2012年 07月 31日 ( 3 )

エルロチニブによるネオアジュバント化学療法の第II相試験

術前化学療法で分子標的薬を使用することについては議論の余地がある。

Eva E. Schaake, et al.
Tumor Response and Toxicity of Neoadjuvant Erlotinib in Patients With Early-Stage Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO August 1, 2012 vol. 30 no. 22 2731-2738


目的:
 選択された患者において、標的治療は新たなオプションとして注目を浴びている。このプロスペクティブスタディの目的は、術前エルロチニブ治療の安全性と早期切除可能の非小細胞肺癌(NSCLC)患者に対するin vivoでの反応性を評価したものである。

患者および方法:
 このスタディは、オープンラベル第II相試験としてデザインされ、オランダにおける4病院で実施された。Simonのミニマックス基準(2段階デザイン)に基づいておこなわれた。まず、手術可能な早期NSCLC患者(n = 15)がenriched population(非喫煙者、女性、非扁平上皮癌、アジア人)から登録された。非選択患者が組み込まれ、合計60人登録された。患者は、術前エルロチニブ150mg1日1回3週間を投与された。治療反応性は、治療中のFDG-PETおよびCTと切除標本の組織学的検査によって評価された。プライマリエンドポイントは毒性と病理学的反応性とした。

結果:
 60人の患者が登録された。56人(93%)が術前に悪性の診断がついていた。平均年齢は64歳であった。
 合計42人が21日間のエルロチニブ内服を終了した。4人が100mgへの減量を余儀なくされ、7人の患者は毒性のため早期に治療中断となった(12%)。皮膚毒性は37人(62%)の患者にみられ、下痢は21人(35%)にみられた。PETでの代謝的反応性(25%をこえるSUV減少)は16人(27%)にみられ、CTでのRECIST判定では3人(5%)に反応性がみられた。
 手術においては、予測不能合併症は起こらなかった。病理検査では14人(23%)の患者の標本の50%以上に壊死がみられ、3人(5%)では95%以上の壊死がみられた。奏効率は、enriched populationにおいて34% (29人中10人)にみられた。
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 EGFR遺伝子変異は56人中7人(13%)にみられた。うち5人がenriched populationであった。KRAS遺伝子変異は12人(21%)にみられた。

結論:
 術前エルロチニブは低い毒性で活性も十分であり、今後のさらなる試験に妥当性がある。

by otowelt | 2012-07-31 22:54 | 肺癌・その他腫瘍

ソラシックエッグによる外来での気胸治療

呼吸器外科学会から、ソラシックエッグの話題。
簡単に言えば、外来でドレーンを入れて気胸を治療する方法である。7Frドレナージチューブと35mlの容器と2個の一方弁が付いたキットであり、チェストドレーンバッグがコンパクトなので体表に固定をしっかりすれば普通に生活できる。
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thoracic vent (SHEENMAN)、ソラシックエッグ(住友ベークライト)が現在流通している簡易型胸腔ドレナージキットである。

有村 隆明ら
ソラシックエッグを用いた自然気胸外来治療の検討
日本呼吸器外科学会雑誌 Vol. 26 (2012) No. 4 p. 364-368


目的:
 自然気胸症例に携帯型気胸ドレナージキットであるソラシックエッグ(以下TE)を用いた外来治療の有用性を検討した。

方法:
 対象は2006年11月から2011年4月までにTEで治療を行った自然気胸患者137例,男性116例,女性21例で患側は右側73例,左側63例,両側1例であった。
穿刺はTEスタンダードセットを使用した。カテーテル刺入部を縫着固定し滅菌パット付き防水フィルムを貼布した。弾性テープで補強を行い皮膚に固定した。
 TEを挿入してから30分後に胸部レントゲン検査を行い,肺の虚脱が進行していないことと再膨張性肺水腫が無いこと,患者の全身状態に異常が無いことを確認して翌日の外来通院と胸部レントゲン検査をおこなった。

結果:
 初発気胸は81例,再発は32例,2回以上の再発は8例,術後再発は16例であった.TEで外来治療を行い得たのは132例であった.84例はTEで治癒,48例はTEの後,手術となった.平均外来治療期間はTEで治癒した場合5.77日,手術となった場合は術前9.75日であった.合併症は1例にTE刺入部の感染,1例にTEの破損,5例にTEの偶発的抜去があったがTEの再挿入は行わなかった.

結論:
 TEを用いた自然気胸外来治療は重篤な合併症も無く,外来通院完遂率も高い.自然気胸患者にとって社会的,経済的負担の軽減の点で非常に有用な治療法であるといえる。

by otowelt | 2012-07-31 16:20 | 呼吸器その他

Runyon分類

感染症内科医や呼吸器内科医にはよく知られている非結核性抗酸菌症の分類として、Runyon分類がある。ルンヨンではなく、ラニヨンと読む。
Runyon EH:Anonymous mycobacteria in pulmonary disease. Med Clin North Am 1959;43:273―90.

 Ernest Runyon(1903年アイオワ州生)は、もともと植物学を専攻しており、その分野においてシカゴ大学から学士号を授与されている。植物学の知識をいかして、のちに微生物学者となった。1959年にヒトに対する病原性をもった抗酸菌を分類し、Runyon分類と呼ばれるようになった。1962年には抗酸菌分類分科会の議長をつとめた人物である。

 現在でもRunyon分類はよく用いるので、少し整理しておきたい。

 固形培地(Lowenstein-Jensen培地、小川培地、Middlebrook培地)を使用して、コロニーの形成に7 日以上を要するものを遅発育抗酸菌(slow growers)と定義し、7日以内であるものを迅速発育抗酸菌(rapid growers)と定義する。培養不能ならい菌(M. leprae)は培養不能抗酸菌に分類する。

 以下がRunyon分類の各論である。コロニーの性状として、色素産生と光反応性によって、光発色菌群(photochromogens,I 群)、暗発色菌群(scotochromogens,II 群)、非光発色菌群(nonchromogens,III 群)、迅速発育菌群はすべてIV群に分類される。1群は光発色菌で、暗闇の孵卵器の中の試験管を取り出して1時間程電灯にあてる。その後再び孵卵器に戻して培養を続けるとコロニーが黄色になるものである。当初yellow bacillusと呼ばれたM.kansasiiがその代表的なものである。2群は暗発色菌で、孵卵器のなかに光をあてずに置いておくことで、コロニーがオレンジ色に着色するものである。3群菌は非光発色菌で、培養中に光に当てても当てなくても、結核菌と同じようにコロニーは灰白色になるものを指す。MACはこれにあたる。
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by otowelt | 2012-07-31 13:00 | 抗酸菌感染症