2012年 05月 24日 ( 8 )

ATS 2012:閉塞性睡眠時無呼吸は癌死亡リスクを上昇させる

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ウィスコンシン大学からの報告。OSAと癌死亡リスクについて論じた報告は、斬新だ。

F.J. Nieto, et al.
Obstructive Sleep Apnea And Cancer Mortality: Results From The Wisconsin Sleep Cohort Study
ATS 2012, Session A18, May 20, Abstract 30627


背景:
 悪性黒色腫マウスモデルを用いた近年のスタディにおいて、間欠的な低酸素が腫瘍を成長させることが示されている。閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は総死亡、循環器疾患による死亡の増加と関連しているものの、OSAと癌の頻度と死亡については試験されていない。このスタディの目的は、OSAが癌死亡リスクの増加と関連しているという仮説を検証するものである。

方法:
 われわれは、20年の間の死亡についてWisconsin Sleep Cohort sample (n=1522)を用いてデータ追跡した。OSAは、参加者全員に対して完全ポリソムノグラフィーを用いて懐石されている。AHIについては5未満を正常とし、mild OSA (AHI 5-14.9); moderate OSA (AHI 15-29.9); severe OSA (AHI >30 or use of CPAPと定義した。Kaplan-Meier解析により死亡の比較をおこない、Cox比例ハザード回帰がOSA重症度による総死亡、癌死亡における相対ハザードを算出するために用いられた。

結果:
 Kaplan-Meier解析とCox回帰分析(年齢、性別、BMI、喫煙歴で調整)によると、総死亡、癌死亡はOSAの重症度と関連していた。CPAP治療をおこなっていた患者(n = 126)を除外したあとも、この関連性については有意にみられていた。OSAがない患者と比較すると、補正ハザード比はmild OSA, moderate OSA, severe OSAでそれぞれ1.1, 2.0, 4.8であった。

結論:
 このスタディによれば、OSAは癌死亡リスクを上昇させる。間欠的低酸素が悪性腫瘍を成長させるという過程を示唆するものである。

by otowelt | 2012-05-24 21:27 | 呼吸器その他

ATS 2012:肺容積減量コイルの効果と安全性の検証

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有害事象が多すぎる気がするのだが、これは分母が101なのか53なのか気になるところである。実際の発表を聞かないとわからないが、やむをえない。

D.-J. Slebos, et al.
Lung Volume Reduction Coil Treatment For Patients With Severe Heterogeneous Emphysema, A Multicenter Feasibility Trial
ATS 2012,Session D15, May 23, Abstract 27924


背景:
 肺容積減量コイル:Lung Volume Reduction Coil (LVRC)は、気腫を治療するためのニチノール製のワイヤーを使用した自己拡張型気管支鏡デバイスである。重度の上葉の気腫に対する過去の単施設パイロット試験では、安全性と効果が確認された。このスタディにおいては、多施設における重度の気腫に対するLVRCの安全性と効果についてコホート試験をデザインした。

方法:
 53人の患者(29F/24M, 61.5yrs (±7.2))が登録された。臨床的特徴は、一秒量30.2%pred (±6.7%), 残気量243%pred (±52%), 残気量/全肺容積 66.2 (±9.5), SGRQ 62.3 (±12.6)であり、気管支鏡下においてLVRC(PneumRx, USA)を片側あるいは両側の肺に施行した。安全性はすべての有害事象を検証することで、効果については質問票、呼吸機能検査、運動試験を治療後6ヶ月目に施行した。

