2010年 05月 12日 ( 2 )

C.difficile関連腸炎 2010年IDSAガイドライン

2010年になってから更新されたIDSAガイドラインを読むのをサボっていた。
今回、サンフォードに記載されていた、2回目の再燃例における
バンコマイシン+リファンピシンについては触れられていなかった。

Clinical Practice Guidelines for Clostridium difficile Infection in Adults: 2010 Update by the Society for Healthcare Epidemiology of America (SHEA) and the Infectious Diseases Society of America (IDSA)
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<executive summaryの全訳>
1. 臨床状況での比較をしやすくするためにサーベイランスの定義を
 (1)healthcare(HCF)-onset, HCF-associated CDI:入院48時間後
 (2)Community onset, HCF-associated CDI:退院4週間以内
 (3) Community associated CDI: 退院12週以後(4-12週はIndeterminate)
 に分類する。(B-III)
2. HCF onset, HCF associated CDIは全ての入院患者でモニターする。(B-III )
3. 10000patients-daysあたりの発生数をHealth care associated CDI
 として表現する。(B-III)
4. CDIの発生率が他の施設より高い、あるいはCDIのアウトブレイクがあれば、
 制御方法を絞るために患者の場所ごとに発生率を出す。(B-III)
5. C.difficileまたはそのtoxinの検査は、C.difficileによるイレウスが疑われなければ
 下痢便で行うべきである。(B-II)
6. 症状がない患者での便検査は有用でない。疫学的研究以外で推奨しない。(B-III)
7. 便培養は最も感度が高く、疫学的研究に効果的である。(A-II)
8. 便検査は発育時間が遅いので臨床的に実践的でないが、熟練した検査室が
 施行した場合は、便培養、Toxin産生株の分離は感度・特異度において
 他の検査より優れている。(B-III)
9. EIA法でのToxin A, Bの検査は迅速だがcell cytotoxin assayに比べると
 感度が低いため、代替手段となっている。(B-II)
10. Toxin 検査は臨床的に最も重要だが、感度が問題である。案として
 GDH(Glutamate dehydrogenase)のEIA検出を行い、陽性例に対して
 Cell cytotoxicity assayあるいはtoxigenic cultureを行う。
 GDHキットによってその結果は異なるため、GDHに対する感度のデータが
 そろうまでは暫定的推奨としておく。(B-II)
11. PCRは迅速で感度、特異度がよく最終的に有用な検査手段の可能性がある。
 ルーチンとして推奨されるまではおりデータが必要である。(B-II)
12.下痢の複数回の検査は効果が限定されており、推奨されない。(B-II)
13. 医療従事者・訪問者がCDI患者の部屋に入る時は手袋, ガウンを装着。(A-I、B-III) 
14. 手指衛生の実践のコンプライアンスを強調する。(A-II)
15. CDI率が高い場合あるいはアウトブレイクしている場合、接触あるいはケア後に
 石鹸、水で洗うように訪問者、医療従事者に指導する。(B-III)
16. 接触予防策をおこなった上、個室に入れる。(B-III)
 個室が難しければ各患者にdedicated commodeを提供するため
 患者をコホート隔離する。(C-III)
17. 下痢がある期間、接触予防策を維持する。(C-III)
18. 感染制御目的でルーチンの無症候性キャリアの同定は推奨しない。(A-III)
 また、同定された患者における治療は効果的ではない。(B-I)
19. C.difficileの感染源を同定し除去する。ディスポ直腸体温計は
 CDIの発生率を減らす。(B-II)
20. CDIの発生リスクの高い所に関連する場所ではChlorine含有、または
 sporicidal製剤を使用して清掃する。(C-III)
21. C.difficileの定期的スクリーニングは推奨されない。(C-III)
22. 抗菌薬の使用頻度、期間、処方される抗菌薬を最小化することは
 CDIのリスクを減らす。(A-II)
23. Antimicrobial stewardship programを導入する。(A-II)
 抗菌薬でcephalosporinとclindamycinの使用制限は有用である。(C-III)
24. 現在利用可能なプロバイオティクスの導入はデータが限られている。
 血流感染の可能性よりCDIの一次予防には推奨されない。(C-III)
25. できる限り抗菌薬を中止する。再発のリスクに影響するかもしれない。(A-II )
26. 重症、複雑性CDIが疑われた時はすぐに経験的治療を開始する。(C-III)
27. Toxin が陰性であるならば、開始、中止、継続は個々に判断する。(C-III)
28. 症状をわからなくしてしまうような中毒性巨大結腸症のリスクになるため、
 可能ならば腸管蠕動抑制薬は避ける。(C-III)
29. メトロニダゾールは軽症~中等症の初期治療である。
  量は500mg 1日3回経口10-14日間とする。(A-I)
30. バンコマイシンは重症CDIの初期治療である。量は125mg1日4回を10-14日。
31. 経口バンコマイシン±静注メトロニダゾールは重症かつ複雑性CDIの選択肢。
 バンコマイシン500mg1日4回、注腸で500mgを100mlの生食に溶かして6時間毎、
 メトロニダゾール500mgを静注で8時間ごとに投与する。(C-III)
32. 病状の悪い患者では腸切除を考慮。血中乳酸、末梢白血球が手術の決断を
 促進するために参考になる。(乳酸5mmol/l以上、白血球5万以上は周術期のリスク)
 手術が必要ならば直腸温存のもとsubtotal colectomyを行う。(B-II)
33. CDIの初期再発は最初の治療と同じ(A-II)だが重症度により
 分類されるべきである。(C-III)
34. 初期再発からの長期におよぶ治療で、メトロニダゾールは蓄積性の神経毒性の
 可能性より用いない方がよい。(B-II)
35. 2回目以降の再発におけるバンコマイシン治療は漸減またはパルス療法が
 次の戦略として好まれる。(B-III)
36. 背景の感染症による抗菌薬持続が必要な患者に対して、CDI再発予防に
 関しての推奨はできない。(C-III )

