2011年 04月 12日 ( 3 )

メモ:合併症を中心としたCTガイド下生検

患者さんに説明する際、手技を直接おこなわない
呼吸器内科医であっても数字をある程度知っておく必要がある。
そのためのメモを書き留めておく。


●CTガイド下生検の概要
気管支鏡的にTBLBができなかった場合、あるいはできないと予想される場合
経皮的肺針生検が検討される。経皮生検は従来X線透視下でおこなわれていたが、
1976年に世界初の報告がなされた。
Precise biopsy localization by computer tomography. Radiology1976;118:603-7.
CTガイド下生検の診断精度は90%近いとされている。
Accuracy of CT guided transthoracic needle biopsy oflung lesions: factors affecting diagnostic yield. Radiol Med2007;112:1142-59.
ただ、これに関しては腫瘍径も関連しており、
径1cm程度未満の病変については有意に正診率が低下するという報告もある
・Diagnostic accuracy and safety of CTguided percutaneous needle aspiration biopsy of the lung. AJR 1996; 167:105-109.
・肺末梢小型陰影に対するCT ガイド下経皮肺針生検の診断に影響する因子の検討. 日呼吸会誌40(2),2002

生検針は、主に18-21Gのsemi-auto 生検針を用いるが、施設によって
多少の差異はある。


●CTガイド下生検の合併症
合併症として、気胸、血胸、空気塞栓、肺胞出血・喀血、胸膜播種、CPA、ショック
などが報告されている。

1.気胸
気胸は最も多い合併症で、報告によって様々である。
2002年のCHESTの論文では、26.6%と報告されている。
そのうち半数がドレナージを要した。針は19Gである。
メモ:合併症を中心としたCTガイド下生検_e0156318_16431270.jpg
The incidence and the risk of pneumothorax and chest tube placement after percutaneous CT-guided lung biopsy: the angle of the needle trajectory is a novel predictor. Chest 2002;121:1521-6.

下記の論文においては、気胸はおよそ15%に起こっている。
この論文における針は20Gである。
CT-Guided Transthoracic Needle Biopsy of Pulmonary Nodules Smaller than 20 mm: Results with an Automated 20-Gauge Coaxial Cutting Needle
Clinical Radiology Volume 55, Issue 4, April 2000, Pages 281-287


日本からの9783例のCTガイド下生検を集めた論文もあるが、
気胸は35%と高率である。124施設から症例を集めたものであり
針の太さはまちまちである。
CT-guided needle biopsy of lung lesions: a survey of severe complication based on 9783 biopsies in Japan. Eur J Radiol 2006;59:60-4.

当然ながらCOPDなどの気腫疾患合併例は、気胸の最たるリスクである。
Transthoracic needle aspiration biopsy: variables that affect risk of pneumothorax. Radiology 1999;212:165-8.
また、病変が胸膜から離れていることもリスクである。
Transthoracic needle biopsy: factors effecting risk of pneumothorax. Eur J Radiol 2003;48:263-7.
標的病変までのリスク距離は報告によって様々であるが、2cmを超える場合には
きわめて注意した方がよいと考えられる。距離が長くなることにより
生検針が病変に到達するプロセスで、末梢細気管支や血管を損傷する
可能性が高くなるため、これが気胸や出血のリスクを高めるのであろう。
Risk of pneumothorax in CT guided transthoracic needle aspiration biopsy of the lung. Radiology 1996;198:371-5.
ちなみに、経験不足は気胸のリスクであるという論文もある。
Risk factors of pneumothorax and bleeding:multivariate analysis of 660 CT guided coaxial cutting needle lung biopsies. Chest 2004;126:748-54.

2.喀血・肺胞出血
喀血の頻度はせいぜい5%くらいであるという報告が多い。
肺胞出血は画像上の所見であるため、それよりも多く20%程度とする
報告が多いように思う。
・CT-Guided Transthoracic Needle Biopsy of Pulmonary Nodules Smaller than 20 mm: Results with an Automated 20-Gauge Coaxial Cutting Needle
Clinical Radiology Volume 55, Issue 4, April 2000, Pages 281-287
・CT-guided needle biopsy of lung lesions: a survey of severe complication based on 9783 biopsies in Japan. Eur J Radiol 2006;59:60-4.


3.播種
悪性病変を生検する場合、播種が問題になるが、予後に関しては
有意差はないと報告されている。
Diagnostic percutaneous Transthoracic needle biopsy does not affect survival in stage I lung cancer. Am J Respir Crit Care Med 2006 ; 174 : 684―688.
頻度は空気塞栓と同じく極めて低いものである。
CT-guided needle biopsy of lung lesions: a survey of severe complication based on 9783 biopsies in Japan. Eur J Radiol 2006;59:60-4.

4.空気塞栓
空気塞栓症の頻度は0.1%未満と極めて低い。ただ、重篤な
合併症であるため、十分な事前説明と速やかな診断治療が重要となる。
・Complications of percutaneous transthoracic needle aspiration biopsy. Acta Radiol Diagn 1976;17:813-28.
・CT-guided needle biopsy of lung lesions: a survey of severe complication based on 9783 biopsies in Japan. Eur J Radiol 2006;59:60-4.

空気塞栓症の発生機序は、胸腔外から肺静脈への空気の流入の経路と
気道系と肺静脈の直接交通の経路の機序が考えられている。
・Air embolism complicating percutaneous needle biopsy of the lung. Chest 1973;63:108-10.
・Fatal systemic arterial air embolism following lung needle aspiration. Radiology 1987;165:351-3.