結果:
 101のLVRCがおこなわれた(46:両側, 9:片側)。40人の患者が上葉に治療され、13人が下葉に治療された。合計1070のコイルが設置され、中央値では1施行あたり10コイル(range 8-14)であった。30日未満の有害事象は、COPD急性増悪(n=11), 肺炎(n=8), 気胸(n=3), 胸痛(n=9),微小血痰(n=23)であった。30日~6ヶ月の有害事象としては、COPD急性増悪(n=21)、肺炎(n=11)、気胸(n=3), 胸痛(n=3), 微小血痰(n=1)がみられた。LVR-コイル治療6ヶ月時において、ΔFEV1 +13% (±4.9%), ΔRV -0.44L (±0.16), Δ6MWD +35m (±12) 、ΔSGRQ -10 points (±2.3)という結果が得られた。ベースラインにおけるRV%predは、有意に治療後のRVと関連していた(r2=0.453, p<0.0001)。ベースラインにおいてカットオフポイントとしてRV>220%predを使用すると、6ヶ月時結果はΔFEV1 +19% (±6.8%), ΔRV -0.57L (±0.21), Δ6MWD +42m (±14),ΔSGRQ -14 points (±3.1)であった。

結論:
 LVRCにおける気腫治療は有意に呼吸機能や運動耐容能、QOLを向上させる。ベースラインにおける高い残気量は、良好なアウトカムと相関する。

by otowelt | 2012-05-24 20:31 | 気管支喘息・COPD

ATS 2012:吸入ステロイド使用患者では肺炎随伴性胸水の合併は少ない

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J. Sellares, et al.
Influence Of Long-Term Use Of Inhaled Corticoids On The Development Of Pleural Effusion In Community Acquired Pneumonia
ATS 2012、Session D14, May 23, Abstract 30951


背景:
 COPD患者に対する長期間の吸入ステロイド使用は市中肺炎のリスクを高くし、肺炎死亡率を上昇させると考えられている。胸腔内感染症はよくみられる市中肺炎の合併症であり、これも死亡率を上昇させると考えられる。このスタディの目的は、長期間の吸入ステロイド治療が肺炎随伴性胸水の頻度と重症度をと関連するかどうか検証するものである。

方法:
 われわれは単施設におけるコホート試験において3602人の連続した市中肺炎患者を登録した。われわれは、臨床的、放射線学的、胸水生化学検査、微生物学的検査を解析した。胸水は、ACCPガイドラインに基づいて分類をおこなった。患者は吸入ステロイドを用いていたかどうか調べ、使用の有無に分けて解析をおこなった。

結果:
 659人(18%)が市中肺炎の診断の前に吸入ステロイドを使用していた(COPD: 56%、気管支喘息: 13%, 気管支拡張症: 6%, その他: 25%)。吸入ステロイドによる前治療は有意に肺炎随伴性胸水の頻度と逆相関していた(5% vs. 12%, p<0.001)。年齢、性別、合併症、市中肺炎の重症度を補正した多変量解析においても、吸入ステロイドの前治療と胸水は逆相関[OR 0.42 (95% CI, 0.28-0.64, p<0.001)]。吸入ステロイドはACCPカテゴリー1の胸水貯留と有意に関連(<10mm)(53% vs 30%, p=0.008 )しており、カテゴリー4とは関連性が低かった(empyiema)(3% vs 16%, p=0.05)。また、吸入ステロイド治療は胸水中の高血糖、低蛋白、低LDHと関連していた。肺炎30日死亡率については吸入ステロイドと差はみられなかった。

結論:
 吸入ステロイド使用患者における市中肺炎では肺炎随伴性胸水の頻度が減少する。

by otowelt | 2012-05-24 17:57 | 感染症全般

ATS 2012:ICU入室前のSSRI・SNRIは院内死亡リスクを上昇

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Katherine. M. Berg, et al.
Pre-Admission Use Of Selective Serotonin Reuptake Inhibitors Is Associated With ICU Mortality
ATS 2012, Session C24, May 22, Abstract 31998


方法:
 電子カルテを用いて10568人の患者におけるICU入室後の院内死亡をみたレトロスペクティブ試験をおこなった。

結果:
 10568人の患者が登録され、1876人がSSRIあるいはSNRIをICU入室前に使用していた。これらの薬剤を使用していない患者と比較をおこなった。年齢、性別、ICD-9診断、疾患重症度、合併症によって補正をおこなったところ、ICU入室前にSSRI、SNRIを使用していた患者の院内死亡が有意に高かった(p<0.001)。このリスク増加は1年後まで遷延していた。
 患者グループのうち、リスクがもっとも高かったのはACSの患者と心臓外科手術患者であった。これらの患者において、SSRI・SNRI使用群での院内死亡リスクは実に2倍であった(OR 2.41; p<.0020 and 2.08; p<0.001, respectively)。

