2012年 08月 08日 ( 3 )

肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス

e0156318_1155850.jpg胸腔内感染に対するt-PA+DNase胸腔内投与によって、胸水ドレナージ効果が改善し、手術コンサルテーション頻度が低下し入院期間が短縮したというNEJMの報告が記憶に新しい。
胸腔内感染に対するt-PA+DNase胸腔内投与はドレナージを改善させる

一度は闇に葬り去られそうになった胸腔内注入療法だが、再び脚光を浴びるようになった。CHESTからメタアナリシスが出ている。バイアスがかなり多いメタアナリシスながらも、採択されている。

Surinder Janda, et al.
Intrapleural Fibrinolytic Therapy for Treatment of Adult Parapneumonic Effusions and Empyemas: A Systematic Review and Meta-analysis
CHEST 2012; 142(2):401–411


背景:
 われわれの試験の目的は、肺炎随伴性胸水と膿胸に対して線維素溶解(fibrinolytics)療法とプラセボを比較したランダム化比較試験からシステマティックレビューおよびメタアナリシスをおこなうことである。

方法:
 MEDLINE, EMBASE, PapersFirst, Cochraneで検索をおこなった。キーワードは以下の通り:“pleural effusion” or “parapneumonic” or “empyema” or intrapleural”
or “pleur” AND “fi brinolytic” or “antithrombotic” or “thrombolytic”or “streptokinase” or “urokinase,” “alteplase” or “t-PA” or“DNase”。
 2人の研究者が独立して記事をレビューし、データを抽出した。臨床試験の質の評価は、Jadadスケールに基づいた。

結果:
 7つのランダム化比較試験(合計801人の患者)で線維素溶解療法とプラセボが比較されており、これをメタアナリシスに組み込んだ。線維素溶解療法は、治療失敗(手術を要したか死亡したか)のアウトカムに利益がみられた(RR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.87)。
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 また、外科手術単独の失敗アウトカムにしぼってみると(RR, 0.61; 95% CI, 0.45-0.82)であった。すなわち、治療失敗を回避する上で有用であると考えられる。
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 在院日数については差はみられず(standard mean difference, −0.69; 95% CI, −1.54-0.16)、死亡単独についても差はみられなかった(RR, 1.14; 95% CI, 0.74-1.74)。
 出版バイアスは統計学的に有意にみられた。funnel plotでは、両側底部の該当試験がなかった。出版されていない試験については今回検索を試みていない。そのため、出版バイアスの存在がこのメタアナリシスの妥当性に影響している可能性については疑問が残ってしまう。
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結論:
 このメタアナリシスにより、線維素溶解療法は潜在的に成人の肺炎随伴性胸水と膿胸に治療失敗を回避するという効果がみられる。heterogeneityが有意にみられ出版バイアスの観点からも、この処置をルーチンに推奨するエビデンスとしては不十分であろうが、線維素溶解療法は限局した胸水には考慮してもよいかもしれない、というのも外科的手術を回避できる可能性があるからだ。適切なランダム化比較試験に期待したい。

by otowelt | 2012-08-08 11:06 | 感染症全般

肺癌スクリーニング検査のアルゴリズムにルーチンに気管支鏡を行う意義

予防医学的見地からの話題。

Susan C. van ’t Westeinde, et al.
The Role of Conventional Bronchoscopy in the Workup of Suspicious CT Scan Screen-Detected Pulmonary Nodules
CHEST 2012; 142(2):377–384


背景:
 CT検査での肺癌スクリーニングを受けた人で少なくとも1つの肺結節影を指摘される人は、50%にものぼるとされている。肺結節影をスクリーニングで指摘された場合、ワークアップとして通常の気管支鏡がどういった役割を果たすのかは現時点ではまだはっきりしていない。もし気管支鏡による評価が除外できるのであれば、肺癌スクリーニングプログラムでの費用効果は大きく、気管支鏡による有害事象も回避できるかもしれない。

