抗MRSA薬(1)
2009年 01月 11日
1.バンコマイシンはボルネオが始まり
・ボルネオの伝道師が友人に土壌サンプルを送ったことから
VCMが発見されたといわれている。
・その友人は、イーライリリー社の化学者だった。
・その土壌サンプルには、グラム陽性菌に対して著効する化合物を産生する
細菌が生息していた。
・vanquish(征服する)という単語に由来して、バンコマイシンと命名された。
Griffith RS. Vancomycin use – an historical review. J Antimicrob Chemother 1984; 14: 1-5.
2.バンコマイシンとは
・グリコペプチド系抗菌薬で、細胞壁合成阻害作用がある。
βラクタムと異なる段階に作用する
・腸管からの吸収はほとんどなし(腸炎が強いと少し吸収)
・殺菌性で、体内分布は良好だが胆道系・髄液への移行は良くない。
MRSA髄膜炎(例えば脳外科領域)では大量VCMを必要とする。
・移行性は、炎症のない髄液は良くない。胆管もイマイチ。
・AGとの併用でシナジーを示すが、腎毒性・耳毒性強くなる
・腎臓から排泄(CCr<10で半減期は147hrに)
・時間依存性である
3.バンコマイシンのスペクトラム
・ほとんどすべてのグラム陽性菌に効く。グラム陰性桿菌には活性がない。
・ただしLactobacillus, Leuconostoc, Listeria,Actinomyces,VREなど
一部に無効あり。そのため、リステリア感染ではあまり使うべきではない。
・MSSAなんかでは、バンコマイシンはセファゾリンやペニシリンに比べて抗菌活性弱い。
・グラム陰性桿菌に効果がないのは、「バンコマイシンは非常に分子が大きく、
グラム陰性菌の外膜にあるポーリン(孔)を通過できないため。」
※唯一、Chryseobacterium meningosepticumに対しては感受性がある
・ほかのぶどう球菌・MSSAでは、バンコマイシンの抗菌活性は極めて低く、
セファゾリンには太刀打ちできない
・バンコマイシンは腸球菌に対しては、VREでなければ有効だが、静菌的にしか
作用しないとされている。具体的には、MICに対して非常にMBCが高い。
この場合、ゲンタマイシンとの併用で殺菌的に作用する。
4.副作用
Red man症候群 ヒスタミンリリース: 1時間以上かけて滴下
遅発性バンコマイシン熱 投与2~3週後に起こる発熱
腎毒性 単剤では起こるかは不明、AG併用で出やすい
聴器毒性 血中濃度で80μg/mlを超えた症例
好中球減少 投与してから3~4週間くらいで起こる
※ヘパリンの存在下で活性を失うことがある。
※セフタジジムやメイロンと混ぜると、析出するので要注意。
5.Redman症候群
別名Red neck症候群という。ヒスタミン遊離によって起こるもので、
アレルギーとは違う(Anesthesiology 2000; 92:1074.)
生命にかかわることは少ないが、心血管抑制のためにCPAになる
ことがしばしばある(Can Anaesth Soc J 1985; 32:65. )
点滴速度が33mg/分(1g/30分)であれば、症状をきたしやすい。
10mg/分以下なら、症状は起こしにくい。2時間以上かけて点滴する。
また、オピオイドを内服している患者で起こりやすい。
50mgのジフェンヒドラミン内服でRMSを抑制できたとのstudyも。
特に重症RMSではヒスタミンブロッカーの投与が望ましい。
(J Infect Dis 1991; 164:1180. )
6.TDM(Therapeutic drug monitoring)
投与開始4回目の投与直前troughを測定(peak測定不要)
目標濃度:Peak: 20-50 (μg/ml)
Trough:10-15 (μg/ml)
・VCMの薬物動態は比較的予想しやすいため、腎機能が正常な
症例に通常量を使用する場合は、TDMを行う必要はない。
・例外的にピーク/トラフを測定する必要がある状況
・アミノグリコシドとの併用・透析症例
・通常量以上のバンコマイシン使用・腎機能変動が激しい症例
・肝機能異常が強い症例・体重が極端に大きいか小さい
・MRSA感染症で最低血中濃度を15μg/ml以上に保ちたい場合
7.適応
●VCMを使うとき
・MRSA,MREなどの耐性菌感染
・βラクタムアレルギー(殺菌力は強くないことに注意)
・メトロニダゾールで失敗したか、非常に重症のCD colitis
・MRSAやMRSEの多い施設、またはcolonizationが確認されている患者での
人工物埋め込み手術の術前予防
・髄膜炎でのempiric Rx (病原体・感受性判明まで)
・MRSAがcolonizeしているか長期間入院している患者でのsepsis
●避けるとき
・ルーチンの術前投与 ・血培1セットのみからのCNS分離
・発熱性好中球減少症でMRSAの可能性が高くない症例への経験的投与
・MRSAのcolonizationの治療 ・吸入・関節・褥瘡などへの局所投与
・C.difficile腸炎の初回治療
・ボルネオの伝道師が友人に土壌サンプルを送ったことから
VCMが発見されたといわれている。
・その友人は、イーライリリー社の化学者だった。
・その土壌サンプルには、グラム陽性菌に対して著効する化合物を産生する
細菌が生息していた。
・vanquish(征服する)という単語に由来して、バンコマイシンと命名された。
Griffith RS. Vancomycin use – an historical review. J Antimicrob Chemother 1984; 14: 1-5.
