2010年 08月 13日 ( 2 )

NDM-1;ニューデリーメタロβラクタマーゼの世界的拡散の恐れ

NDM-1;ニューデリーメタロβラクタマーゼ。
日本ではあまり取り上げられていないが、全世界的に医療従事者や旅行者向けに
ニュース速報が次々と出ているので知っている方も多いだろう。
現在感染症界をにぎわしている、大トピックである。

インド政府の対応は”安全”としているが、
現地では死亡率が非常に高いというウワサで混乱が生じている。

これに関しては知識がないので、動向に注目したい。

インド衛生省は8月12日に声明を発表し、一部の西側メディアが最近、新しく現われたNDM-1(New Delhi Metallo-1)と呼ばれるメタロβラクタマーゼをインドと関連付けたことに強く反対し、「インドでは、いま、いかなる病気の脅威も全くなく、インドへの医療観光は非常に安全だ」と強調した。
インドを中心とする東南アジアで、形成外科手術や美容整形術を受けた人が
薬剤耐性の高い細菌に感染する例が増えており、専門家は注意を呼びかけている。


Google ニュース
BBCニュース

該当する、Lancet Infectious Diseaseから8月11日の論文。

Emergence of a new antibiotic resistance mechanism in India, Pakistan, and the UK: a molecular, biological, and epidemiological study
The Lancet Infectious Diseases, Early Online Publication, 11 August 2010doi:10.1016/S1473-3099(10)70143-2


背景:
 New Delhi metallo-β-lactamase 1 (NDM-1) による
 カルバペネム耐性グラム陰性腸内細菌が世界的な問題となっている。
 われわれは、NDM-1の有病率をインド、パキスタン、イギリスで調査した。

結果:
 NDM-1をチェンナイで44例、ハリヤナで26例、イギリスで37例、
 他のインド・パキスタン地域で73例同定した。
 NDM-1は大腸菌で35、Klebsiella pneumoniaeで111で、tigecycline、colistinを
 除いてすべての抗生剤に耐性であった。
 ハリヤナで分離のKlebsiella pneumoniaeはクローナルであったが、
 イギリスおよびチェンナイにおけるものはクローン多様性がみられた。
 ほとんどの微生物がプラスミド内のNDM-1遺伝子をもっていた。
 イギリスのNDM-1陽性患者の多くはインド・パキスタンへの1年以内の旅行者か、
 これらの国と関連があった人間であった。

結論:
 NDM-1は世界的に多大な問題を有するため国際的なサーベイランスを必要とする。

by otowelt | 2010-08-13 21:37 | 感染症全般

プロカルシトニン

覚えられない自分への学習のため。

●プロカルシトニンとは
プロカルシトニン(PCT)はアミノ酸116個よりなる分子量約13kDaのペプチドで、
正常な人ではカルシトニンの前駆体として甲状腺C細胞で合成される。
        J Clin Endocrinol Metab 89 : 1512-1525, 2004.

重篤な感染症においては、菌体や毒素などの作用により、
TNF-αなどの炎症性サイトカインが産生され、その刺激を受けて
肺・腎臓・肝臓・脂肪細胞・筋肉といった全身の臓器で
PCTが産生され、血中に分泌される。

細菌感染時の血中PCT は、多くが全身の各種臓器に由来している。
しかし、白血球などの血球成分からはほとんど分泌されない。
        Endocrinology 144 : 5578-5584, 2003.

すなわちステロイドや抗癌剤など白血球の機能に影響を与えやすい薬剤を使用
しているような状況下であっても、細菌感染症の場合は血清PCT 濃度の上昇は
妨げられない

        J Leukoc Biol 72: 643-649, 2002.

●プロカルシトニンの臨床応用
成人血中PCT濃度<0.05ng/mlであり、
感染症、とくに細菌感染や敗血症の有無に関して有用とされている。
最近のメタアナリシスでは、敗血症と非敗血症の鑑別に対して
感度・特異度ともに71%であったとのネガティブな結果がある。

        Lancet Infect Dis 2007; 7:210.

よく引用される数字としては、以下のものがある。
細菌感染と非感染性疾患の鑑別では
 プロカルシトニン:感度88%、特異度81%
 CRP:感度67%、特異度67%
細菌感染とウイルス感染では、
 プロカルシトニン:感度92%、特異度73%
 CRP:感度86%、特異度70%
        Clin Infect Dis. 2004;39:206-17.

上昇は、菌血症では高値だが、真菌では中等度ぐらいであるとされている。
また、ウイルス感染でも上昇は軽度である。しかしながら、感染症において
PCTが上昇している期間が長いほど、死亡率が高いという報告がある。
        Crit Care Med 2006 ; 34 : 2596-602

また、抗菌薬の使用期間を3.5日短縮可能することが可能であるともされている。
        Am J Respir Crit Care Med 2008 ; 177 :498-505

最近のPRORATA試験では、PCT介入アルゴリズムによって
死亡率に差はないが、抗菌薬曝露期間を減少したという結果だった。
        Lancet 2010; 375: 463-74
プロカルシトニン_e0156318_11551934.jpg
ちなみにPRORATA試験のアルゴリズムとしては、
 <0.25 µg/L: 抗生剤中止強く推奨
 ≧0.25 and <0.5 µg/L: 抗生剤中止推奨
 ≧0.5and <1µg/L: 抗生剤推奨
 ≧1 µg/L: 抗生剤強く推奨

ICUにおける死亡率は、PCTレベルが高い群の方が
当然ながら高い結果であった。
        Crit Care Med. 2006;34:2596-602.
プロカルシトニン_e0156318_127699.jpg

現在までの臨床試験により、PCTが感染症において有用にあることは変わりないが
敗血症と非敗血症の区別ができない可能性がある。
また抗菌薬の曝露は減るものの、PCTで評価をしたところで
死亡率に差がでないというのが結論であろう。


●プロカルシトニンの偽陽性・偽陰性
●偽陽性
・生後間もない新生児
・急性呼吸促迫症候群(ARDS)
・急性熱帯熱マラリア
・全身性真菌感染症(カンジダ,アスペルギルス,他)
・重症外傷
・外科的侵襲
・重度熱傷
・熱中症
・化学性肺炎
・成人型スティル病
・ホルモン産生腫瘍(甲状腺髄様癌,肺小細胞癌,他)
・サイトカイン・ストーム状態

●偽陰性
・感染の急性期
・軽症感染
・局所感染
・亜急性心内膜炎
        Cardiovascular Engineering, 1(1), 67, 1996
        Swiss Med Wkly 135: 451-460, 2005.

by otowelt | 2010-08-13 11:35 | 感染症全般