方法:
 CT検査で肺癌スクリーニングで異常を指摘された連続患者を、2004年4月から2008年12月までの間登録した。NELSON試験と同等の手法でおこなわれたものであり、全ての患者はベースラインスクリーニングで異常を指摘されたのち、1年後ないし3年後に再度異常を指定されたものを組み込んだ。結節影は、>500 mm3(>9.8 mm 径)を陽性基準とした。
 2病院で気管支鏡がおこなわれたが、CT蛍光ガイドあるいは極細気管支鏡は使用していない。
 診断的感度および陰性適中率が算出された。95%の結節影で、気管支鏡アウトカムの判断基準は外科的切除検体に基づいた。もし外科的切除をしない場合、400日volume-doubling timeに基づいて良性かどうか判定した。

結果:
 連続した318人の肺結節影のうち、308人に気管支鏡が施行された。結節影の平均直径±SDは、14.6 ± 8.7 mmであり、2.8%が結節影の大きさが30㎜をこえるものであった。308人の気管支鏡検査を受けた人のうち、279人が検体を採取され、39人が採取されなかった。前者279人のうち、最終的に悪性と診断されたのは158人(56.6%)で、後者のうち最終的に悪性と診断されたのは20人(51.3%)であった。気管支鏡を受けずに最終的に悪性と診断されたのは107人中24人(22.4%)であった。
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 気管支鏡の感度は13.5% (95% CI, 9.0%-19.6%)で、特異度および陽性適中率は100%、陰性適中率は47.6% (95% CI, 41.8%-53.5%)であった。
 全体で癌だと診断された結節影のうち、1%のみが気管支鏡のみで診断され、レトロスペクティブには低線量CTでも造影CTでも可視できなかった。

結論:
 通常の気管支鏡検査は、肺癌スクリーニングプログラムで異常と指摘された患者にルーチンですすめられるべきではない。

by otowelt | 2012-08-08 10:35 | 肺癌・その他腫瘍

COPD急性増悪では気道粘膜にCysLT1受容体蛋白が発現

Jie Zhu, et al.
Cysteinyl Leukotriene 1 Receptor Expression Associated With Bronchial Inflammation in Severe Exacerbations of COPD
CHEST 2012; 142(2):347–357


背景:
 Cysteinyl leukotriene 1 (CysLT 1 )受容体は、喘息患者(特に急性増悪患者)において気道粘膜に多く発現するとされているが、COPDにおける発現については何もわかっていない。

方法:
 気管支粘膜生検検体(Ben Taub General Hospitalで施行、テキサス州)における免疫組織化学染色とin situ hybridizationによって、炎症性細胞CysLT 1 受容体蛋白とmRNA発現を以下の患者で検証した。(1)15人の非喫煙者コントロール(FEV 1 ≧ 80% predicted; FEV 1 /FVC≧ 70%)、(2) 16人の喫煙者(58 ±8 pack-years)で中等度から重度の安定したCOPD患者、(3) 15人のCOPD患者で重度の急性増悪で入院した患者。

結果:
 気管支粘膜炎症細胞(CD45陽性)とCysLT 1受容体蛋白を発現した細胞は、有意に重度のCOPD急性増悪患者で発現がみられた(CysLT 1受容体蛋白:中央値[range]=139 [31-634])。安定したCOPD患者と健常者コントロールではそれぞれ(32 [6-114])、16 [4-66]) ( P<.001 for both)。CysLT 1受容体遺伝子発現は双方ともの間で同等の差であった。CysLT1受容体蛋白発現CD45陽性細胞は重度のCOPD急性増悪患者で高い比率であった(中央値[range]=22% [8-81])。安定したCOPD患者と健常者コントロールではそれぞれ(10% [4-32]) ( P<.03) 、NSC (7% [1-19]) ( P<.002)。重度のCOPD急性増悪患者において、CysLT1受容体発現細胞の相対度数は以下の通りであった:tryptase陽性肥満細胞>CD68陽性単球/マクロファージ>好中球>CD20陽性Bリンパ球=EG2陽性好酸球。
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 さらに、CysLT1受容体蛋白発現の細胞数と、CD45陽性細胞の数には有意な相関がみられ( r=0.78; P<.003)、tryptase 陽性肥満細胞との間にも相関がみられた( r=0.62; P<.02)。

結論:
 気管支粘膜CysLT1受容体陽性炎症細胞は、COPDで重度の急性増悪をきたした気管支粘膜に存在する。

by otowelt | 2012-08-08 07:38 | 気管支喘息・COPD