2011年 05月 23日 ( 2 )

進行胸腺腫・胸腺癌におけるカルボプラチン+パクリタキセルは、効果が乏しい

呼吸器内科医としては、シスプラチン+エトポシドが
使い慣れたレジメンである胸腺癌であるが…。
なにせ症例が少ないため、知識の積み重ねは机上となってしまう。
サンドスタチンによる治療が少し話題を呼んだのは記憶に新しい。

Masaoka分類をメモしておく。
Stage I :
 intact thymic capsule 5年生存率94-100%
Stage II :
 capsular invasion into adjacent mediastinal fat or pleura 5年生存率86-95%
Stage III :
 mascroscopic invasion into adjacent organs, vessels 5年生存率56-60%
Stage IV :5年生存率11-50%
 IV a : dissemination in thoracic cavity (ex: pleural or pericardial implants)
 IV b : distant metastases



JCOから進行胸腺腫および胸腺癌の化学療法のphase II試験の報告。

Phase II Study of Carboplatin and Paclitaxel in Advanced Thymoma and Thymic Carcinoma
JCO May 20, 2011 vol. 29 no. 15 2060-2065


目的:
 このスタディの目的は、カルボプラチン+パクリタキセルを
 進行期の既治療胸腺腫および胸腺癌患者に対するインパクトを
 評価するものである。

患者および方法:
 われわれは、プロスペクティブ多施設共同試験を切除不能胸腺腫(n=21)
 あるいは胸腺癌(n=23)において実施した。患者はカルボプラチン(AUC6)
 とパクリタキセル(225 mg/m2)を3週ごとに最大6サイクル施行する
 レジメンを受けた。プライマリエンドポイントは客観的奏効率(ORR)。

結果:
 2001年2月から2008年1月まで、合計46人の患者が登録された。
 13人の患者がGrade4かそれ以上の毒性を呈した(ほとんど好中球減少)。
 胸腺腫においてRECIST判定(version 1.0)において、CRが3人、PRが6人。
 すなわち、ORRは42.9%; 90% CI, 24.5% to 62.8%。
 胸腺癌ではCRはおらず、PRは5人でORR, 21.7%; 90% CI, 9.0%to 40.4%。
 PFSは胸腺腫で16.7ヶ月(95% CI, 7.2 to 19.8)、胸腺癌で5.0ヶ月
  (95% CI, 3.0 to 8.3)であった。期間中
 胸腺腫の7人の患者(33.3%)、胸腺癌の16人の患者(69.6%)が死亡した。
 生存期間中央値は胸腺癌で20.0ヶ月(95% CI, 5.0 to 43.6months)で
 あったが、胸腺腫は解析に達しなかった。
進行胸腺腫・胸腺癌におけるカルボプラチン+パクリタキセルは、効果が乏しい_e0156318_1858682.jpg
結論:
 カルボプラチン+パクリタキセルは、胸腺悪性腫瘍において
 臨床的にやや活性がみられるものの、アントラサイクリン系薬剤による治療
 で予測していたよりも効果は乏しかった。胸腺癌患者は胸腺腫と比較して
 PFSおよびOSの予後は不良である。

by otowelt | 2011-05-23 16:06 | 肺癌・その他腫瘍

肺腺癌においてBRAF変異は3%、喫煙例に多く、G469A、D594Gは比較的特異性が高い

肺腺癌においてBRAF変異は3%、喫煙例に多く、G469A、D594Gは比較的特異性が高い_e0156318_18243049.jpg
肺腺癌においてALKが脚光を浴びたが、
JCOからBRAFに焦点を当てた論文が出ていた。
BRAFは肺腺癌の約3%に変異がみられるとされていた。
BRAFand RAS Mutations in human lung cancer and melanoma.Cancer Res 62:6997-7000, 2002

2002年、悪性黒色腫の約半数にBRAF遺伝子を活性化する
V600E変異が存在していることが発見された。
sorafenib(非特異的BRAF阻害薬)は、悪性黒色腫において試験されたが
期待された結果は得られなかった。皮膚科領域においては、
vemurafenibが有望なBRAF阻害薬として注目されている。
ちなみにV600E変異は肺癌と悪性黒色腫のいずれでも観察されるが
G469A(G→C transversion)とD594Gは肺癌に特異度が高い、という
記載が本論文に記載されていた。

Clinical Characteristics of Patients With Lung Adenocarcinomas Harboring BRAF Mutations
JCO May 20, 2011 vol. 29 no. 15 2046-2051


背景:
 BRAF遺伝子変異は非小細胞癌に起こる。治療的標的としての
 BRAF遺伝子変異は近年同定された。われわれは、BRAF遺伝子変異を
 もつ肺腺癌患者の臨床的特徴を同定するためこのスタディをおこなった。

患者および方法:
 われわれは、BRAF、EGFR、KRAS遺伝子変異およびALK再構成
 の同定をおこなった肺腺癌の連続症例のデータをレビューした。
 患者の臨床的性格として、年齢、性別、人種、PS、喫煙歴、
 病期、治療歴、全生存期間が抽出された。

結果:
 697人の肺腺癌患者において、BRAF変異は18人(3%;95%CI, 2%-4%)
 にみられた。同定されたBRAF変異はV600E (50%), G469A (39%),
 D594G(11%)であった。24%がEGFRに遺伝子変異がみられ、KRASは
 25%、ALKは6%にみられた。非喫煙者であることが多い
 EGFR変異およびALK再構成の患者と比較すると、BRAF変異がみられた患者は
 現ないし既喫煙者が多かった(P<.001)。
 進行期患者でBRAF変異がみられた患者のOS中央値は、他の変異と比較して
 有意な差がみられなかった。BRAFとその他の変異は相互排他的であった。
肺腺癌においてBRAF変異は3%、喫煙例に多く、G469A、D594Gは比較的特異性が高い_e0156318_18233949.jpg
結論:
 BRAF遺伝子変異は3%の肺腺癌患者にみられ、現ないしは既喫煙者に
 よくみられるものである。V600E以外のBRAF遺伝子変異は
 悪性黒色腫よりも肺癌に有意に多くみられる。

by otowelt | 2011-05-23 15:40 | 肺癌・その他腫瘍