ALI治療4日目の輸液量制限は院内死亡率を低下
2009年 03月 01日
今週のJ Intensive Care Med より。
intensivist創刊号でもARDSが特集されているように、
今ARDSが熱いらしい。
ARDSの輸液管理による、”死亡率低下”という転帰を報告した論文。
survivalに差が出たことが掲載のきっかけになったのだろう。
Review of A Large Clinical Series: Association of Cumulative Fluid Balance on Outcome in Acute Lung Injury: A Retrospective Review of the ARDSnet Tidal Volume Study Cohort
J Intensive Care Med 2009 24: 35-46
目的:
輸液による体液バランスがALIの予後にどの程度寄与するか調べた。
デザイン:
prospective cohort studyであり、1996~1999のデータを集積。
10のクリニカルセンター(24病院、75ICU)で調べられた。
902人の登録のうち、844人に輸液バランスについての記載があった。
(他の人のカルテはどこにいったんだろう・・・法律上は問題なし?)
方法:
特に介入したわけでもなく、コホート研究である。
結果:
683人が初日に3.5L以上の輸液をされている(positive fluid balance)
しかしながら、161人がnegative fluid balance (P<.001)であった。
治療4日目のnegative fluid balanceは、院内死亡率低下と有意に相関。
(OR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.89; P < .001)
結果:
ALI治療4日目のNegative cumulative fluid balanceは院内死亡率を低下させる。
今回の論文はアブストラクトだけしか読んでいないが、
この内容は以前から言われていること。
NEJMのFACTT試験が有名である。
(NEJM 2006. Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury. The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network)
このFACTT試験では、
positive balance:6992±502ml
negative balance:-136±491ml であり、60日死亡率に差はなかったものの
negative群で28日間酸素化の改善、肺損傷改善がみられた。
negative balanceは、CVPが4cm水柱以下、PCWPが8cm水柱以下に保つよう
フロセミドを使用するという概要である。
FACTT試験の結果であと覚えておきたいのは、
肺動脈カテーテルの使用が中心静脈カテーテルの使用に比べて
不整脈などの合併症が2倍多かったことである。
今回の論文も示唆しているように、ALI治療開始してから
4日目には輸液量を下げていないと
院内死亡率が上昇する可能性があることになる??
臓器還流を考えた治療をせよ、ということを示唆しているわけだが。
surviving sepsis campaign2008では
ショック出現後6時間までは以下の通りにおこなう。
1.CVP8~12mmHg (人工呼吸器下では12-15mmHg)を目安に輸液
・具体的には:300~1000ml/30minで繰り返す
2.平均血圧≧65 mmHg,尿量≧0.5 mL/kg/hr,
中心静脈酸素飽和度or混合静脈血酸素飽和度≧70%
を満たすことを目標とする。
エビデンスレベル1Aの記述としては
「人工呼吸管理期間やICU入室期間を短縮する目的で、
臓器灌流低下のないALI患者で輸液を制限する戦略は推奨される。」
とある。
以上をふまえると、ARDS入院時には
敗血症が原因であればsurviving sepsis campaign2008の
early goal directed therapyにのっとった輸液をおこなう。
しかし、ARDSを併発している場合、FACTT試験にのっとって
初期輸液から、”しぼる輸液”へ漸減していく必要があると考えられる。
intensivist創刊号でもARDSが特集されているように、
今ARDSが熱いらしい。
ARDSの輸液管理による、”死亡率低下”という転帰を報告した論文。
survivalに差が出たことが掲載のきっかけになったのだろう。
Review of A Large Clinical Series: Association of Cumulative Fluid Balance on Outcome in Acute Lung Injury: A Retrospective Review of the ARDSnet Tidal Volume Study Cohort
J Intensive Care Med 2009 24: 35-46
目的:
輸液による体液バランスがALIの予後にどの程度寄与するか調べた。
デザイン:
prospective cohort studyであり、1996~1999のデータを集積。
10のクリニカルセンター(24病院、75ICU)で調べられた。
902人の登録のうち、844人に輸液バランスについての記載があった。
(他の人のカルテはどこにいったんだろう・・・法律上は問題なし?)
方法:
特に介入したわけでもなく、コホート研究である。
結果:
683人が初日に3.5L以上の輸液をされている(positive fluid balance)
しかしながら、161人がnegative fluid balance (P<.001)であった。
治療4日目のnegative fluid balanceは、院内死亡率低下と有意に相関。
(OR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.89; P < .001)
結果:
ALI治療4日目のNegative cumulative fluid balanceは院内死亡率を低下させる。
今回の論文はアブストラクトだけしか読んでいないが、
この内容は以前から言われていること。
NEJMのFACTT試験が有名である。
(NEJM 2006. Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury. The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network)
このFACTT試験では、
positive balance:6992±502ml
negative balance:-136±491ml であり、60日死亡率に差はなかったものの
negative群で28日間酸素化の改善、肺損傷改善がみられた。
negative balanceは、CVPが4cm水柱以下、PCWPが8cm水柱以下に保つよう
フロセミドを使用するという概要である。
FACTT試験の結果であと覚えておきたいのは、
肺動脈カテーテルの使用が中心静脈カテーテルの使用に比べて
不整脈などの合併症が2倍多かったことである。
今回の論文も示唆しているように、ALI治療開始してから
4日目には輸液量を下げていないと
院内死亡率が上昇する可能性があることになる??
臓器還流を考えた治療をせよ、ということを示唆しているわけだが。
surviving sepsis campaign2008では
ショック出現後6時間までは以下の通りにおこなう。
1.CVP8~12mmHg (人工呼吸器下では12-15mmHg)を目安に輸液
・具体的には:300~1000ml/30minで繰り返す
2.平均血圧≧65 mmHg,尿量≧0.5 mL/kg/hr,
中心静脈酸素飽和度or混合静脈血酸素飽和度≧70%
を満たすことを目標とする。
エビデンスレベル1Aの記述としては
「人工呼吸管理期間やICU入室期間を短縮する目的で、
臓器灌流低下のないALI患者で輸液を制限する戦略は推奨される。」
とある。
以上をふまえると、ARDS入院時には
敗血症が原因であればsurviving sepsis campaign2008の
early goal directed therapyにのっとった輸液をおこなう。
しかし、ARDSを併発している場合、FACTT試験にのっとって
初期輸液から、”しぼる輸液”へ漸減していく必要があると考えられる。
by otowelt
| 2009-03-01 09:38
| 集中治療