2010年 05月 06日 ( 4 )

NASCENT試験:シルバーコーティング気管チューブはVAP死亡率を減らす

NASCENT試験の補追。

NASCENT試験の概要をまず説明する。
JAMA. 2008;300(7):805-813 (doi:10.1001/jama.300.7.805)
・Primary outcome
 24時間以上挿管した患者のBAL検体から
 104/ml以上の細菌数を認めるVAPの発症率
・Secondaryoutcome
 全挿管患者でのVAP発症までの時間・挿管期間・ICU入院期間・致死率・副作用との関係
上記の設定で、プライマリアウトカムの絶対リスク減少率
(absolute risk reduction) は、2.7%であった。
外傷患者で特に有用性がアピールされている。
NASCENT試験:シルバーコーティング気管チューブはVAP死亡率を減らす_e0156318_2023988.jpg
今回のCHESTでの補足だが、そもそも総死亡率が同じであるため、
シルバーコーティングの方がVAP死亡率が低いのだから
当然VAP以外の死亡率が有意に高いという、なんとも不可思議な結果になっている。

Association Between a Silver-Coated Endotracheal Tube and Reduced Mortality in Patients With Ventilator-Associated Pneumonia
CHEST May 2010 vol. 137 no. 5 1015-1021


背景:
 シルバーコーティングされた気管チューブ(s-ETT)はVAPを減らすことが
 NASCENT試験によりわかっている。

方法:
 この試験におけるリスクファクターを考察すべく、私たちはNASCENT試験において
 レトロスペクティブコホート分析をおこなった。
 
結果:
 総じて死亡率に差はでなかったものの、s-ETTはVAPの死亡率を減少させた。
(silver vs control, 5/37 [14%] vs 20/56 [36%], P=.03)
 しかし、VAP以外の死亡率は減少させなかった。
 (228/729 [31%] vs 178/687[26%], P=.03)
NASCENT試験:シルバーコーティング気管チューブはVAP死亡率を減らす_e0156318_195620100.jpg
結論:
 NASCENT試験によれば、シルバーコーティングされた気管チューブは
 VAPによる死亡率を減少させる。

by otowelt | 2010-05-06 23:43 | 集中治療

敗血症臨床試験においても長期予後はエンドポイントになりうる

敗血症の臨床試験のプライマリエンドポイントは院内28日死亡率であることが
多いのは言わずもがなである。
ALIなんかでは長期予後も大事なエンドポイントになりつつあるが、
敗血症でこれが妥当かどうかを検証した論文がCritical Care Medicineに
掲載されていた。
筆頭著者のDr. Bradford Wintersは神経集中治療分野のエキスパートで有名である。

Long-term mortality and quality of life in sepsis: A systematic review
Crit Care Med 2010 Vol. 38, No. 5


背景:
 敗血症の長期予後についてはよくわかっていない。
 そして、敗血症患者は死亡率およびQOLにそれぞれの臨床試験で
 異なる長期予後を有しているかもしれない。
 ALIのような集中治療疾患の長期予後は退院後も健康障害を及ぼす。
 これが敗血症で同じように長期死亡率およびQOLに関与するかどうかは
 まだわかっていないのが現状である。

目的:
 3か月以上の長期死亡率およびQOLを報告した論文をもとに
 システマティックレビューを作成。
 疾患は、sepsis, severe sepsis, septic shockとした。

結果:
 まず、よく使われている院内28日死亡率をはるかに超越した
 2年までの死亡率をエンドポイントに設定した。
 総じて、敗血症を有する患者は退院後もQOLを障害されていた。
 また、エンドポイントは臨床試験がなされた国や疾患によって大きく異なっていた。
 全体としては退院後も死亡率上昇リスクがありうるかもしれない。
敗血症臨床試験においても長期予後はエンドポイントになりうる_e0156318_19385171.jpg
結論:
 現在使用されている院内28日死亡率は、プライマリエンドポイントとしては
 敗血症分野では妥当ではない可能性がある。
 退院後もQOLの障害は続いており、これが死亡率に影響を与える可能性がある。

by otowelt | 2010-05-06 19:39 | 集中治療

45歳以上の男性で、肺炎球菌ワクチンは心血管イベントを減少させなかった

インフルエンザワクチンによる心血管イベントが減少することは有名だ。
いくつかの試験があるが、FLUVACS試験が有名。
ワクチン接種が免疫反応を非特異的に高めた効果が大きいと考えられている。

Influenza Vaccine Pilot Study in Acute Coronary Syndromes and Planned Percutaneous Coronary Interventions
Circulation. 2002;105:2143


今月のJAMAより、じゃあニューモバックスはどないやねん、という論文が出た。
2009年にCMAJに報告されてから、期待が高まっていた。

Pneumococcal Vaccination and Risk of Acute Myocardial Infarction and Stroke in Men
JAMA. 2010;303(17):1699-1706


背景:
 多くのスタディでは、インフルエンザワクチンによって心血管イベントが減少する
 ことがわかっている。しかしながら、肺炎球菌ワクチンの同効果については
 議論の余地がある。

目的:
 肺炎球菌ワクチンとAMIおよびstrokeのリスクの関係を調べる。

デザインおよび方法:
 前向きコホート試験。
 84170名(45~69歳: California Men's Health Study)

結果:
 フォローアップ期間で、1211の初発MIがワクチン接種を受けた112837人年で
 発症(10.73/1000人年)し、ワクチン接種を受けていない場合は
 1494初発MIが246170人年で発症(6.07 /1000人年)。
 strokeについては、ワクチン接取群で5.30/1000人年、非接種群で
 1.90/1000人年。
 肺炎球菌ワクチンによって統計学的に有意に心血管イベントを減少させなかった。
 HR,1.09; 95% CI 0.98-1.21(AMI)
 HR, 1.14; 95% CI,1.00-1.31(stroke)
 逆相関は、異なる年齢・リスク群男性で認めない。
45歳以上の男性で、肺炎球菌ワクチンは心血管イベントを減少させなかった_e0156318_18514130.jpg
結論:
 45歳以上の男性で、肺炎球菌ワクチンは
 急性心筋梗塞や卒中のリスク減少との関連性がなかった。

by otowelt | 2010-05-06 18:54 | 感染症全般

有用性をもって早期終了した臨床試験の効果は、誇張されている

有用性をもって早期終了した臨床試験の効果は、誇張されている_e0156318_655412.jpgStopping Randomized Trials Early for Benefit and Estimation of Treatment Effects
JAMA. 2010;303(12):1180-1187.


http://newsblog.mayoclinic.org/2010/03/19/study-on-stopping-clinical-trials/

メイヨークリニックから、臨床試験に関するスタンスの勧告。

JAMAから発表されたのは、治療効果が良好であることを理由に早期終了した
約100の臨床試験についての国際的な研究。
論文によれば、早期終了の研究は効果を誇張されている現状があるとのこと。
本研究の著者らは、研究者は臨床試験の早期終了への圧力に屈することなく、
早期終了を検討する以前に、より長期にわたって試験を継続するよう勧告した。

平均すると、早期終了した試験は、
効果のない治療で約30%の相対リスクの低下を示し、
真に20%の相対リスク低下効果のある治療では40%以上の低下を示す

by otowelt | 2010-05-06 06:53 | その他