2012年 10月 24日 ( 2 )

チョコレート摂取量が多いほどノーベル賞受賞者が増える

クリスマスBMJを彷彿させる、突っ込みどころ満載の論文です。ランダム化試験って。

Franz H. Messerli.
Chocolate Consumption, Cognitive Function, and Nobel Laureates
N Engl J Med 2012; 367:1562-1564


背景:
 チョコレートの摂取は認知機能の改善をもたらすとされているが、この摂取がノーベル賞受賞とどう関連しているのか、私は疑問に思った。

方法:
 合計22ヶ国の1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数をWikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_Nobel_laureates_per_capita)で調べた(List of countries by Nobel laureates per capita)。
 国別の1人当たりのチョコレート摂取量は、スイスChocosuisse、ドイツTheobroma-cacao、ヨーロッパチョコレート・ビスケット・菓子工業協会Caobiscoをインターネットで調べて、一番新しいデータを採用した。

結果:
 1人当たりのチョコレートの摂取量と、1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数の間には、有意な線形相関がみられた(r = 0.791, P<0.0001)。外れ値のスウェーデン以外では、r=0.862であった(スウェーデンは、チョコレート摂取量から予測されるノーベル賞受賞者数の2倍程度の受賞者がいるため)。スイスにおいて、1人当たりのチョコレート摂取量および1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数が双方とも最も高いものとなった。
チョコレート摂取量が多いほどノーベル賞受賞者が増える_e0156318_13171493.jpg
 1人当たり年間0.4kgのチョコレートを余分に摂取することで、国別ノーベル賞受賞者が1人増えると推測される。アメリカの場合、全米チョコレート総摂取量が年間1億2500万kg増加することで、ノーベル賞受賞者が1人増える。

考察:
 スウェーデンが外れ値となった理由として、ノーベル賞委員会が選考の際にスウェーデンを選ぶバイアスがかかっている理由が考えられる。また、スウェーデン国民のチョコレート感受性が高いこと(sensitive to chocolate)などが考えられる。

結論:
 チョコレートの摂取がノーベル賞受賞に必要なベースとなっている可能性がある。プロスペクティブランダム化試験が望まれる。

 

by otowelt | 2012-10-24 13:19 | 内科一般

PETTS試験:セカンドライン抗結核薬は、同耐性およびXDR-TBのリスクを上昇

PETTS試験:セカンドライン抗結核薬は、同耐性およびXDR-TBのリスクを上昇_e0156318_9331615.jpg 連続ですが、LancetからXDR-TBの話題です。

Tracy Dalton, et al.
Prevalence of and risk factors for resistance to second-line drugs in people with multidrug-resistant tuberculosis in eight countries: a prospective cohort study
Lancet 2012; 380: 1406–17


背景:
 超多剤耐性結核(XDR-TB)は、セカンドライン抗結核薬を多剤耐性結核(MDR-TB)に使用することでその頻度が増えている。われわれは、8か国においてセカンドライン抗結核薬の使用が耐性に影響を与えるかどうか、the Preserving Eff ective TB Treatment Study (PETTS)試験においてプロスペクティブに検証した。

方法:
 2005年1月1日から2008年12月31日までの間、われわれは連続した成人MDR-TB患者をセカンドライン抗結核薬開始時点で登録した。実施国は、エストニア、ラトビア、ペルー、フィリピン、ロシア、南アフリカ、韓国、タイ。薬剤感受性テストは、11のファーストライン抗結核薬とセカンドライン抗結核薬に実施された。感受性についてはCDCで集約しておこなった。Middlebrook 7H10 agar (BD)を用いて比率法で測定した(イソニアジド 0.2 μg/mL、リファンピシン1.0 μg/mL、エサンブトール5.0 μg/mL、ストレプトマイシン2.0 μg/mL、オフロキサシン2.0 μg/mL、シプロフロキサシン2.0 μg/mL、カナマイシン5.0 μg/mL、カプレオマイシン10.0 μg/mL、アミカシン4.0 μg/mL、PAS2.0 μg/mL、エチオナミド10.0 μg/mL)。
 われわれは、セカンドライン抗結核薬に対する耐性とXDR-TBのリスク因子を同定するために、臨床的および疫学的データの結果を比較した。

結果:
 3034人の登録者のうち、エストニア46人、ラトビア100人、ペルー177人、フィリピン397人、ロシア115人、南アフリカ293人、韓国99人、タイ51人の合計1278人が適格基準を満たした。これら1278人の患者のうち、43.7%が少なくとも1つのセカンドライン抗結核薬に耐性(ただし国間差があり、タイでは33.3%、ラトビアでは62.0%)、20.0%に少なくとも1つのセカンドライン注射薬の耐性、12.9%に少なくとも1つのフルオロキノロン耐性がみられ、6.7%がXDR-TBであった。
 セカンドライン抗結核薬の治療歴は、これら薬剤の耐性リスク因子であった。
PETTS試験:セカンドライン抗結核薬は、同耐性およびXDR-TBのリスクを上昇_e0156318_9243497.jpg
 また、セカンドライン抗結核薬の治療歴は、XDR-TBリスクを4倍に上昇させた。
PETTS試験:セカンドライン抗結核薬は、同耐性およびXDR-TBのリスクを上昇_e0156318_9251129.jpg
 フルオロキノロン耐性とXDR-TBは男性よりも女性に多かった。失業者、アルコール中毒、喫煙者は、セカンドライン注射薬の耐性に関連していた。他のリスクファクターについては薬剤・国間で差はみられなかった。

limitatinos:
・国がバラバラなので、オリジナルデータそのものに地域差があること
・診療録の抜粋であるため、データに抜けがある可能性があること
・CDCで集約して薬剤感受性検査は行っているが、国ごとのベースラインの検査の差は細かく補足できていない

結論:
 セカンドライン抗結核薬による治療歴は、これらの耐性に強く関連しており、XDR-TBリスクを上昇させた。

by otowelt | 2012-10-24 05:31 | 抗酸菌感染症