2010年 01月 11日 ( 2 )

ウェステルマン肺吸虫症

ウェステルマン肺吸虫症_e0156318_22593024.jpg●概要
 ウェステルマン肺吸虫(Paragonimus westermani)は
 アジアに広く分布し、淡水蟹体内に寄生しこれらを不十分
 な加熱のまま経口摂取することでヒトへ感染する。

●疫学
 集団感染は上海ガニを介したものや、韓国などのカニの入った
 食材によるものが報告されている。ウェステルマン肺吸虫症は
 近年増加傾向にあり特に九州での報告が多い。
 ヒトに感染すると最終的に肺内に定住し成虫となる。
 成虫は細気管支領域で直径1~2cm の虫囊内で成熟し産卵する。

●診断
 診断は喀痰、便、胸水から虫卵を証明することで確定する。
 ウェステルマン肺吸虫の虫卵は長径80~90μm、短径46~52μm と大形で
 変異に富み、左右非対称で、無蓋端の卵殻は肥厚するといった特徴をもつ。
 肺内病変の存在する症例では、虫卵は気管支鏡検査による気管支擦過、
 洗浄または気管支鏡後の喀痰により比較的検出されるが
 気管支鏡前の喀痰検査での検出率は低い。
                 Chest 2001 ;120 : 514―520

 一般に胸水からの虫卵検出は稀で、そのような症例では血清や胸水の
 寄生虫抗体検査が診断に有用である。胸水は滲出性であり
 胸水中ADA やACE が高値を示すことがある。
                 小児科臨床1991 ; 44 :1179―1182.

 画像所見では、胸水、胸膜肥厚、気胸などの胸膜病変が約60%に認められる。
                 Am J Roentgenol 1992 ; 159 : 39―43.
 虫囊を形成し寄生するために、結節、腫瘤、囊胞、線状影など多彩な
 肺実質病変が80% 以上に認められる。

●治療
 Praziquantel 75mgKg日を3 日間が有効である。
 胸水貯留例では薬剤が胸水で希釈される可能性があるため、
 可能な限り投薬前に胸水を排液することが望ましい。

文責"倉原優"

by otowelt | 2010-01-11 22:37 | レクチャー

バンコマイシン眼軟膏


年末に、バンコマイシン眼軟膏が発売された。
眼科医にとっても画期的な発売となる。
これまではバンコマイシンの注射製剤を院内で軟膏に混ぜて使用されてきたが、
安定性が悪く、刺激性があるなどの課題があったため、
日本眼感染症学会が製剤化を要望していた。


以下、日経メディカルオンラインより

2009年12月28日、バンコマイシン塩酸塩の眼軟膏製剤(商品名:バンコマイシン眼軟膏1%)が発売された。本製剤は、既に2009年10月16日に製造承認を取得し、12月11日に薬価収載されていた。適応は「バンコマイシンに感性のメチシリン耐性ブドウ球菌(MRSA)、メチシリン耐性表皮ブドウ球菌(MRSE)による既存治療で効果不十分な結膜炎、眼瞼炎、瞼板腺炎、涙嚢炎」であり、用法・用量は「1日4回適量を塗布」である。
 眼科領域でのMRSA感染症に関しては、有効な治療法が限られていた。バンコマイシンの静注も試行されてきたが、静注したバンコマイシンの眼房水への移行率が低く、有効濃度に達するには副作用を懸念する程の高用量の投与が必要になるという問題があった。
 また一部の病院では、バンコマイシンの静注製剤を使い、院内製剤として点眼液や眼軟膏が調製されていた。だが、バンコマイシンは水溶液中で不安定であるため、点眼液や眼軟膏の状態で長期間保管することは難しく、外来患者に投薬できないという問題があった。加えて、バンコマイシンには組織刺激性があるため、眼疾患への使用時に刺激を感じる患者が多く、コンプライアンスに問題が生じやすいという欠点もあった。
 こうしたことから、日本眼感染症学会は、眼局所への刺激性がなく、製剤学的に長期間安定で、感染病巣内への移行性が高い眼感染症用バンコマイシンの製剤化を要望しており、それを受けて開発されたのが、この「バンコマイシン眼軟膏1%」である。
 バンコマイシン眼軟膏は、油脂性の基剤で結膜や角膜への移行が極めて早く、眼刺激性がほとんどなく、長期にわたって製剤的に安定であり、使用される温度で適切な粘度を保ちながら結膜嚢に短時間で拡がる──などの特徴を有している。

by otowelt | 2010-01-11 20:51 | 感染症全般