●バンコマイシン漸減療法:
 第1週:125mg1日4回
 第2週:125mg1日2回
 第3週:125mg1日1回
 第4週:125mg隔日
 第5~6週:125mg3日ごと

●バンコマイシンパルス療法:
 Tedescoらのスケジュールでは、
 125 mg/6時間を7日間、
 125 mg/12時間を7日間
 125 mg/dayを7日間
 1日おきに125 mg/dayを7日間
 2日おきに125 mg/dayを14日間
     Am J Gastroenterol 80 (11): 867~868, 1985.

●最終手段:便中細菌叢置換(他人(家族)の便を食べる・胃管から入れる)
 本当に最終手段である。
     CID 36:580, 2003
文責"倉原優"

by otowelt | 2010-05-12 16:32 | 感染症全般

小児CPAにバイスタンダーによるhands only CPRはNG

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AHAガイドライン2010で、バイスタンダーCPRで
人工呼吸が省略されることはほぼ確実で、
hands only CPRが主流となると思います。
  Circulation 2008:117;2162-7



ただ、AHAと仲の悪いERCは、
1.心停止が目撃されていない心停止
2.小児の心停止
3.ほとんどの病院内の心停止
4.溺水や気道閉塞などの心臓が原因ではない心停止
5.4分以上続いているCPR
では人工呼吸が大事なので、hands only CPRをガイドラインが出る前に
ステートメントとして出すなとAHAを牽制していました。

日本から素晴らしい論文が出ました。Lancetに掲載されたのがすごいところです。
小児バイスタンダーCPRに対してHands only CPRではなく、
人工呼吸が大事だと言う事を示した初めての論文です。
PALSは受講していないが、覚えておいた方がよさそう。

Conventional and chest-compression-only cardiopulmonary resuscitation by bystanders for children who have out-of-hospital cardiac arrests: a prospective, nationwide, population-based cohort study
The Lancet, Volume 375, Issue 9723, Pages 1347 - 1354, 17 April 2010


背景:
 アメリカ心臓協会(AHA)は、成人の院外心停止例にはその場に居合わせた
 目撃者による(バイスタンダー)胸部圧迫のみのCPRを推奨しているが、
 小児はその限りでない。理由として、成人の心停止は心原性の場合が多く
 従来型CPRと胸部圧迫のみのCPRに生存率の差はないことによる。
 小児の心停止は心原性よりも呼吸器疾患(窒息、溺水など)によるものが多い。

方法:
 小児の院外心停止例に対するその場に居合わせた目撃者(バイスタンダー)に
 よる処置として、胸部圧迫に人工呼吸を併用する従来型CPRと胸部圧迫のみの
 CPRの効果を比較する地域住民ベースのプロスペクティブなコホート試験を行った。
 プライマリエンドポイントは、院外心停止後1ヵ月の時点における神経学的予後
 (Glasgow-Pittsburgh脳機能カテゴリーが1あるいは2)とした。

結果:
 院外で心停止をきたした17歳以下の小児5170例が登録。
 年齢、心停止の原因、目撃者の有無、CPRの種別などが記録された。
 全心停止例のうち、3,675例(71%)が非心原性、1,495例(29%)は心原性。
 バイスタンダーによって、1551例(30%)に人工呼吸を併用する
 従来型CPRが施行され、888例(17%)は胸部圧迫のみのCPRを受けた。
 CPRの有無別の解析では、良好な神経学的予後の割合は、バイスタンダー
 によるCPRを受けた小児が4.5%(110/2,439例)と、CPRを受けなかった
 小児の1.9%(53/2,719例)に比べ有意に高かった
 (補正OR:2.59、95%CI:1.81~3.71)。
 1~17歳の非心原性心停止例の良好な神経学的予後率は、バイスタンダーによる
 CPR施行例が5.1%(51/1004例)と、CPR非施行例の1.5%
 (20/1293例)に比べ有意に優れた(補正OR:4.17、95%CI:2.37~7.32)。
 CPRの種別では、従来型CPRの良好な予後率は7.2%(45/624例)と、
 胸部圧迫単独CPRの1.6%(6/380例)に比べ有意に優れた

 (補正OR:5.54、95%CI:2.52~16.99)。
 1~17歳の小児と比較して、1歳未満の幼児の院外心停止例の神経学的予後は、
 きわめて不良であった。

結論:
 院外における非心原性CPAの小児に対しては、
 バイスタンダーが胸部圧迫に人工呼吸を併用したCPRを行うべきである。

by otowelt | 2010-05-12 16:04 | 救急