カテーテル関連感染症(CRBSI)その1
2009年 02月 12日
【ポイント】
・カテーテル挿入部とその付近に感染兆候ある場合、もしくは血管内カテーテル
を有する患者に発熱があるものの、フォーカスがはっきりしない場合には、
カテーテル感染を疑う。
・必ず血液培養を場所を変えて2セット採取
(少なくとも1セットを末梢で⇒カテーテル血・末梢血両方あると有用)
・血流感染が疑わしければ、必ず抗菌薬を投与する
カテーテル感染による血流感染は「全て」治療の適応である
⇒ IE・骨髄炎・眼内炎など重篤合併症を起こす可能性
・起因菌が判明したら抗菌薬のDe-escalationを積極的に行う。
・カテーテル感染の場合は基本的にカテーテルを抜去する
(血栓症等の合併症のないCNS感染の場合など、わずかの例外はある)
【総論】
・血管内カテーテルに関連した重大な感染合併の大部分は、中心静脈
カテーテルに起因している。代表的な原因微生物としてはCNS、
カンジダ属、黄色ブドウ球菌、グラム陰性桿菌(大腸菌、エンテロバクター、
クレブシエラ、緑膿菌など)が挙げられる。
・院内感染としての心内膜炎は重要であり、侵襲的手技または血管内
装置の合併症として認識され、頻度は全感染性心内膜炎の約10%である
【機序】
・CRBSIの原因を考える場合、特定微生物の付着性が重要。
例えば黄色ブドウ球菌は、カテーテルに存在する宿主の蛋白質
(フィブロネクチン等)に付着。
J Infect Dis 1993;167:312-22.
・CNSは、他病原体(大腸菌や黄色ブドウ球菌等)よりもポリマーに付着し
やすい。さらに、CNSの中には一般に細胞外多糖類を生成するものもある。
この粘液により、カテーテルが存在すると、宿主の防衛メカニズムに対して
耐性ができ(多核白血球の抱き込みや殺傷に対するバリアとして機能)、
あるいは抗菌剤に対する感受性が低下し(菌の細胞壁に抗菌薬が接触する
前に抗菌薬と結合しマトリックスを形成する等)、CNS病原性が増強。
J Infect Dis 1990;161:37-40.
・カンジダの中には、ブドウ糖溶液中で、細菌と同じ粘液を生成するものもある。
これが、経静脈的栄養輸液製剤の投与を受けている患者のBSIで、真菌性の
病原体に起因する割合が増大していることの原因となっている可能性がある。
J Clin Microbiol 1994;32:452-6.
【手技】
・カテ挿入部の皮膚の常在菌叢の菌密度は、CRBSIの大きなリスクファクター
である。専門家は、感染リスクを軽減するためにCVC を、頸部や大腿部ではなく
鎖骨下部分に留置するよう勧告している。
・内部頸静脈は、鎖骨下・大腿部に挿入された場合よりも感染リスクが高い。
J Clin Microbiol1990;28:2520-5
・大腿部カテーテルは、成人で菌の定着率が高い。
Infect Control Hosp Epidemiol 1998;19:842-5.
・大腿部カテーテルの場合、内頸部や鎖骨下より深部静脈血栓のリスクが高い
JAMA 2001;286:700-7.
・皮下を這わせて静脈内に入れる(tunneling)ほうが感染を
減らすことができる。
・10%ポビドンヨードや70%アルコールを用いた場合と比較して、
2%グルコン酸クロルヘキシジン水溶液を中心静脈や動脈部分に
使用すれば、BSI 発生率をより低減できる
Lancet 1991;338:339-43.
・カテーテル関連BSI の防止のためには、縫合式固定器具よりも無縫合式
固定器具のほうが有利である。限られた患者を対象にしたある研究で、
PICCの固定について、無縫合式器具と縫合式器具の比較が行なわれた。
同研究では、無縫合式器具を用いた患者グループでCRBSIが減少
J Vasc Interv Radiol 2001 (in press).
【診断】
1.24時間以内に血液培養陽性の報告
2.血液培養2セットが陽性
CRBSIを疑って行った血液培養の検査では、上記の場合ほとんど真のCRBSI。
・中心静脈カテーテル感染を診断するのに、カテーテルと末梢からの採血での
血培の培養時間が120分以上違って陽性(CVの方が早い場合)なら、
感度81%、特異度92%で診断できる。150分以上ならLR=6. 02 (3.55-10.21)
60分以内ならLR=0.11(0.06-0.20)
Ann Intern Med 2004;140:18-25
by otowelt
| 2009-02-12 12:46