2.バンコマイシンとは
・グリコペプチド系抗菌薬で、細胞壁合成阻害作用がある。
βラクタムと異なる段階に作用する
・腸管からの吸収はほとんどなし(腸炎が強いと少し吸収)
・殺菌性で、体内分布は良好だが胆道系・髄液への移行は良くない。
MRSA髄膜炎(例えば脳外科領域)では大量VCMを必要とする。
・移行性は、炎症のない髄液は良くない。胆管もイマイチ。
・AGとの併用でシナジーを示すが、腎毒性・耳毒性強くなる
・腎臓から排泄(CCr<10で半減期は147hrに)
・時間依存性である
3.バンコマイシンのスペクトラム
・ほとんどすべてのグラム陽性菌に効く。グラム陰性桿菌には活性がない。
・ただしLactobacillus, Leuconostoc, Listeria,Actinomyces,VREなど
一部に無効あり。そのため、リステリア感染ではあまり使うべきではない。
・MSSAなんかでは、バンコマイシンはセファゾリンやペニシリンに比べて抗菌活性弱い。
・グラム陰性桿菌に効果がないのは、「バンコマイシンは非常に分子が大きく、
グラム陰性菌の外膜にあるポーリン(孔)を通過できないため。」
※唯一、Chryseobacterium meningosepticumに対しては感受性がある
・ほかのぶどう球菌・MSSAでは、バンコマイシンの抗菌活性は極めて低く、
セファゾリンには太刀打ちできない
・バンコマイシンは腸球菌に対しては、VREでなければ有効だが、静菌的にしか
作用しないとされている。具体的には、MICに対して非常にMBCが高い。
この場合、ゲンタマイシンとの併用で殺菌的に作用する。
4.副作用
Red man症候群 ヒスタミンリリース: 1時間以上かけて滴下
遅発性バンコマイシン熱 投与2~3週後に起こる発熱
腎毒性 単剤では起こるかは不明、AG併用で出やすい
聴器毒性 血中濃度で80μg/mlを超えた症例
好中球減少 投与してから3~4週間くらいで起こる
※ヘパリンの存在下で活性を失うことがある。
※セフタジジムやメイロンと混ぜると、析出するので要注意。
5.Redman症候群
別名Red neck症候群という。ヒスタミン遊離によって起こるもので、
アレルギーとは違う(Anesthesiology 2000; 92:1074.)
生命にかかわることは少ないが、心血管抑制のためにCPAになる
ことがしばしばある(Can Anaesth Soc J 1985; 32:65. )
点滴速度が33mg/分(1g/30分)であれば、症状をきたしやすい。
10mg/分以下なら、症状は起こしにくい。2時間以上かけて点滴する。
また、オピオイドを内服している患者で起こりやすい。
50mgのジフェンヒドラミン内服でRMSを抑制できたとのstudyも。
特に重症RMSではヒスタミンブロッカーの投与が望ましい。
(J Infect Dis 1991; 164:1180. )
6.TDM(Therapeutic drug monitoring)
投与開始4回目の投与直前troughを測定(peak測定不要)
目標濃度:Peak: 20-50 (μg/ml)
Trough:10-15 (μg/ml)
・VCMの薬物動態は比較的予想しやすいため、腎機能が正常な
症例に通常量を使用する場合は、TDMを行う必要はない。
・例外的にピーク/トラフを測定する必要がある状況
・アミノグリコシドとの併用・透析症例
・通常量以上のバンコマイシン使用・腎機能変動が激しい症例
・肝機能異常が強い症例・体重が極端に大きいか小さい
・MRSA感染症で最低血中濃度を15μg/ml以上に保ちたい場合
7.適応
●VCMを使うとき
・MRSA,MREなどの耐性菌感染
・βラクタムアレルギー(殺菌力は強くないことに注意)
・メトロニダゾールで失敗したか、非常に重症のCD colitis
・MRSAやMRSEの多い施設、またはcolonizationが確認されている患者での
人工物埋め込み手術の術前予防
・髄膜炎でのempiric Rx (病原体・感受性判明まで)
・MRSAがcolonizeしているか長期間入院している患者でのsepsis
●避けるとき
・ルーチンの術前投与 ・血培1セットのみからのCNS分離
・発熱性好中球減少症でMRSAの可能性が高くない症例への経験的投与
・MRSAのcolonizationの治療 ・吸入・関節・褥瘡などへの局所投与
・C.difficile腸炎の初回治療
by otowelt
| 2009-01-11 21:48