2010年 06月 10日 ( 3 )

COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する

COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する_e0156318_125953.jpgきれいな大学病院だなぁ。
さすがオランダ。

β-blockers may reduce mortality and risk of exacerbations in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Arch Intern Med. 2010;170:880-7
背景:
 COPDは動脈硬化を促進し、心血管疾患が合併することが多い。心血管疾患の
 診断もしっかり行われていない症例が多いが、心血管疾患を明らかに
 合併しないCOPD症例に対して、βブロッカーの使用が予後を改善するかは不明。

方法:
 Utrecht General Practitioners(GPs)Networkデータベースを使用。
 診断および処方はすべてコード化されている。
 2005年12月の時点で、データベース症例約60000例で、
 そのうち20362例が45歳以上であった。これを対象として、
 1995年1月1日から2005年12月31日までの間にCOPDと診断された症例を解析。
 プライマリエンドポイントは総死亡、観察期間中初回のCOPD急性増悪とした。
 COPD急性増悪の定義は、ステロイドパルスおよび7~10日間のステロイド使用、
 または同増悪条件下による入院と定義した。

結果:
 2230例のうち、当初より診断されていたCOPDが560例(25%)、
 観察期間中に診断されたCOPDは1670例(75%)。平均年齢64.8歳(SD:11.2)。
 53%が男性であった。平均観察期間7.2年の期間において、全体で686例(30.8%)
 が死亡。βブロッカー使用群の27.2%が、非使用群の30.8%が死亡(P=0.02)。
COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する_e0156318_1250475.jpg
 最低1度のCOPD急性増悪を経験したのは1055例(47.3%)。
 βブロッカー使用群の42.7%が、非使用群では49.3%がCOPD急性増悪を
 経験していた(P=0.005)。
 心血管系の合併症を有する症例は、ほかのグループより有意に死亡率が高かった。
 (35.5% VS 21.4%、P<0.001)。
 βブロッカー投与を受けた症例は665例(29.8%)で、多くが心選択性。
 βブロッカー使用群の、非使用群に対する総死亡の非調整HRは0.70
 (95%CI:0.59-0.84)、調整HRはCP modelで算出した場合0.68
 (95%CI:0.56-0.83)。傾向スコアで調整した場合のHRは0.64
 (95%CI:0.52-0.77)。心選択性βブロッカーでは調整した場合のHRは
 0.67(95%CI:0.55-0.83)、0.63(95%CI:0.51-0.77)。非選択性
 βブロッカーで0.82(95%CI:0.61-1.10)、0.80(95%CI:0.60-1.05)。
 1670例の観察期間中新規診断COPDのうち530例がβブロッカーを使用。
 191例は診断前後もβブロッカーを使用し、84例は中止。
 255例がCOPDの新規診断後に使用を開始。
 サブグループ解析では、βブロッカー中止群において死亡HRが最も高かった
 非調整HR0.71(95%CI:0.46-1.11)、調整HR(CP、PS)は、
 それぞれ0.89(95%CI:0.56-1.42)と0.75(95%CI:0.47-1.19)。

結論:
 COPD患者にβ遮断薬を投与すると、COPD増悪のリスクが減り、
 生命予後が改善する可能性がある。

当然ながら、RCTではないので課題が残る。これはこういったスタディの
宿命でもある。ただ、心血管疾患合併の有無にかかわらずこういった結果が
出ているのは非常に大きいし、呼吸器内科医としては大規模RCT並に
話題性のある臨床試験だと考えなければならない報告である。

by otowelt | 2010-06-10 12:50 | 気管支喘息・COPD

敗血症による院内死亡率は、結婚していない患者では高い

コミュニティサーベイランスを用いているので、
敗血症37000人という途方もない人数のスタディである。
結婚事情が全く違うので、日本にこのスタディは適応されないとは思うのだが…。

Marital Status and the Epidemiology and Outcomes of Sepsis
CHEST 2010; 137(6):1289–1296


背景:
 敗血症はよくみられる重要なプロブレムである。社会的な因子が、医療受給、
 経済的財源、免疫応答、感染症での入院に影響しているかもしれないと考えた。
 このスタディは婚姻ステータスが敗血症の発症とアウトカムに影響するか
 コホートで検証したものである。

