カテーテル関連感染症(CRBSI)その2


【培養・染色】
・半定量法
 通常はロールプレート法(MAKI法)を用いる。寒天培地上でカテ先を4回
 転がし、翌日発育してくる集落の数を数え、15個以上の発育で感染を疑う。
 Maki DG, Weise CE, Sarafin HW: A semi-quantitative method for identifying intravenous-catheter-related infection. N Engl J Med 296: 1305~1309, 1977.

・定量法
 半定量法のもつ弱点 (カテーテルの内腔を検査していない) を解消する目的で
 考案されたもので、Cleri法と呼ばれる。血管内に挿入された部分の長さに応じて,
 カテーテル内腔を2~10mlのtrypticase soy brothで3回内腔を洗浄し,
 その洗浄液を定量培養。洗浄操作の代わりに超音波処理する方法も提案。
 102あるいは103CFUを判定区分値とする。
Cleri DJ, Corrado ML, Seligman SJ: Quantitative culture of intravenous inserts. J Infect Dis 141: 781~786, 1980

・染色
 ロールプレートが終わってからカテ先をグラム染色するときは、こすりつけても
 よいが少量の生食でフラッシュしてから、沈査を染色するのが望ましい。

【症状】
・典型的症状は、点滴刺入部周囲の発赤・腫脹・膿性分泌物の存在。
・GNRによる静脈炎は、局所の発赤などの所見が乏しく、感染源不明の
 菌血症としてあつかわれることが多いので注意。

【抗菌薬ロック療法】
・基本的にカテーテルを抜去していない患者が対象となる。
・CRBSI を防止するため、抗生物質溶液でカテーテルの内腔のフラッシュ
と充填を行ない、カテーテルの内腔に同溶液を残しておく抗生物質ロック
予防法が試みられている。
・ヘパリン単独(50~100単位)またはヘパリン+バンコマイシン2.5mg/ml
が使用されている。数mlあれば問題ないとされている。
   J Clin Oncol 2000;18:1269-78.
・CNSのサルベージ成功率は、最高80%
・黄色ブドウ球菌やCandidaでは60%近くが失敗すると言われている。

【カテ交換】
●末梢
・静脈炎・カテーテル関連感染防止の観点から、定期的に静脈カテーテル
 を交換するよう提案されてきた。ショートタイプの末梢静脈カテーテルの
 研究によると、カテーテルの留置時間が72 時間を超えると血栓性静脈炎
 や菌の定着の発生が増加することが明らかになっている。
   Intern Med 1991;114:845-54.
・しかし、末梢カテーテルの留置時間が72時間の場合と、96時間の場合を
 比較しても、静脈炎の発生率に事実上の差は認められない。
   Am J Infect Control 1998;26:66-70.
・静脈炎やカテーテルの菌の定着は、カテーテル関連感染のリスク上昇を
 招くため、感染リスクと静脈炎による患者の不快感を軽減するため末梢
 静脈カテーテルの留置部位を72〜96時間間隔で交換することが一般的。

●中心静脈
・カテーテルの交換を7 日毎に行なった患者と、必要に応じて行なった患者で
 CRBSI に違いは認められていない
   Crit Care Med 1990;18:1073-9.
・感染の頻度を減らす目的だけのために中心静脈カテーテルをルーチンに交換
 する必要はない。但し、不要となった血管内カテーテルは迅速に抜去。

●動脈ライン
・末梢動脈カテーテルは橈骨動脈もしくは大腿動脈に挿入され、連続的
 な血圧モニタや血液ガス測定に使用される。CRBSIの発生率は、
 一時的なCVC と同レベル。(1,000カテーテル挿入日あたり2.9対2.3)
 Abstracts of the 39th Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy. San Francisco, CA: American Society for Microbiology, 1999:514.

・末梢動脈カテーテルに関するある研究では、定期的にカテーテルを
 交換した場合と、必要に応じて交換した場合の感染率に差がない。
   Crit Care Med 1990;18:1073-9.

【治療】
敗血症的でCRBSIが疑われる場合、培養出るまで
 バンコマイシン1回15mg/kg(実際体重)12時間ごと静注  
+ 
 トブラマイシン1回 5mg/kg(理想体重)24時間ごと静注
 (もしくはトブラマイシンに換えてセフェピム or セフタジジム1g8時間毎)
 ※MRSAでないとわかった場合は、ブドウ球菌ならセファゾリンに変えること 
  ただし、経食道エコーはIE除外のためにしておくべき。

血液培養で酵母が陽性(Candida)
・第一選択:ミカファンギン 1回 150mg 24時間毎静注
その他:アムホテリシンB 1回 0.3-1.0mg/kg 24時間毎静注
 
by otowelt | 2009-02-12 12:53

近畿中央呼吸器センター 呼吸器内科の 倉原優 と申します。医療従事者の皆様が、患者さんに幸せを還元できるようなブログでありたいと思います。原稿・執筆依頼はメールでお願いします。連絡先:krawelts@yahoo.co.jp


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