している頻度を明らかにし、それが治療アウトカムの悪化に関連することを示した貴重な報告です。先日パブリッシュされたイタリアのデータは高めの数値でしたが、民族的な背景も影響しているかもしれません。
■欧米ではCFTR遺伝子変異が肺NTM症や気管支拡張症の感受性因子として知られているが、日本を含む非欧米諸国における頻度や臨床的影響についてはデータが限られていた。本研究は、日本人集団におけるCFTR変異の頻度とその臨床的特徴を明らかにすることを目的とした。
■2016年2月から2019年3月までに慶應義塾大学病院を受診した肺NTM症、非嚢胞性線維症性気管支拡張症(NCFB)、またはその両方を有する患者458名を対象とした。全エキソーム解析、サンガー法、およびMLPA法を用いてCFTR変異を同定し、in silicoツールを用いて病原性を評価した。
■対象患者の3.5%(16/458名)に病原性のあるCFTR変異が同定された。これは米国の報告(36〜50%)よりも低い頻度であったが、日本の嚢胞性線維症(CF)の有病率の低さを反映していると考えられる。同定された変異のプロファイルは欧米で一般的なもの(p.Phe508delなど)とは異なり、日本独自の構成であった。
■年齢と性別をマッチさせた対照群(CFTR変異なしの肺MAC症患者)との比較において、CFTR変異を有する患者は治療開始後12ヶ月時点での菌陰性化率が有意に低かった(20.0% vs 69.7%、p=0.04)。
■また、CFTR変異を有する患者では、治療経過中にマクロライド耐性を獲得する割合が有意に高かった(60.0% vs 11.8%、p=0.02)。これは、CFTR変異が肺NTM症の難治化や治療失敗の独立したリスク因子である可能性を示唆している。
■ 家族内発症を認めた1家系の解析では、肺MAC症を発症した家族員が同一のCFTR変異(p.Leu1156Phe)を保有しており、本邦における家族性肺NTM症の遺伝的背景の一つとしてCFTR変異が関与している可能性が示された。
■ 日本人の肺NTM症・気管支拡張症患者においても、一定の割合でCFTR変異が存在し、これらの中には難治性の経過をたどるサブグループが存在する。今後、CFTR機能を標的とした治療戦略が、難治例に対する新たなアプローチとなることが期待される。
by otowelt
| 2026-02-12 02:03
| 呼吸器その他










