化学療法時の制吐に対して、パロノセトロンはグラニセトロンより有効
2009年 03月 12日
グラニセトロン(カイトリル)が抗癌剤治療における
制吐剤として使用されているが、どうも効きが悪いという経験を
多くの内科医は感じていると思う。
アロキシ(ALOXIR)のphaseIIIの試験がようやく出たのでピックアップしてみたい。
Palonosetron plus dexamethasone versus granisetron plus dexamethasone for prevention of nausea and vomiting during chemotherapy: a double-blind, double-dummy, randomised, comparative phase III trial.
Lancet Oncol 2009; 10: 115–24
背景:
化学療法を受ける癌患者で、一番問題となるものは悪心と嘔吐。
現在、化学療法由来の悪心・嘔吐(CINV)に対しては5-HT3受容体拮抗薬
が標準的治療となっている。5-HT3拮抗剤は、 急性期のCINVに対しては
かなりの効果を示すものの、予防的投与を行っていても、
ほぼ半数の患者に急性と遅延性CINVが続く。パロノセトロンは、長い半減期
(約40時間)と、強く高度な5-HT3受容体拮抗作用をもち、化学療法に
関連する急性・遅延性CINVの両方を防ぐ効果があるとされている。
第Ⅱ相試験で、プライマリーエンドポイントとされている急性期でのCRに対して、
パロノセトロンの0.075mg・0.25mg・0.75mgの間では用量依存性はなかった。
120時間を超える試験期間では、明らかに用量依存性の反応を示した。
パロノセトロンの3用量は容認性があり、用量と関連する副作用の増加はなし。
パロノセトロン0.75mgがPⅡ試験で推奨用量となりうることが示唆された。
グラニセトロンは40μg/kgの用量が推奨臨床用量で、一般的な治療である。
試験の目的は、特に高催吐の化学療法を受けている患者に対して、
CINVをコントロールするための最も基本的なレジメンを確立させることにある。
方法:
1日目の化学療法開始の30分前に静注1回用量としてパロノセトロン(0.75mg)
かグラニセトロン(40μg/kg)を投与する群へとランダムに割り当てる。
デキサメタゾンの予防的投与(16mg静注)は1日目のパロノセトロンや
グラニセトロンの投与前の45分以内に行った。
シスプラチンを受ける患者には8mg静注、AC/EC療法の患者には4mg経口の
デキサメタゾンを2日目(化学療法から24~26時間後)と3日目(48~50時間後)に投与。
二重盲検の手法で試験は行われた。
5日間を効果のエンドポイント、8日間を安全性のエンドポイントとして追跡。
プライマリーエンドポイントは、急性期(化学療法後0~24時間)と、
遅延期(化学療法後24~120時間)でのCRの患者の割合。
セカンダリーエンドポイントは 、全体期での完全緩解、嘔吐の数、
最初の嘔吐までの時間、レスキューを服薬するまでの時間、治療失敗までの時間、
患者の主観的な評価とした。

結果および考察:
この第3相試験で、強い催吐作用がある化学療法を受けている患者において
吐き気と嘔吐の防止のpalonosetronの有効性は、急性期のグラニセトロンと非劣勢。
また遅発相ではグラニセトロンよりよいことが示された。
有害事象の頻度は、palonosetronとグラニセトロンでほぼ同じであった
これらの結果から、パロノセトロンとグラニセトロンを比較し、性別や年齢、
化学療法に関係なく、急性期の悪心・嘔吐に対しては薬剤間に有意な差はないが、
遅延期ではパロノセトロンのほうが完全制御率は高いとし、
「がん化学療法による悪心や嘔吐の予防には、パロノセトロンとデキサメタゾンを
標準治療にすべきである」と研究グループは結論づけた。
強い催吐作用がある化学療法の後、デキサメタゾンを併用て、
遅発型と全体的なCINVを防ぐ際にグラニセトロンに対するpalonosetronの有意性を
示す最初のレポートである。
最高2.25mgまでドーズアップしてもQTcを含むECGに対する重要な影響も
示さなかったので、制癌剤または他の併用薬物に関連があるかもしれない。
by otowelt
| 2009-03-12 14:08
| 肺癌・その他腫瘍