2010年 08月 22日 ( 2 )

COPD急性増悪におけるステロイドのエビデンス

●COPD急性増悪におけるステロイド使用について
 COPD急性増悪におけるステロイド全身投与は、呼吸機能の改善、
 増悪治療の成功率を上昇させるだけでなく在院日数も軽減することができる。
・Controlled clinical trial of methylprednisolone in patients with chronic bronchitis and acute respiratory insufficiency. Ann Intern Med 1980; 92:753.
・Contemporary management of acute exacerbations of COPD: a systematic review and metaanalysis. Chest 2008; 133:756.


 271人のCOPD急性増悪患者でステロイド使用群と非使用群に割り付けされた
 NEJMの臨床試験(SCCOPE試験)の結果では、
 30日治療失敗率は、ステロイド使用23% VS ステロイド非使用33%
 90日治療失敗率は、ステロイド使用37% VS ステロイド非使用48%
 (いずれもP値=0.04であった)
 在院日数は、ステロイド使用8日 VS ステロイド非使用10日
Effect of systemic glucocorticoids on exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Department of Veterans Affairs Cooperative Study Group. N Engl J Med 1999; 340:1941.

 ステロイドは経口でも静脈注射でも違いがない。(消化管が問題なければ)
Oral or IV prednisolone in the treatment of COPD exacerbations. Chest 2007; 132:1741.
 
 吸入ステロイドについては、ランダム化試験がおこなわれていないので
 急性増悪時に使用することについては意義は不明である。

 ステロイドの適切な量はいまだにわかっていないが、
 一般的には以下のように使われることが多い。
 ・静脈注射— メチルプレドニゾロン(60~125mgを2~4回/日)
 ・経口 — プレドニゾロン(40~60mgを1日1回)
Global strategy for the diagnosis, management, and prevention of chronic obstructive pulmonary disease.

 ステロイドの投与期間はこれもエビデンスがないが、
 7~10日くらいのステロイドを投与する。
 3日間と7日間のステロイドでは後者の方が成績(1秒量とPaO2)がよかった。
Systemic glucocorticoids in severe exacerbations of COPD. Chest 2001; 119:726.
e0156318_1312555.jpg

●COPD急性増悪時の短期間のステロイドによって感染リスクは上昇するか?
 SCCOPE試験では、8週間という長期のステロイド患者において
 肺炎の発症がみられたが、短期間の使用では感染リスクは認められなかった。
Effect of systemic glucocorticoids on exacerbations of chronic obstructive pulmonary disease. Department of Veterans Affairs Cooperative Study Group. N Engl J Med 1999; 340:1941.
 
 ただ、septic shockの患者における高用量ステロイドを短期間使用するケースでは
 感染リスクの増加(細菌感染およびそれによる死亡率上昇)がみられる報告があるので
 ステロイドはあくまでlow-moderateにとどめておくべきかもしれない。
A controlled clinical trial of high-dose methylprednisolone in the treatment of severe sepsis and septic shock. N Engl J Med 1987; 317:653.

 CORTICUS試験では、新たな敗血症が相対リスク2.78 (1.02–7.58)であった。
Hydrocortisone therapy for patients with septic shock (CORTICUS). N Engl J Med, 358: 111-124, 2008.

 現段階では、low-moderateの用量のステロイドを短期に使用することにおいて
 感染リスクを増加させるというエビデンスはない。

"文責"倉原優

by otowelt | 2010-08-22 08:03 | 気管支喘息・COPD

人工股関節あるいは膝関節置換術において硬膜外・脊髄麻酔は手術部位感染を減少させる

Anesthetic Management and Surgical Site Infections in Total Hip or Knee Replacement: A Population-based Study:A Population-based Study
Anesthesiology 2010; 113:279 – 84


背景:
 硬膜外あるいは脊髄麻酔はさまざまなメカニズムにおいて 
 手術部位感染症(SSI)を減少させるのではないかという仮説を検証する。
 このスタディの目的は、術後30日以内のSSIのリスクを
 人工股関節置換あるいは膝関節置換を全身麻酔あるいは硬膜外・脊髄麻酔で
 おこなった場合を比較するものである。

方法:
 台湾におけるthe Longitudinal Health Insurance Databaseを使用し、
 上記手術を受けた3081人の患者を登録。
 多変量ロジスティック回帰解析および傾向スコアで検証した。

結果:
 2081人の患者のうち、56人(1.8%)が30日の時点でSSIを有していた。
 33人が全身麻酔、23人が硬膜外あるいは脊髄麻酔であった(P = 0.002)。
 全身麻酔による人工股関節・膝関節置換術のSSIのオッズ比は
 硬膜外あるいは脊髄麻酔と比較して2.21 (95% CI = 1.25–3.90, P = 0.007)。
e0156318_111571.jpg
結論:
 人工股関節あるいは膝関節置換術を全身麻酔で受けた場合、
 SSIのリスクは硬膜外・脊髄麻酔よりも高い。


なぜ全身麻酔より硬膜外・脊髄麻酔の方がSSIが低いのかということは、
筆者も「よくわからない」という結論になっている。
ただ、可能性としては以下のようなプロセスが考えられている。

硬膜外あるいは脊髄麻酔は、交感神経ブロックをされるため
血管拡張が全身的に起こりやすい。そのため、組織酸素濃度が全身麻酔に比べて
高い傾向にある。
・The effects of epidural and general anesthesia on tissue oxygenation. Anesth Analg 2003; 96:1553–7
・Thoracic epidural anesthesia increases tissue oxygenation during major abdominal surgery. Anesth Analg 2003; 97:1812–7

結果的に、多核白血球が手術部位において上昇する。
これがSSIの減少につながるのではないかと考えられている。
The anesthesiologist’s role in the prevention of surgical site infections. Anesthesiology 2006; 105:413–21

by otowelt | 2010-08-22 07:19 | 感染症全般