結論:
 ICU入室前のSSRI・SNRIの使用は院内死亡のリスクであり、心疾患患者において顕著である。

by otowelt | 2012-05-24 17:43 | 集中治療

ATS2012:OSASの重症度が高いほど2型糖尿病であるリスクが高い

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Brian Kent, et al.
Severity Of Sleep Disordered Breathing Is An Independent Predictor Of Glycemic Health: The European Sleep Cohort (ESADA) Study
ATS 2012, Session D18, May 23, Abstract 27667.


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSAS)は、心血管代謝疾患の悪化と強い関連がある。しかしながら、OSASにおける研究は、肥満が最も大きな交絡因子であり、代謝疾患における独立因子としてOSASの役割は不明と考えられている。

方法:
 この研究は、OSASの重症度と2型糖尿病との関連、非糖尿病患者のHbA1cとの関連を検証したものである。ヨーロッパ睡眠関連施設22施設の患者7886人を解析。患者は、ポリソムノグラフィーによる夜間睡眠分析を行い、血液検査を施行した。

結果:
 患者の72.3%が男性であり、11.7%が2型糖尿病、43.1%が高血圧、17.5%が脂質異常症を合併していた。AHI中央値は25.9、BMI中央値は31.2であった。AHI scoreによるカテゴリーを4つに分類した。その場合、OSASの重症度が高いほど、男性率や糖尿病罹患率が高くなり、心血管リスク因子を持つ割合が有意に高くなった。多変量ロジスティック回帰分析を行うと、OSASの重症度が高いほど2型糖尿病であるリスクが高くなった。OSASでない患者カテゴリーと比較した場合、調整オッズ比は軽度のOSASが1.21、中等度OSASが1.39、重症のOSASでは1.56であった。
 糖尿病患者ではない患者におけるHbA1cとの関連因子を多変量解析すると、夜間の低酸素血症とOSASの重症度に関連がみられた。HbA1c値はOSAS重症度と比例して高くなった(p<0.001)。HbA1cが≥6%のとき、軽症OSASに対して重症OSASの調整オッズ比は2.62だった。

結論:
 OSASの重症度が高いほど2型糖尿病であるリスクが高い。

by otowelt | 2012-05-24 17:24 | 呼吸器その他

ATS2012:重症喘息における反復する増悪のリスク因子

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M. Kupczyk, et al.
Identification Of Risk Factors For Frequent Exacerbations In Severe Asthma
ATS 2012, Session A92, May 20, Abstract 31646


背景および方法:
 何度も増悪する喘息患者(増悪頻度が年間2回または3回以上と定義)の患者特徴とリスク因子を検証するため、ヨーロッパにおける重症喘息患者93人と軽症~中等症の喘息患者76人の計169人を1年間フォローアップした。複数回における肺機能(ピークフロー、FEV1)と日中および夜間の喘息症状、ADL、SABA使用頻度を記録。少なくとも3ヶ月ごとに計測した。
 重症喘息(severe asthma)は、高用量吸入ステロイド薬を投与されておりなおかつ専門医による治療を受けている状態で、試験参加前の1年間で少なくとも1回の喘息発作の増悪エピソードを経験しているものと定義された。

結果:
 重症の喘息患者は軽症~中等症の患者と比較して、平均年齢が高く(50.0 vs 42.2)、BMIが高かった(28.5 vs 25.0)。また、QOL(SGRQ 45.9 vs 22.5)とFEV1(予測値)(70.4% vs 88.7%)がより悪い数値であり、CRP(6.1 mg/L vs 3.5 mg/L)と喀痰好酸球(16.7% vs 5.79%)についても重症喘息の方が高値を示した。
 フォローアップ期間中に発生した増悪は、重症患者の55.9%(52人、104イベント)、軽症~中等症患者の22.2%(16人、18イベント)。平均増悪率は、重症患者において1.1イベント/患者・年、軽症~中等症の患者で0.2イベント/患者・年であった。また、何度も増悪を繰り返す患者では、増悪頻度が低い患者と比べ、吸入ステロイド量(μg)が多く、Juniper-ACQ scoreも悪かった。CRPと喀痰好酸球も有意に高かった(p<0.05、p<0.05、respectively)。

