気管支拡張症における気管支鏡の意義

気管支拡張症における気管支鏡の意義_e0156318_13422569.png
proof of conceptの域を出ない結論ですが、著者らも結語で多施設前向き試験の必要性を述べています。




■気管支拡張症に対する気管支鏡検査の位置づけも議論が続いており、現行ガイドラインでは非産生性咳嗽でCT上感染所見を伴う症例、閉塞性病変が疑われる症例、肺NTM症が疑われる症例で考慮すべきとされているが、これらの推奨は強固なエビデンスに裏付けられたものではなく、出血や酸素飽和度低下などの合併症リスクも存在する。本研究は、成人気管支拡張症患者における気管支鏡検査が実臨床の治療方針決定に与える影響を評価することを目的とした。

■イタリア・ミラノのIRCCS Humanitas Research Hospital気管支拡張症プログラムにおいて、2021年7月から2024年9月に実施された前向き観察研究である。対象は、放射線学的・臨床的に有意な非嚢胞性線維症性気管支拡張症と診断され、気管支鏡検査と気管支洗浄(BL)を受けた18歳以上の連続症例139例である。

■臨床的適応は、特異的病因(気管支内閉塞等)の同定、喀血の原因検索、肺NTM症の疑い、真菌性肺疾患の疑い、喀痰排出がなく既存検体もない症例の微生物学的評価、既存検体が不十分と判断された症例の微生物学的再評価のいずれかに該当するものとした。

■主要評価項目は気管支鏡所見によって治療方針の変更がもたらされた患者の割合とし、規定された変更には、緑膿菌除菌療法やインフルエンザ菌・黄色ブドウ球菌慢性感染に対する抗菌薬療法の開始、肺NTM症や真菌性肺疾患の診断と管理、感染除外後の長期免疫調節療法(マクロライド等)の開始、増悪に対する抗菌薬療法の変更、特異的病態の管理が含まれた。

■プログラムでフォローされていた574例のうち、解析対象は気管支鏡検査を受けた139例(24.2%)で、年齢中央値65歳(IQR 57-71)、女性80.5%、BSI中央値5(IQR 3-7)、重症(BSI≥9)15.8%であった。緑膿菌既往検出17.3%、NTM既往検出16.3%、過去1年間に2回以上の増悪を経験した症例は46.8%で、71.9%が特発性であった。契機となったCT所見はtree-in-budパターン(50.4%)、浸潤影(45.3%)、粘液栓(38.1%)が多く、検査時点で増悪期にあった症例は14.4%であった。

■気管支洗浄液培養は全体の58.3%で陽性、喀痰検体が得られない症例でも61.5%という高い陽性率を示した。検出頻度の高い病原体はインフルエンザ菌(15.8%)、緑膿菌(15.1%)、MAC(11.6%)、黄色ブドウ球菌(6.5%)、Aspergillus fumigatus(4.3%)であった。

■治療方針の変更は71例(51.1%)でなされ、内訳は除菌療法24例(17.3%)、長期免疫調節療法15例(10.8%)、NTM-PDの診断・治療14例(10.1%)、真菌性疾患の診断・治療9例(6.5%)、増悪に対する病原体特異的抗菌療法9例(6.5%)であった。手技関連有害事象は4例(2.9%)で、軽度出血2例、一過性高血圧1例、術後嘔気1例にとどまり、重大な合併症は認められなかった。

■成人気管支拡張症患者に対する気管支鏡検査と気管支洗浄は、半数を超える症例(51.1%)で治療方針の変更をもたらし、重大な合併症なく安全に施行可能であり、特に喀痰検体が得られない症例における補完的診断ツールとして有用と考えられる。





by otowelt | 2026-06-01 00:24 | 呼吸器その他

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
カレンダー
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31