肺Mycobacterium abscessus症に対する強化レジメンの効果

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肺M. abscessus症は数あるNTMの中でも最も手強い相手の一つで、いまだ標準レジメンも至適治療期間も定まっていません。クロファジミン(CFZ)を軸にしたphase therapyの効果を検証した報告です。

オキサゾリジノンをONする以外は日本と同じ戦略ですね。




■2020年のATS/ERS/ESCMID/IDSAガイドラインは肺M. abscessus症に対してphase therapy(PT;初期相と継続相に分けた治療)を提唱しているがが、併用療法の具体的推奨は示していない。本研究はCFZ含有PTレジメンの肺M. abscessus症に対する有効性を評価することを目的とした。


■ATS/ERS/ESCMID/IDSA診断基準を満たし、空洞性または進行した気管支拡張病変を有する18歳以上24例を前向きに登録し、CFZ含有レジメンで治療した(混合感染、長期免疫抑制療法中、妊娠・授乳中、重篤な基礎疾患は除外)。初期相はAMK・IPMの注射2剤に経口AZI・CFZ・LZDを併用、継続相は経口AZI・CFZ・LZDとし、IPMは4週間、AMKは初回培養陰性化まで(最長6か月)用いた。対照として2014–2020年に同院で治療を完遂した症例を後ろ向きに組み入れた(最終30例)。


■全54例(subsp. abscessus 38例、subsp. massiliense 16例)は女性74.0%、年齢中央値52.5歳(IQR 41.0–61.3)、BMI中央値20.0 kg/m²で、59.3%に結核・気管支拡張症などの既往を認めた。画像所見は結節・気管支拡張型75.9%、線維空洞型16.7%で、両群間の背景因子に有意差はなかった。12か月時点の喀痰培養陰性化率は前向き群70.8%(17/24) vs 後ろ向き群36.7%(11/30)であり、前向き群で有意に高く(P=0.013)、症状改善も75.0% vs 40.0%(P=0.015)と良好であった。画像悪化は後ろ向き群に多かった(40.0% vs 8.3%、P=0.012)。治療期間中央値は前向き群377.5日、後ろ向き群447.5日であった。


■後ろ向き群では個々の薬剤と培養陰性化の関連は認めず、3剤併用での陰性化は33.3%(1/3)、4剤併用33.3%(5/15)、前向きレジメン以外の5剤併用でも41.7%(5/12)にとどまった。これに対し前向きPTレジメン(初期相+継続相)を用いた群は陰性化しやすく(P=0.013)、ロジスティック回帰でも前向き群の5剤レジメンが培養陰性化と独立して関連した(OR=6.203、95%CI 1.171–32.865、P=0.032)。


■CFZのMIC範囲は0.125–1 mg/Lであった。前向き群ではCFZ MIC<0.5 mg/Lの治療成功率が86.7%(13/15)であったのに対し、MIC≥0.5 mg/Lでは44.4%(4/9)にとどまり、MIC<0.5 mg/Lの症例で有意に陰性化しやすかった(P=0.014)。CFZ以外の薬剤のMICと培養陰性化の間には関連を認めなかった。


■CFZ含有PTレジメンは肺M. abscessus症に有効で、特にCFZ MIC<0.5 mg/Lの症例で高い効果を示した。初期相にAZI・CFZ・LZD・AMK・IPM、継続相にAZI・CFZ・LZDを用いるレジメンで70.8%の喀痰培養陰性化が得られ、治療前のCFZ MIC測定を日常的に行うことが推奨される。






by otowelt | 2026-07-08 00:58 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


by 倉原優
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