方法:
 2006年にニュージャージーに1113581人が入院した。われわれは、
 リスク調整罹患率比(IRR)を敗血症患者において、離婚、死別、法的別居、
 独身、結婚している、といった状況をAmerican Community Surveyのデータ
 を用いて算出した。婚姻ステータスが入院死亡率にどう影響するか
 多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

結果:
 37524人の敗血症入院患者のうち、40%が結婚しており(14924人)、
 7%が離婚(2548人)、26%が死別(9934人)、2%が法的別居(763人)、
 26%(9355人)が独身であった。敗血症で入院した患者のうち、年齢、性別、
 人種別の調節IRRは、結婚している人に比べると独身がもっとも高く
 (IRR=3.47;95%CI 3.1-3.9)、続いて死別(IRR=1.38;95%CI 1.2-1.6)、
 法的別居,(IRR 5 1.46; 95% CI, 1.2, 1.8) と高いIRRがみられた。
 結婚している男性に比べると、独身の男女および離婚した男性において、
 院内死亡率の高いオッズ比がみられた。

 死別あるいは法的別居の男性およびすべての既婚女性は、敗血症において
 有意に高い死亡率ではなかった。
敗血症による院内死亡率は、結婚していない患者では高い_e0156318_1103981.jpg
結論:
 敗血症での入院は、独身、死別、法的別居の患者ではよくみられる。
 そのうち、独身男性、離婚した男性、独身女性は院内死亡率が高い。


理由として挙げられるのが、こういったsingleの患者における
社会生活の変容である。喫煙や飲酒、生活リズム不摂生など、
singleであることに健康面でいいことは全くないという論文が多い。
・Effects of marital transitions on changes in dietary and other health behaviours in US women . Int J Epidemiol . 2005 ; 34 ( 1 ):69 - 78 .
・Effects of marital transitions on changes in dietary and other health behaviours in US male health professionals . J Epidemiol Community Health . 2005 ; 59 ( 1 ): 56 - 62 .

by otowelt | 2010-06-10 12:24 | 感染症全般

XDRTBには、新しい世代のフルオロキノロンを使う方がアウトカムがよい

CIDからの論文。去年からアナウンスされていたことである。
著者のKaren R. Jacobsonは、やさしい感じの女医さんだったと記憶している。

XDRTBの定義は、
「INHとRFPに耐性を示し、フルオロキノロン系いずれかと、
注射二次薬(カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン)
の少なくともひとつに耐性をもつ結核菌」である。

Treatment Outcomes among Patients with Extensively Drug‐Resistant Tuberculosis: Systematic Review and Meta‐Analysis
Clinical Infectious Diseases 2010;51:6–14


背景:
 XDRTB治療は大きく変化してきている。セカンドラインの抗結核薬は
 あまり効果が見られないうえに毒性が強く、ファーストラインよりもコストが
 かかってしまう。XDRTBとは、定義上は、キノロンを含めた
 セカンドラインのオプションに耐性を示すものである。
 われわれは、XDRTB治療において良好な効果を示す文献から
 メタアナリシスをおこなった。

方法:
 PubMed、EMBASEのデータベースを使用してXDRTB治療アウトカムを検証。

結果:
 560人の患者を含む13の観察研究がヒットした。
 43.7% (95%CI, 32.8%–54.5%)がよいアウトカムを呈していた。
 20.8% (95%CI, 14.2%–27.3%)が死亡。
 後世代のフルオロキノロン(レボフロキサシン、モキシフロキサシン、
 スパルフロキサシン)で治療された患者は良好なアウトカムであった。
 (P = .001) 良好なアウトカムを呈していた患者は、
 近年の新しい世代のフルオロキノロンを使用している傾向があった。

結論: 
 このメタアナリシスによると、XDRTBに対して初期治療で
 新しい世代のフルオロキノロンを加えることによって臨床アウトカムが
 改善することがわかった(たとえ、フルオロキノロン耐性であったとしても)。
 この結果は、新世代フルオロキノロンをXDRTB治療レジメンに加えてもよいと
 考えられ、今後臨床試験によって評価すべきと考える。


オールドキノロンとニューキノロンの交差耐性は明らかであるが、
XDRTBには関係ないのか??
検査室で耐性と出ても、キノロンを使うとアウトカムがよくなると
いう結論なので、それを信用するしかないわけだが…

by otowelt | 2010-06-10 12:21 | 抗酸菌感染症