2011年 03月 28日 ( 2 )

多発外傷後敗血症の死亡率は改善していない

多発外傷後敗血症の死亡率が不変であるという疫学的研究が
Crit Care Medから出ていた。

Epidemiology and risk factors of sepsis after multiple trauma: An analysis of 29,829 patients from the Trauma Registry of the German Society for Trauma Surgery
Crit Care Med 2011; 39:621– 628


目的および方法: 
 このスタディの目的は、
 1) 1993年から2008年までの間、ドイツにおける多発外傷後の敗血症の
  アウトカムを調べ、
 2) 外傷後敗血症の独立危険因子を評価することである。
 レトロスペクティブにドイツにおける外傷レジストリーからデータ抽出。
 合計166の外傷センター(levels I–III)。

患者:
 1993年から2008年の間に上記レジストリーへ登録された
 患者で外傷のInjury Severity Scoreが9点を超え、ICUに入室した
 患者を検証した(n=29,829)。

結果:
 16年以上の観察期間において、10.2%(3,042人)が
 院内において敗血症となった。年間のデータは
 1993–1996, 1997–2000, 2001–2004, 2005–2008の
 サブグループにわけられた。敗血症の発症はこの4つのサブピリオド
 において14.8%, 12.5%, 9.4%, 9.7% (p < .0001)であった。
 外傷患者における院内死亡率も同様に16.9%, 16.0%, 13.7%, 11.9%
 であった(p <.0001)。敗血症が原因の死亡に関しては
 16.2%, 21.5%, 22.0%, 18.2% (p=.054)であった。
 多変量ロジスティック解析において外傷後敗血症の独立危険因子を
 解析したところ、以下の如くであった。
 男性、年齢、基礎疾患の存在、GCS8点未満、Injury Severity Score、
 Abbreviated Injury Scale(THORAX)score 3点を超えるもの、
 外傷部位の数、赤血球輸血単位数、手術数、開腹術。
多発外傷後敗血症の死亡率は改善していない_e0156318_22585710.jpg

結論:
 敗血症の頻度は観察期間中減少したものの、
 この10年では変化はみられなかった。多発外傷における全死亡率は
 1993年から減少したが、敗血症における死亡は不変であった。
 すなわち、敗血症はいまだに克服すべき外傷の重要な合併症であると
 考えられる。独立危険因子を把握することは、早期診断と外傷後敗血症を
 減らすことに役立つかもしれない。

by otowelt | 2011-03-28 23:00 | 感染症全般

研修医の労働時間を短縮することが、医療・教育の質を改善させるものではない

アメリカとイギリスで1週間あたりの労働時間上限に
かなり差があるのが気になるが・・・。
”研修医の労働時間←→質”というテーマがスタディになるなんて
昔のドクターは思いもしなかっただろうなぁ・・・。

Impact of reduction in working hours for doctors in training on postgraduate medical education and patients’ outcomes: systematic review
BMJ 2011;342:d1580 doi:10.1136/bmj.d1580


目的:
 医学部の卒後研修を受ける医師の労働時間を短縮することによって
 医学教育・臨床的アウトカムの客観的指標に影響を与えるかどうかを検証する。
 システマティックレビュー。

方法:
 Medline、Embase、ISI Web of Science、Google Scholar、
 ERIC、SIGLEから検索。言語に制限を設けずに
 1990年から2010年12月まで出版された文献で調査をおこなった。
 医学部卒後研修アウトカム、患者の安全性、臨床的なアウトカム
 などの客観的数値が使われ、duty hoursの変化へのインパクトを評価。

結果:
 72研究を検討対象とした。
  38:reporting training outcomes
  31:reporting outcomes in patients
  3:reporting both
 80時間/週を超える労働時間(アメリカ推奨時間)から短縮することよって
 患者安全性へ逆的影響はみられず、卒後訓練への影響は限定的であった。
 ヨーロッパでの56・48時間未満という労働時間制限に関する報告は、
 スタディクオリティが低く、上記と相反する結果がみられているため
 はっきりとした結論を出せなかった。

結論:
 アメリカにおいて、 80時間からの労働時間短縮は、
 患者や卒後訓練へ逆的影響がみられなかった。
 56・48時間制限というイギリスのスタディはスタディクオリティが
 低く、評価できなかった。さらなる研究が必要である。

by otowelt | 2011-03-28 22:28 | その他