息止めをおこなった状態での生検は胸腔内圧が上昇するため、
穿刺時に肺血管内に空気が流入して空気塞栓をきたしやすいことが
わかっているため、穿刺時は浅い呼吸で行うべきであるとされている。
また、空気塞栓予防体位については頭低位の報告が多いが、現時点では
確実に予防できるかどうかはエビデンスとしては不足している。
また、空気塞栓症の治療としては高圧酸素療法をおこなうべきとの報告がある。
Cerebral air embolism complicating percutaneous thin-needle biopsy of the lung: Complete neurological recovery after hyperbaric oxygen therapy.J Anesth 2001;15:233-6.
日本高気圧環境医学会の高気圧酸素治療の安全基準を参照にしたい。

by otowelt | 2011-04-12 17:16 | レクチャー

M. pneumoniae感染の4人に1人がマクロライド耐性ジェノタイプを有する

マクロライド耐性M. pneumoniaeに関しては
日本やフランスから5~10%程度であると過去に報告されている。
・Emergence of macrolide-resistant Mycoplasma pneumoniae with a 23S rRNA gene mutation. Antimicrob Agents Chemother 2005; 49:2302.
・Increased macrolide resistance of Mycoplasma pneumoniae in France directly detected in clinical specimens by real-time PCR and melting curve analysis. J Antimicrob Chemother 2009; 64:52.
・Detection of macrolide resistance in Mycoplasma pneumoniae by real-time PCR and high-resolution melt analysis. Antimicrob Agents Chemother 2008; 52:3542.


中国に至っては、67人中46人(69%)がマクロライド耐性と報告されて
いる。このCIDの論文もrRNAの遺伝子変異を検出した論文である。
High prevalence of macrolide resistance in Mycoplasma pneumoniae isolates from adult and adolescent patients with respiratory tract infection in China. Clin Infect Dis 2010; 51:189.

今回のJACの論文は、イタリアからのもので、粗耐性率は26%である。
以下その論文のabstract。

Emergence of macrolide-resistant strains during an outbreak of Mycoplasma pneumoniae infections in children
J. Antimicrob. Chemother. (2011) 66 (4): 734-737


目的:
 Mycoplasma pneumoniae はヒトの下気道感染症(LRTIs)において
 よくみられる病原体であり、治療選択肢としてマクロライドがある。
 このスタディの目的は、イタリアにおいてM. pneumoniaeの耐性頻度
 を調べることである。

患者および方法:
 2010年のイタリアにおけるM. pneumoniaeのアウトブレイクで
 48の臨床的検体が43人の小児患者から採取され、これを解析した。
 耐性に関連する遺伝子変異(A2063G and A2064G)と、M. pneumoniae
 のサブタイプは、23S rRNA遺伝子のV領域をターゲットにしたシークエンスと
 MPN528a遺伝子のシークエンスによってそれぞれ同定した。

結果:
 43人のM. pneumoniae陽性の小児において、
 マクロライド耐性ジェノタイプは11人(26%)に同定された。
 A2063G変異は7人、A2064G変異は4人であった。
 3人の患者は、入院時に感受性であったのにA2063G変異を獲得した。
 M. pneumoniaeサブタイプ1は40のシークエンス株のうち33に、
 サブタイム2は残りの7に認められた。マクロライド耐性か感受性かという
 点に関しては、このサブタイプと相関はなかった。

結論:
 これは、イタリアにおけるM. pneumoniaeのマクロライド耐性の最初の
 報告である。この知見は、小児において説明できない高頻度のマクロライド耐性
 マイコプラズマ肺炎が存在することを示唆し、治療に反応しない場合に
 想定しなければならない事柄である。イタリアだけでなく全ヨーロッパにおいて
 疫学的なマクロライド耐性モニタリングが必要であろう。

by otowelt | 2011-04-12 11:39 | 感染症全般

MACにおいてクラリスロマイシン耐性と23S rRNA変異に相関関係

Abstractしか読めない論文はキライなのだが、少し論文の幅を広げてみる。
マクロライド耐性MACの論文。

Evaluation of a rapid detection method of clarithromycin resistance genes in Mycobacterium avium complex isolates
J Antimicrob Chemother (2011) 66 (4): 722-729.


目的:
 クラリスロマイシンは、Mycobacterium avium complex (MAC)
 においてカギとなる薬剤であり、この感受性は臨床的な反応と相関している。
 23S rRNAの2058あるいは2059のpoint mutationが
 クラリスロマイシン耐性株において高レベルで認められるとされている。
 このスタディにおいて、薬剤感受性テストと23S rRAN遺伝子の変異
 との関連性を調べた。さらに、われわれは23S rRNA変異を同定するため、
 ARMS(Amplification Refractory Mutation System)-PCR法を用いた
 早期同定を今回適用した。

方法:
 NCCLS/CLSI推奨に基づき、微量希釈法を使用し
 クラリスロマイシンのMICを245のMAC株で同定した。
 これらのうち219がクラリスロマイシン感受性で、
 26がクラリスロマイシン耐性であった。また、
 23S rRNA遺伝子のシークエンスとARMS-PCRを実施した。

結果:
 薬剤感受性テストにおいて、MICは感受性と耐性において
 二峰性の分布をとった。23S rRNAのシークエンス解析により 
 クラリスロマイシン感受性株は野生型で、一方クラリスロマイシン耐性24株は
 変異型であった。シークエンスとARMS-PCRの感度はそれぞれ92.3%、84.6%
 であった。特異度はいずれも100%であった。

結論:
 われわれは、クラリスロマイシンのMICと23S rRNA遺伝子変異との間に
 相関を見出した。MACにおいて23S rRNA遺伝子変異に対するARMS-PCRを
 用いることは、クラリスロマイシン耐性の迅速的な判断に有用である。
 

by otowelt | 2011-04-12 06:10 | 抗酸菌感染症