2010年 05月 11日 ( 3 )

劇症1型糖尿病

先日の救急のバイトで、劇症1型糖尿病かと思われる症例を
みかけたので、個人的にまとめてみる。
HbA1cが5.7なのに、血糖値1380という数字に度肝を抜いた。

●劇症1 型糖尿病とは
 非常に急速に進行し、インスリン分泌が短期間で枯渇する1型糖尿病。
 2000年に日本から発表された。
 急性発症1 型糖尿病の約20%にのぼり、臨床的特徴として
 ①高血糖に比しHbA1c が低値であること
 ②糖尿病関連自己抗体が陰性であること
 ③発症時に膵外分泌酵素が上昇しており、尿中Cペプチドが発症時にすでに低値
  でインスリン分泌が枯渇している
 という点である。
           Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2007; 3: 36-45.
劇症1型糖尿病_e0156318_23172693.jpg
●診断基準:2004 年に糖尿病学会
 ①発症一週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る
  (初診時の尿中あるいは血中ケトン体陽性)
 ②初診時の血糖値が288mg/dl 以上でありHbA1c 値<8.5%
 ③発症時の尿中Cペプチド<10μg/ 日、または空腹時血清Cペプチド<0.3ng/ml
  かつグルカゴン負荷後(または食後2 時間)血清Cペプチド<0.5ng/ml
                糖尿病. 2005; 48 (Supple): A1-A13.

●病因
 劇症1型糖尿病患者では、約70 %の症例に発熱,上気道炎など風邪症状を伴う
 ことから、ウイルス感染は単なる随伴病ではなく糖尿病発症の原因であることが
 疑われている。
 ヒトの1 型糖尿病に関連するウイルスとしては、コクサッキーB群ウイルス、
 風疹ウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、
 水痘帯状ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、レトロウイルス、
 ロタウイルスなどが挙げられる。

●初診時症状
 口渇が90%にみられる。
 特徴的なのは、上気道炎症状(71.7%)や嘔吐・腹痛などの
 消化器症状(72.5%)がみられることである。
                 Diabetes Care. 2003;26: 2345-52.
 意識障害も45.2%の症例で認められるが、基本的に1型糖尿病では
 劇症型でないものに関しては5.3%にしかみられない。
劇症1型糖尿病_e0156318_2321998.jpg
●治療
 早期に診断され、大量輸液インスリンの補充が行われれば予後良好である。
 発見されたときに重篤な糖尿病性ケトアシドーシスを起こしている場合が
 あるので、発症して1両日以内の対応が重要である。

by otowelt | 2010-05-11 10:56 | 内科一般

救急におけるGlide Scopeを用いた挿管

日本ではAirway scopeがよく用いられているが、
Glide ScopeはAirway scopeほど太くない。
当院の集中治療室ではAirway scopeをしばしば使うことがある。
救急におけるGlide Scopeを用いた挿管_e0156318_14134846.jpg
Endotracheal intubation using a GlideScope video laryngoscope by emergency physicians: a multicentre analysis of 345 attempts in adult patients
Emerg Med J 2010;27:380-382


目的:
 Glide Scope(GVL)が救急医により発売後2年の間どのように用いられたか調査。

方法:
 5つの救急部において調査をおこなった。
 GVLによる挿管成功率を通常の喉頭鏡と比べた。

結果:
 GVLは3223の挿管のうち10.7%の345症例に用いられた。
 GVLにおけるoverall success rateは、喉頭鏡より有意に高いわけではなかった。
 (79.1% vs 77.6%, p=0.538)
 挿管困難例においては、有意にsuccess rateがGVLで高かった。
 (80.0% vs 50.4%, p<0.001).

結論:
 GVLはそれほど頻繁に用いられておらず、喉頭鏡に比べて成功率を上昇させる
 わけではない。しかしながら、挿管困難例においては有用であると考えられる。

by otowelt | 2010-05-11 03:14 | 救急

急性の腰・頚部のコリには、温パック・冷パックに有意差なし

救急にやってきた”こり”に対して、冷パックがいいのか、温パックがいいのかという
ランダム化比較試験。非常に面白い。
イブプロフェンが邪魔だが、こればかりは救急患者を相手にしているので
仕方ないところか。。。。
結論としては、どちらでもかまわないということになった。

Heat or Cold Packs for Neck and Back Strain: A Randomized Controlled Trial of Efficacy
ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2010; 17:484–489


目的:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりはよくみられる主訴である。
 これに対しては温湿布や冷湿布が使用される。
 この試験の目的は、鎮痛のために温湿布か冷湿布のどちらがよいのかを
 調べるものである。

方法:
 ランダム化比較試験は大学病院の救急部でおこなわれた。(年間9万人ER来院)
 18歳をこえる救急受診患者のうち、急性の腰あるいは頚部のこわばりを主訴に
 来院した患者で検証。
 すべての患者は400mgイブプロフェンを経口投与され、30分間
 ホットパックあるいはコールドパックに割りつけられた。
 アウトカムは、疼痛重症度をVASで計測したもの、レスキュー鎮痛薬を使用した
 割合、VASによる疼痛軽減度、同じようなパックを将来的に行いたいかどうかという点
 とした。

結果:
 60人の患者のうち、31人が温パック、29人が冷パックにあてられた。
 平均年齢は37.8歳、51.6%が女性、66.7%が白人だった。
 両群ともに、疼痛重症度に前後で差がみられなかった
 前:75 mm [95% CI = 66 to 83] vs. 72 mm [95% CI = 65 to 78]; p = 0.56
 後:66 mm [95% CI = 57 to 75] vs. 64 mm [95% CI = 56 to 73]; p = 0.75
 疼痛が改善したと申告した人は、温パックで16/31 (51.6%)、冷パックで
 18/29 (62.1%)であった(p = 0.27)。これも有意差なし。
 将来同じような場合にパック治療をおこないたいかという問いに関しては
 いずれも同程度の回答であった(p = 0.65)。

結論:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりに対してイブプロフェン内服後に30分の
 温あるいは冷パックをおこなっても、いずれも疼痛改善に関しては差がない。
 そのため、いずれを選択しても構わない。

by otowelt | 2010-05-11 02:41 | 救急