結論:
 喘息の増悪の頻度に関連するリスク因子は、喀痰中好酸球、喘息コントロール、QOL、喫煙、FEV1≤70%であった。

by otowelt | 2012-05-24 17:24 | 気管支喘息・COPD

ATS2012:COPD患者における喀痰中の緑膿菌陽性は予後不良因子の可能性

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これはさすがに登録患者数が少なすぎるか。

M.O. Jamil, et al.
Acquistion Of Pseudomonas Aeruginosa Is Associated With Adverse Clinical Outcomes In COPD
Session D105, May 23, Abstract 27711


背景:
 緑膿菌はCOPD患者の喀痰の4-15%で検出される。このクロスセクショナルスタディにおいて、緑膿菌の分離がCOPD重症度と相関するかどうか検証したものである。

方法:
 われわれはプロスペクティブ試験において177人のCOPD患者を登録した(Buffalo Veterans Affairs Medical Center、Mar 1994 to Jan 2011)。患者は1ヶ月に一度クリニックを受診し、喀痰サンプルを採取された。6ヶ月未満のフォローしかできなかった患者は除外した。われわれは、少なくとも1度でも緑膿菌が検出された患者を”陽性”とカテゴリーした。緑膿菌獲得前の時点をphase 1、獲得後をphase 2とした。入院、ICU入室、COPD急性増悪などのイベントの頻度を検証した。

結果:
 55人の患者が緑膿菌陽性であった。陰性患者を同等の数マッチさせた。2群間において年齢、性別、喫煙歴、一秒率(予測)に差はみられなかった。緑膿菌陽性患者はphase2において入院頻度が上昇した。phase1-2の間において、少なくとも1度の院内イベント(入院、ICU入室、COPD急性増悪)の頻度に有意差はみられなかった。 

結論:
 COPD患者において、緑膿菌が陽性となった後にmorbidityは上昇した。これは緑膿菌が予後不良の予測因子となりうることを示唆するものである。

by otowelt | 2012-05-24 15:05 | 感染症全般

ARDSの定義が変更(ベルリン定義)

思ったより論文化が遅かった。2011年ESICMで発表され話題になり、JAMAに掲載される予定だった。無料でダウンロードできるので、是非読んでいただきたい。

Acute Respiratory Distress SyndromeThe Berlin Definition
The ARDS Definition Task Force
JAMA. 2012 doi:10.1001/jama.2012.5669


 ARDS(急性呼吸窮迫症候群)は、1994年にAECC(American-European Consensus Conference )において定義され、長らく使用されてきた。しかしながら改善すべき点や問題点がいくつかあり、改訂が望まれていた。具体的には急性の定義や、P/F ratioとPEEPの合致性のなさなどが挙げられる。
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 Berlin Definitionは以下の如くである。今までのALI(急性肺障害;P/F 200-300)という概念がなくなり、mild, moderate, severeという重症度分類がなされた。
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 軽症、中等症、重症ARDSは死亡率増加と相関しており(27%; 95% CI, 24%-30%; 32%; 95% CI, 29%-34%; and 45%; 95% CI, 42%-48%, respectively; P < .001)、人工呼吸器装着中央期間とも相関していた(5 days; IQR, 2-11; 7 days; IQR, 4-14; and 9 days; IQR, 5-17, respectively; P < .001)。このBerlin Definitionは、ARDSにおける死亡率の信頼性が高く予後予測にも妥当性がある(ROC下面積0.577 [95% CI, 0.561-0.593] vs 0.536 [95% CI, 0.520-0.553; P < .001])。

by otowelt | 2012-05-24 06:53 | 集中治療