2011年 10月 04日 ( 4 )

ERS2011:イマチニブはPAH患者の運動耐容能を有意に改善

ERSで話題をよんだ内容。

Hoeper M, et al. Imatinib in pulmonary arterial hypertension, a randomized, efficacy study (IMPRES). Data presented at the European Respiratory Society (ERS) Annual Congress. Abstract No. 413. Presented 25th September 2011, 12.15, Room D203 - 204.

背景:
 原発性肺高血圧症(PAH)は、心臓と肺に影響をもたらす
 世界的には26万人が罹患しており、
 心不全によって死亡する難治性の疾患である。
 イマチニブはチロシンキナーゼに対する分子標的薬であり、
 慢性骨髄性白血病、KIT(CD117)陽性消化管間質腫瘍、
 フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病などに用いられている。
 IMPRES試験は多施設による24週間の観察期間での
 ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験である。
 
方法:
 PAH治療薬(エンドセリン受容体拮抗薬、ホスホジエステラーゼ5阻害薬
 および/またはプロスタサイクリン製剤)の2剤以上を使用しているPAH患者で
 肺血管抵抗の上昇が認められる202人を対象に経口イマチニブの追加投与
 することで、有効性と安全性を評価する。
 イマチニブ1日1回200mgの投与から開始し、忍容性が良好な場合
 2週間後に1日1回400mgに増量する。また、逆に忍容性が不良な場合
 1日1回200mgに減少することも可とする。
 
結果:
 プライマリエンドポイントである24週間後の6分間歩行距離(6MWD)が、
 イマチニブ群ではプラセボに比べて平均31.8m増加(P=0.002)。
 セカンダリエンドポイントである、PAHによる入院・死亡、機能悪化、
 6MWDの15%低下までの期間についてはプラセボとの有意差はなかった
 (P=0.563)。しかしながら、肺動脈圧、心拍出量および肺血管抵抗は
 有意に改善した(all for P<0.001)。
 有害事象の発生率に関しては、統計学的には両群で同等だったが
 イマチニブにやや多い傾向がみられた。

結論:
 既治療PAHにおいてイマチニブは運動耐容能を改善する。

by otowelt | 2011-10-04 17:02 | 呼吸器その他

オンブレス発売から2週間

当院ではまだ使用していないが、
外来でCOPDに対してオンブレスを使用している患者が現れ始めた。
そろそろ発売2週間目あたりだろうか。

ご存知と思うが、オンブレスは新しいLABAである。
(インダカテロールマレイン酸塩(オンブレス吸入用カプセル150μg))

薬理学的な分類としては、サルメテロール吸入製剤(セレベント)と同様だが
サルメテロールが1日2回吸入が基本となるのに対して、
インダカテロールでは1日1回投与が可能な点が特徴である。
ブリーズヘラーという新しい言葉も出てきて、呼吸器内科医としては
”なんとかヘラー”という言葉を覚えるのに四苦八苦の毎日である。

臨床試験として知っておきたいのは以下のものである。

Donohue JF et al. Once-daily bronchodilators for chronic obstructive pulmonary disease: Indacaterol versus tiotropium. Am J Respir Crit Care Med. 2010; 182: 155-162

 インダカテロール150 or 300 μg、プラセボ、チオトロピウム18 μg
 をそれぞれ1日1回26週間続けた。
 1683人の患者が登録され、12週目のトラフFEV1はプラセボと比較して
 インダカテロールで両用量とも180 mL、チオトロピウムは140 mLの改善
 (all P<0.001 vs placebo)。症状やQOLの指標として、
 transition dyspnea index (TDI)も改善(1.00/1.18, P<0.001)し、
 SGRQ total scoreも減少(-3.3/-2.4, P<0.01)。

by otowelt | 2011-10-04 09:52 | 気管支喘息・COPD

チョコレートをたくさん食べると心血管代謝障害リスクを減少させる

RR 0.63って、現在流通している心血管系の薬剤を
はるかに上回る効果だが、チョコレートってそんなすごいのか?(笑)

最低消費量はどのスタディもおおむね"none"だが
最大消費量はどのくらいかというと、具体的なスタディでは
毎日1杯以上のココア、チョコレート1日7.5g以上といったものがある。

