2012年 05月 30日 ( 3 )

ALK阻害薬:ザーコリ発売

 薬価収載前後にも何人かの患者さんは先行投与を受けていたが、ザーコリが正式に発売となった。ALK陽性の患者さんにとって、希望の薬となれば嬉しい限りだ。用量にもよるが、タルセバよりは値段はかなり高くつく。
 適正使用ガイドや患者さん向けの説明文書がファイザープロフェッショナル(http://pfizerpro.jp/cs/sv/pfizerpro/n/Page/1254401314997)のサイトにある。

●日経メディカルオンライン(http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/search/cancer/news/201205/525144.html)
 ファイザーは、5月29日、「ALK融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌」の適応症で、クリゾチニブ(製品名「ザーコリカプセル200mg/250mg」)の発売を開始したと発表した。
 成人には、1回につき250mgを、1日2回経口投与する。薬価は、250mg1カプセルが1万1692.30円、200mg1カプセルが9420.80円だ。
 同剤は、製造販売承認を取得した今年3月30日から薬価基準収載されるまで、早期使用が必要な患者に限って薬剤提供を実施しており、計51人が服用した(5月25日現在)。
 国内治験は、2010年3月からNSCLC患者を対象に開始しており、2011年1月に希少疾病用医薬品に指定された。今回の承認は、ALK融合遺伝子陽性の局所進行または転移性非小細胞肺癌患者255例のデータに基づくもの。現在も、2つの無作為化・非盲検の第3相試験(PROFILE 1007試験、PROFILE 1014試験)を進行している。

●日本経済新聞:ファイザー、肺がん治療薬「ザーコリ」発売
米製薬大手ファイザー日本法人(東京・渋谷)は29日、肺がん治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)を発売したと発表した。原因となる遺伝子の働きを阻む作用を持つ世界初の治療薬となり、日本では希少疾病用医薬品の指定を受けていた。同社はがん治療薬の研究開発・販売に力を入れており、10年後には年間112億円の売上高を見込む。
 がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害する。肺がんの多くを占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、約3~5%はこうした遺伝子を持つという。ザーコリの発売により、治療効果が見込まれる患者を選んで薬を投与する「個別化医療」の実現につながるという。(2012年5月20日日本経済新聞)

by otowelt | 2012-05-30 16:35 | 肺癌・その他腫瘍

肺M.intracellulare症は肺M.avium症よりも重症で予後が不良

呼吸器内科医にとっては、純粋に面白い論文。

Won-Jung Koh, et al.
Clinical Significance of the Differentiation between Mycobacterium avium and Mycobacterium intracellulare in M. avium Complex Lung Disease
CHEST May 2012 , in press


背景:
 Mycobacterium aviumおよびMycobacterium intracellulareは、いずれもM. avium complexとして分類されている。しかしながら、これらの菌の臨床的な違いについてはよくわかっていない。このスタディは、M. aviumおよびM. intracellulareの臨床的な特徴と予後について比較したものである。

方法:
 2000年から2009年まで合計590人の新規にM. avium complexによる肺疾患と診断された患者を登録した。323人(55%)がM. aviumであり、267人(45%)がM. intracellulareであった。

結果:
 肺M. avium症の患者と比較すると、肺M. intracellulare症は以下のような特徴がみられた。すなわち、比較的高齢者であること(64 vs. 59 years, P = 0.002)、BMIが低いこと(19.5 vs. 20.6 kg/m2, P < 0.001)、咳嗽などの呼吸器症状が多いこと(84 vs. 74%, P = 0.005)、過去の結核既往歴が多いこと(51 vs. 31%, P < 0.001)、線維空洞型が多いこと(26 vs. 13%, P < 0.001)、喀痰抗酸菌塗抹陽性が多いこと(56 vs. 38%, P < 0.001)、フォローアップ24ヶ月の間の抗菌薬使用(58% vs. 42%, P < 0.001)、併用抗菌薬療法後の微生物学的な反応性不良(56 vs. 74%, P = 0.001)。

結論:
 肺M. intracellulare症は、肺M. avium症の患者と比較すると重度の症状と治療反応不良と関連していた。そのため、これらの菌における違いが予後や治療に寄与するかもしれない。

by otowelt | 2012-05-30 15:28 | 抗酸菌感染症

サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno

サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno_e0156318_7271658.jpgSaccomanno G, et al. Concentration of carcinoma or atypical cells in sputum. Acta Cytol 7:305-310, 1963.

 蓄痰法の代表的な方法であるサコマノ法(Saccomanno's Fixative Procedure)は、呼吸器内科医であればご存知のことと思います。上記の論文は1963年に発表されたSaccomanno医師による論文です。Saccomannoは、扁平上皮化生を4つの異型度に分類(異型なし、軽度異型、中等度異型、高度異型)し、ウラニウム鉱の鉱失の喀痰を長期に追跡しました。

 Geno Saccomannoは、ユタ州Moabに1915年に生まれました。St. Louis大学で病理学を学んだのち、生まれ故郷に近いコロラド州Grand JunctionのSt. Mary's hoispitalの病理医として1948年赴任しました。西部コロラド州、東部ユタ州において精力的に病理医として活躍し、中枢性の肺癌における喀痰細胞診技術を確立した。肺癌の世界では当時彼を知らぬ者はいなかったと言われています。

 その後Grand Junctionで妻のVirginiaと生涯をともにした。St. Mary's Hospital Cancer Research Instituteを1993年に開設しました。1997年にこの施設をthe Saccomanno Research Institute に改名しました。彼は、1999年7月10日に逝去しました。

・Saccomanno Research Institute
 Wellington 4 Building 2530 North 8th Street, Suite 100 Grand Junction, CO


 Saccomanno法は、喀痰の粘液を除去しすることで細胞成分を高密度に集めて細胞診を行おうとする手法であり、1963年に考案されました。従来の自然喀出法では、3日以上の連続検痰が必要で、喀出後できるだけ早く塗抹固定する必要がありましたが、Saccomanno法は保存性の面で優れており当時の呼吸器内科医にとって画期的であした。Saccomanno法は、50%エタノールと2%ポリエチレングリコール20mlを混入した喀痰保存用容器を用いて採取されます。良悪性の判定にはよいのですが、組織型判定はしばしば困難となることもあります。

 近年は、YM式喀痰固定液などの登場によりオリジナルSaccomanno法ではない集痰法が主流となりつつあります。たとえばYM式は細胞変性(収縮、膨化)がないこと、Saccomanno法で使用するHigh Speed Mixerを必要としないため、集団検診での複数検体処理に有用です。




<音楽と医学>
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
ブラームスは外科医ビルロートの親友だった

<偉人たち>
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram

by otowelt | 2012-05-30 07:28 | コラム:医学と偉人