肺MAC症に対する静注アミカシン 「外来非増量レジメン」の是非
2026年 06月 14日
入院時のアミカシン用量をそのまま外来移行時にスライドさせたレジメンです。これだと必然的に国際的な推奨血中濃度の達成は困難になりますが、そもそもその達成自体がアウトカムと直結しているかどうかもよく分っていません。比較対象がないので、これがベストかと問われるとそうではないかもしれません。
■肺MAC症は加齢とともに罹患率・有病率が上昇するため、高齢者で治療を要することが多い。ATS/ERS/ESCMID/IDSA 2020ガイドラインおよび2023年の本邦コンセンサスステートメントは、空洞性病変・進展した結節気管支拡張型・マクロライド耐性例に対し、RFP・EB・マクロライドからなる標準レジメンへのアミノグリコシド追加を推奨しているが、静注アミカシン(AMK-IV)と筋注ストレプトマイシン(SM-IM)はいずれも選択肢とされ、その選択は主治医の裁量に委ねられている。
■AMK-IVを初期治療として用いた際の有効性・安全性、とりわけ高齢者におけるエビデンスは限られている。本研究は、MAC-PD患者に対する初期治療としてのAMK-IV含有レジメンの有効性と安全性を評価することを目的とした。
■本研究は倉敷中央病院において2021年9月から2024年7月の間に、初期治療として少なくともマクロライドとエタンブトールを含むAMK-IV含有レジメンで治療された空洞性MAC-PD患者を対象とした後ろ向き研究である。AMK-IVを2次治療以降で受けた患者は除外した。AMK-IVは全例で入院中に開始し、初回投与量は10〜15 mg/kgとし、2017年英国胸部学会(BTS)ガイドラインに準拠した治療薬物モニタリング(TDM)に基づいて調整した。投与前に全例で耳鼻咽喉科による聴力スクリーニングを行い、治療中も適宜モニタリングした。
■入院期間2〜4週間にわたり1日1回30分で点滴静注し、ピーク濃度は投与開始1時間後、トラフ濃度は次回投与直前に測定した。目標ピーク濃度は約25〜35 mg/L、目標トラフ濃度は5 mg/L未満とし、TDMは概ね週1回行い、50〜100 mgずつ用量を調整した。退院後は地域医療機関で退院時と同用量を週3回継続し、投与期間は3〜6ヶ月とした。
★注意点:外来移行後も週3回投与を継続しますが、用量は毎日投与(入院中)のTDMで決定された用量と同じとし、目標ピーク濃度はより低い25〜35 mg/Lに設定しています。つまり、退院時の用量をそのまま週3回に引き継ぎ、週3回投与で改めて65〜85 mg/Lを狙う増量はしていない、ということです。
■主要アウトカムは治療開始後6・12ヶ月での喀痰培養陰性化、副次アウトカムは6・12ヶ月での胸部CT画像改善、有害事象、微生物学的再発、全死因死亡とした。喀痰培養陰性化は4週間以上あけて採取した3回連続陰性、微生物学的再発は4週間以上あけた2回連続MAC検出と定義した。75歳以上群と75歳未満群で患者背景とアウトカムを比較した。統計解析はFisher正確検定、Mann–Whitney U検定を用い、両側P<0.05を有意とした。
■21例(女性16例、76.2%)が解析され、年齢中央値は75歳(IQR 71–79)、75歳以上が11例(52.4%)、75歳未満が10例(47.6%)であった。起因菌はM. avium 10例(47.6%)、M. intracellulare 7例(33.3%)、種同定不能のMAC 4例(19.0%)で、薬剤感受性試験を実施した全分離株がCAM・AMKいずれにも感性であった。全例に空洞病変を認め、マクロライドはCAM 11例(52.4%)、AZM 10例(47.6%)が用いられ、忍容性を考慮して3例(14.3%)ではRFPを投与せずEB・マクロライド・AMK-IVのレジメンが選択された。AMK-IV投与期間中央値は3.5ヶ月(IQR 3–4)であった。
■喀痰培養陰性化は6ヶ月で9/16例(56.3%)、12ヶ月で10/16例(62.5%)に達し、画像評価を受けた症例での胸部CT改善は6ヶ月で15/18例(83.3%)、12ヶ月で16/18例(88.9%)に認められた。初回AMK用量は10 mg/kgが多くBTS推奨より低かったが、最終的に目標ピーク濃度(25–35 mg/L)は全体で12/21例(57.1%、75歳以上6/11例=54.5%、75歳未満6/10例=60.0%)で達成され、超過例を含めても95.2%が最低目標ピーク25 mg/Lに達した。トラフ濃度が目標範囲を超えた患者はいなかった。CCrは75歳以上群48.3 mL/min、75歳未満群61.2 mL/minで、有意差はないものの高齢群で低い傾向を認めた(P=0.05)。
■年齢群間比較では喀痰培養陰性化が75歳以上群で低い傾向にあったが有意差はなく(6ヶ月 37.5% vs 75.0%、P=0.32;12ヶ月 50.0% vs 75.0%、P=0.61)、画像改善率は両群で良好であった(6ヶ月 80.0% vs 87.5%、12ヶ月 80.0% vs 100.0%)。微生物学的再発は75歳以上群の1例が10ヶ月時に認められた。有害事象による治療中止は各群1例ずつ(下痢と聴力障害、計2例=9.5%)で、AMK-IV完遂率は90.5%(19例)、75歳以上群でも90.9%が3ヶ月以上の投与を完遂した。経過中4例(19.0%)が死亡したが、いずれも細菌性肺炎などの非MAC死であり、MAC-PDによる治療関連死は認めなかった。
■空洞性MAC-PDに対する標準レジメンへのAMK-IV追加は、初期治療として有効かつ安全である可能性が示された。本TDMガイド下プロトコルでは、一般に推奨される値より低いピーク濃度であっても良好な治療成績が得られ、75歳以上の高齢者においてもTDM管理下であれば安全に投与可能であることが示唆された。
by otowelt
| 2026-06-14 00:37
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