チョコレートによる抗酸化作用と抗炎症性が
このリスク軽減につながっていると考察されているが、
この論文を読んだ後でも、市販のチョコレートを食べれば食べるほど
肥満や糖尿病、結果的な心疾患リスクが増大するのは
医学的に当たり前だと思っている。

Adriana Buitrago-Lopez, et al.
Chocolate consumption and cardiometabolic disorders: systematic review and meta-analysis
BMJ 2011;343:d4488 doi: 10.1136/bmj.d4488


目的:
 チョコレート消費量と心血管代謝障害のリスクとの関連性を評価する。

データ:
 Medline, Embase, Cochrane Library, PubMed, CINAHL, IPA,
 Web of Science, Scopus, Pascalなど

方法:
 18歳以上の成人に対して行われたチョコレートの消費と心血管代謝障害
 との関連についての研究を対象にして、メタアナリシスを施行。
 それぞれにチョコレート消費量が異なるカテゴリーになっているため
 最低消費量と最大消費量を比較するようにした。
 
結果:  
 最終的にメタアナリシス対象となったのは、4576参照文献中、
 7論文であった。ランダム化試験はゼロで、コホート研究6,横断的研究1。
 登録患者は114009人だった。
 チョコレートの消費は、チョコレートバー、チョコレート飲料、
 チョコレート菓子(ビスケットなど)などが含まれた。
 7論文中、5つではチョコレート消費量と心血管代謝障害のリスク低下と
 関連づけたものであった。各研究でチョコレートの消費量が最も多い群は
 最も少ない群に比べて37%のリスク低下と関連していた
 (RR0.63 (95%CI 0.44 to 0.90))。また、脳卒中29%リスク低下とも関連。
 Funnel plotにより有意な出版バイアスは確認されなかった。
チョコレートをたくさん食べると心血管代謝障害リスクを減少させる_e0156318_914247.jpg
結論:
 チョコレートの消費量がより多いほど、心血管代謝に関連する疾患リスクが
 有意に減る。さらなる研究が必要とされる。

by otowelt | 2011-10-04 09:30 | 内科一般

ASVはPSVに比べてCOPD患者のウィーニング期間を短縮させる

『SASという言葉を使っているのは日本人の医師だけだ』という
本を最近読み、意識的に閉塞性睡眠時無呼吸に対しては
OSAという言葉を用いるようにしている。
OSAや心不全のときに有用とされているASVについての論文。

ちょうどASVを使用している患者さんがおられたので
個人的にはASVを再勉強するいい機会になった。

ASVは設定した最大IPAPから最小IPAPの範囲で自動的に調節し
その時に見合ったPS圧(IPAP-EPAP)をもたらすことで
無呼吸時に最大PS圧、過呼吸時には低いPS圧を実現できる
モードのことで、最近流行っている。

C. Kirakli, et al.
Adaptive support ventilation for faster weaning in COPD: a randomised controlled trial
Eur Respir J 2011; 38: 774–780


背景:
 Adaptive support ventilation (適応補助換気:ASV)は、
 pressure support ventilation (PSV)と
 pressure-controlled ventilationの両方が可能な呼吸モードである。
 ASVによるウィーニングは、心臓術後患者において
 良好な結果が得られている。このランダム化比較試験では、
 ASVによるウィーニングがPSVと比較してCOPD患者において
 ウィーニング期間を減らすことができるかどうか検証したものである。

方法:
 20ヶ月の間に435人COPD患者でICUに入室したもののうち
 97人を登録した。患者はASVかPSVにランダムに割り付けられた。

結果:
 PSVに比べて、ASVはウィーニング期間を減少させ
 (中央値24 (IQR 20–62) h v 72 (24–144) h, p=0.041)、
 ウィーニング成功率は同等であった(35 out of 49 for ASV
 and 33 out of 48 for PSV)。ICU在室日数もASVの方が短かったが
 統計学的に有意ではなかった。
ASVはPSVに比べてCOPD患者のウィーニング期間を短縮させる_e0156318_8474428.jpg
結論:
 このスタディによれば、ASVはCOPD患者のウィーニング期間の短さにおいて
 有益性がある。異なった患者層において、ASVのウィーニングのさらなる研究
 が望まれる。

by otowelt | 2011-10-04 05:27 | 集中治療