2012年 05月 26日 ( 3 )

COPDの呼吸困難に対して鍼治療が有効

 先週からかなり議論を呼んでいるが、サンフランシスコのATSの速報ばかり気になって読めていなかった論文。メジャー医学雑誌であるArch Intern Medに掲載された。もっと大規模であれば説得力があるのだが、なぜ68人しか登録できなかったのだろうか。
 科学者の目でこの論文を読むと、鍼の医学的メカニズムについての記載が不足していると思うが、非常に興味深い。

Masao Suzuki, et al.
A Randomized, Placebo-Controlled Trial of Acupuncture in Patients With Chronic Obstructive Pulmonary Disease (COPD)The COPD-Acupuncture Trial (CAT)
Arch Intern Med. 2012;online first:1-9. doi:10.1001/archinternmed.2012.1233


背景:
 労作時呼吸困難(DOE)は、COPDにおける主症状であり、コントロールは難しい。このスタディは標準治療を受けているCOPD患者に対して鍼治療がプラセボに上回るかどうか検証したものである。

方法:
 2006年7月1日から2009年3月31日までの間、68人の関西COPD患者が標準治療に鍼治療を加える群(鍼治療群)と標準治療にプラセボ(偽鍼)鍼治療を加える群にランダムに割り付けられた(それぞれ34人ずつ)。1週間に1度の鍼治療を受けるように両群とも設定され、12週間継続された。プライマリエンドポイントは、6分間歩行試験後の改訂Borgスケールである。
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 偽鍼は、実際には背中の皮膚を通したあと鍼をtelescopedしたものである(いわゆる浅い鍼で非経穴部への鍼ではない)。また、治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っている。

結果:
 12週間後、6分間歩行試験後のBorgスケールは有意に鍼治療群において改善がみられた(mean [SD] difference from baseline by analysis of covariance, −3.6 [1.9] vs 0.4 [1.2]; mean difference between groups by analysis of covariance, −3.58; 95% CI, −4.27 to −2.90)。COPD患者で鍼治療を受けた患者は6分間歩行距離の改善も確認された。
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 QOLについては、SGRQが鍼治療群で-16U減少(Jonesらの4pointsを上回るCOPD.2005;2(1):75-79.)。
 BMIと血清プレアルブミンが測定されたが、12週間の鍼治療期間後では、BMIとプレアルブミンはともにプラセボ群と比較して鍼治療群では有意に改善が確認された。呼吸機能検査においても差がみられた。

呼吸困難を軽減させるメカニズム:
 COPDにおける労作時の呼吸困難は筋疲労などが関与しているが、潜在的に虚血性が関与している可能性がある。Kawakitaらは、鍼治療が筋肉の電気的活性を抑制することを報告しており(Kawakita K, et al.Experimental model of trigger points using eccentric exercise. J Musculoskeletal Pain. 2008;16:29-35.)、筋緊張度を軽減することが今回の結果につながった可能性がある。

limitatsion:
 ・試験期間が短い。アウトカムを評価するには早い可能性がある。
 ・すでに治療を受けているCOPD患者を対象にしたことから、鍼治療のみによる改善効果とは言い切れない。
 ・治療者が本当の意味でmaskされていたのかどうか、確実性はない(治療者が本物の鍼かプラセボの鍼かが分かった上で治療を行っているため)。

結論:
 このスタディにより、COPD患者における呼吸困難感の改善に針治療が有用であることが示された。

by otowelt | 2012-05-26 09:53 | 気管支喘息・COPD

ATS 2012:顕微鏡的多発血管炎の肺合併症として気管支拡張症が多いかもしれない

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気になるポスターから。

H. Tashiro, et al
An Analysis Of Pulmonary Manifestations In 45 Patients With Microscopic Polyangitis
ATS 2012, poster session


背景:
 顕微鏡的多発血管炎 (MPA)は、まれな全身性疾患である。間質性肺炎やびまん性肺胞出血などは頻度の高い肺合併症である。われわれは、MPAの肺合併症の予後への影響を明らかにするためレトロスペクティブ試験をおこなった。

方法:
 佐賀大学病院に2004年から2011年に入院したMPA患者の診療録をレトロスペクティブに検索した。

結果:
 MPA45人のうち、19人が男性、26人が女性だった。年齢中央値は69.8歳であった。HRCTで最もよくみられた所見は、interstitial pneumonia [IP]が20人, びまん性肺胞出血が4人,気管支拡張症が8人、炎症性瘢痕が3人であった。10人は肺合併症が同定できなかった。45人中42人がステロイド、シクロホスファミド、シクロスポリンAを含む免疫抑制剤を投与されていた。12人(26.7%)が死亡したが、IPやびまん性肺胞出血による呼吸不全で3人が死亡、感染症で2人が死亡。7人がMPA以外の疾患で死亡した。

結論:
 過去に報告したように(Takahashi et. al. Lung 2005)、気管支拡張症はMPAの主たる肺合併症である。MPAのアウトカムは過去の報告よりも良好であり、診断治療の改善に起因しているかもしれない。IPやびまん性肺胞出血は重要な治療戦略であると示唆される。

by otowelt | 2012-05-26 08:55 | びまん性肺疾患

ATS 2012:BAEに関する患者特性

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ポスターで興味深かったもの。

A. Adlakha, et al.
Long-Term Outcome Of Bronchial Artery Embolisation (BAE) For Massive Haemoptysis
ATS 2012, poster sesssion


背景:
 多量の血痰に対する気管支動脈塞栓術(BAE)は、短期~中期的には低い失敗率で潜在的に生命予後を良くするものである。われわれは、BAEを要した患者特性を調べ、長期的な治療成功と再BAEを要するリスクなどを調べた。

方法:
 レトロスペクティブに1994年から2007年にBAEを施行された全ての患者を同定した。アウトカムは総死亡率、再BAEを要する血痰とした。

 
結果:
 158人が208のBAEを受けた。85人(54%)が男性であり年齢中央値は54歳(IQR: 41-67)であった。もっともよくみられた基礎疾患はアスペルギローマであり(n=38; 24% of patients)、以下、気管支拡張症(n=24; 15%), 同定できなかった疾患(n=17; 11%)、慢性結核(n=14; 9%), 活動性結核(n=12; 8%) 、嚢胞性線維症(n=11; 7%)と続いた。1ヶ月および3年時の総死亡は5.3%、29.7%であり、再BAEを要したのは4.7%、30.7%であった。3年時の再BAEの原因は、50%がアスペルギローマであり活動性結核は0%であった。3年死亡率は嚢胞性線維症において最も高く(40%)、同定できなかった疾患で最も低かった(7.7%)。塞栓血管数や血管部位によって死亡や再BAEに関与することはなかった。

結論:
 BAEについてレトロスペクティブに調べると、疾患によって再BAEや死亡に差異がみられた。

by otowelt | 2012-05-26 08:40 | 呼吸器その他