カテーテル関連感染症(CRBSI)その2
2009年 02月 12日
【培養・染色】
・半定量法
通常はロールプレート法(MAKI法)を用いる。寒天培地上でカテ先を4回
転がし、翌日発育してくる集落の数を数え、15個以上の発育で感染を疑う。
Maki DG, Weise CE, Sarafin HW: A semi-quantitative method for identifying intravenous-catheter-related infection. N Engl J Med 296: 1305~1309, 1977.
・定量法
半定量法のもつ弱点 (カテーテルの内腔を検査していない) を解消する目的で
考案されたもので、Cleri法と呼ばれる。血管内に挿入された部分の長さに応じて,
カテーテル内腔を2~10mlのtrypticase soy brothで3回内腔を洗浄し,
その洗浄液を定量培養。洗浄操作の代わりに超音波処理する方法も提案。
102あるいは103CFUを判定区分値とする。
Cleri DJ, Corrado ML, Seligman SJ: Quantitative culture of intravenous inserts. J Infect Dis 141: 781~786, 1980
・染色
ロールプレートが終わってからカテ先をグラム染色するときは、こすりつけても
よいが少量の生食でフラッシュしてから、沈査を染色するのが望ましい。
【症状】
・典型的症状は、点滴刺入部周囲の発赤・腫脹・膿性分泌物の存在。
・GNRによる静脈炎は、局所の発赤などの所見が乏しく、感染源不明の
菌血症としてあつかわれることが多いので注意。
【抗菌薬ロック療法】
・基本的にカテーテルを抜去していない患者が対象となる。
・CRBSI を防止するため、抗生物質溶液でカテーテルの内腔のフラッシュ
と充填を行ない、カテーテルの内腔に同溶液を残しておく抗生物質ロック
予防法が試みられている。
・ヘパリン単独(50~100単位)またはヘパリン+バンコマイシン2.5mg/ml
が使用されている。数mlあれば問題ないとされている。
J Clin Oncol 2000;18:1269-78.
・CNSのサルベージ成功率は、最高80%
・黄色ブドウ球菌やCandidaでは60%近くが失敗すると言われている。
【カテ交換】
●末梢
・静脈炎・カテーテル関連感染防止の観点から、定期的に静脈カテーテル
を交換するよう提案されてきた。ショートタイプの末梢静脈カテーテルの
研究によると、カテーテルの留置時間が72 時間を超えると血栓性静脈炎
や菌の定着の発生が増加することが明らかになっている。
Intern Med 1991;114:845-54.
・しかし、末梢カテーテルの留置時間が72時間の場合と、96時間の場合を
比較しても、静脈炎の発生率に事実上の差は認められない。
Am J Infect Control 1998;26:66-70.
・静脈炎やカテーテルの菌の定着は、カテーテル関連感染のリスク上昇を
招くため、感染リスクと静脈炎による患者の不快感を軽減するため末梢
静脈カテーテルの留置部位を72〜96時間間隔で交換することが一般的。
●中心静脈
・カテーテルの交換を7 日毎に行なった患者と、必要に応じて行なった患者で
CRBSI に違いは認められていない
Crit Care Med 1990;18:1073-9.
・感染の頻度を減らす目的だけのために中心静脈カテーテルをルーチンに交換
する必要はない。但し、不要となった血管内カテーテルは迅速に抜去。
●動脈ライン
・末梢動脈カテーテルは橈骨動脈もしくは大腿動脈に挿入され、連続的
な血圧モニタや血液ガス測定に使用される。CRBSIの発生率は、
一時的なCVC と同レベル。(1,000カテーテル挿入日あたり2.9対2.3)
Abstracts of the 39th Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy. San Francisco, CA: American Society for Microbiology, 1999:514.
・末梢動脈カテーテルに関するある研究では、定期的にカテーテルを
交換した場合と、必要に応じて交換した場合の感染率に差がない。
Crit Care Med 1990;18:1073-9.
【治療】
敗血症的でCRBSIが疑われる場合、培養出るまで
バンコマイシン1回15mg/kg(実際体重)12時間ごと静注
+
トブラマイシン1回 5mg/kg(理想体重)24時間ごと静注
(もしくはトブラマイシンに換えてセフェピム or セフタジジム1g8時間毎)
※MRSAでないとわかった場合は、ブドウ球菌ならセファゾリンに変えること
ただし、経食道エコーはIE除外のためにしておくべき。
血液培養で酵母が陽性(Candida)
・第一選択:ミカファンギン 1回 150mg 24時間毎静注
その他:アムホテリシンB 1回 0.3-1.0mg/kg 24時間毎静注
by otowelt
| 2009-02-12 12:53