細気管支炎(tree-in-bud appearance)の残存は肺MAC症の再発リスク要因か


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肺MAC症は治療に成功しても4割前後が再発し、治療終了後に誰を厳重にフォローすべきかを見極める客観的指標が乏しいのが現状です。


Lee JE, Lee J-K, Oh H-J, Jo K-W, Shim TS, Kwon Y-S. Radiological factors associated with the recurrence of Mycobacterium avium complex pulmonary disease: a multicentre retrospective cohort study. Thorax. 2026. doi: 10.1136/thorax-2025-224556.

■肺非結核性抗酸症(NTM-PD)の罹患率は世界的に増加しており、その最多の起因菌がMACである。マクロライドを基盤とする多剤併用療法が標準治療として推奨されているものの、治療成功率は依然十分とは言えず、治療成功後の再発もコホート研究で22〜48%と高頻度に報告される。再発は宿主側の持続的感受性、環境曝露、菌の病原性などに起因すると考えられているが、高リスク患者を同定する臨床的予測因子はいまだ十分に検討されていない。胸部CTはNTM-PDの診断・重症度評価・治療モニタリングに不可欠であり、結節・気管支拡張型が再発と関連することは知られる一方、治療終了後の定量的なCT実質所見がもつ予後的意義は明らかでない。治療後も残存する画像異常は、subclinicalな感染の持続や残存気道炎症を反映し、再発の素地となる可能性がある。

■本研究は、治療に成功した肺MAC症患者において、とくに治療後CT所見に着目し、再発と関連する臨床的・画像的因子を同定する目的で行われた。

■2007年1月〜2020年12月に2つの三次医療機関で実施された後ろ向きコホート研究である。ATS/IDSA診断基準を満たし、治療成功(微生物学的治癒と臨床的治癒の両者の達成)に至った肺MAC症患者を対象とした。微生物学的治癒は培養陰性化後に治療終了まで陽性培養を認めないこと、培養陰性化は治療中に4週以上あけて採取した呼吸器検体で3回以上連続して抗酸菌培養が陰性となることと定義した。ATS/IDSAガイドラインに従い、治療は培養陰性化後12か月以上継続された。再発は治療終了後に起因菌種による培養陽性を2回以上認めることと定義した。治療開始前および終了後6か月以内の胸部CTを、臨床転帰を伏せた胸部放射線科医(経験10年)と呼吸器内科医(経験7年)が独立して読影し、不一致は合議で解決した。6肺葉について気管支拡張・cellular bronchiolitis・結節・空洞・浸潤影を検証済みスコアリング法でスコア化した。cellular bronchiolitisは小葉中心性結節と分枝状線状影(tree-in-budパターン)、すなわち小気道炎症と定義した。統計解析は死亡を競合リスクとするFine-Gray部分分布ハザードモデルを主体とし、部分分布ハザード比(sHR)と95%CIを算出した。単変量でp<0.1の変数を多変量モデルに投入し、VIF<5で多重共線性の非存在を確認した。施設と治療時期で調整した感度分析、時間依存性ROCによる識別能評価、log-rank統計量に基づく最適カットオフの決定(ブートストラップ1000回で安定性を評価)も行った。治療後CT変数についてはCT撮影日を起点とするランドマーク法を用いた。

■計538例(観察期間中央値3.4年、IQR 1.5〜7.2)のうち216例(40.1%)が再発した。再発率は施設Iで47.8%、施設IIで32.5%、画像型別では結節・気管支拡張型41.9%(175/418例)、線維空洞型34.2%(41/120例)であった。年齢・性別・肺機能・菌種・初回画像型・治療レジメンなどのベースライン背景は両群で概ね同等であった。治療前の総CTスコアには有意差を認めなかった(9.8対9.4、p=0.166)が、項目別では再発群で気管支拡張(3.6 vs 3.3、p=0.023)・cellular bronchiolitis(3.6 vs 3.1、p<0.001)・結節(1.2 vs 1.0、p=0.024)が高く、空洞スコアはむしろ低かった(1.0 vs 1.5、p=0.006)。

■一方、治療後の総CTスコアは再発群で有意に高く(9.2対7.6、p<0.001)、とくにcellular bronchiolitis(3.2対2.0、p<0.001)・結節(1.1対0.8、p<0.001)・浸潤影(0.6対0.5、p=0.040)が高かった。3年再発に対する時間依存性の識別能は治療後cellular bronchiolitisスコアが最も高く(AUC 0.73)、生存曲線に基づく予後閾値はスコア3と同定された。スコア≥3の患者は<3に比べ再発なし生存が有意に不良で、この分離は結節・気管支拡張型・線維空洞型のいずれでも認められた(p<0.001)。

■治療後CTスコアを用いた多変量競合リスク回帰(モデルI)では、cellular bronchiolitisスコア高値が再発と独立して関連し(sHR 1.64、95%CI 1.46〜1.84、p<0.001)、治療前CTスコアに基づくモデルIIでも同スコア高値が関連した(sHR 1.16、95%CI 1.04〜1.30、p=0.009)。臨床背景では糖尿病の既往が独立した予測因子として残った(モデルII:sHR 1.70、95%CI 1.08〜2.65、p=0.021)。施設・治療時期で調整した感度分析でも、治療前・治療後いずれのcellular bronchiolitisスコアも有意であり続けた。

■治療に成功した肺MAC症において、治療後CT上の残存cellular bronchiolitis(小気道炎症)の重症度は、初回の画像型そのものよりも再発を強く予測する独立因子であり、スコア≥3が実用的なリスク層別化の閾値となりうる。残存する気道中心の炎症所見は、subclinicalな感染の持続や再感染への感受性を反映していると解釈される。




by otowelt | 2026-07-10 01:12 | 抗酸菌感染症

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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