2012年 11月 27日 ( 2 )

重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの持続投与は間欠的投与と効果は同等

 PLOS ONEからピペラシリン/タゾバクタムの持続投与についての報告。過去の2つのメタアナリシスでは、βラクタム系抗菌薬の持続投与は臨床効果については同等と考えられています。重症患者でこういったスタディが組まれる理由は、重症の状態における分布容積の増大でしょうか?
・Roberts JA, et al. A systematic review on clinical benefits of continuous administration of beta-lactam antibiotics. Crit Care Med. 2009 Jun;37(6):2071-8.
・Tamma PD, et al. Does prolonged β-lactam infusions improve clinical outcomes compared to intermittent infusions? A meta-analysis and systematic review of randomized, controlled trials. BMC Infect Dis. 2011 Jun 22;11:181.


以下、今回の報告です。

João Gonçalves-Pereira, et al.
Continuous Infusion of Piperacillin/Tazobactam in Septic Critically Ill Patients—A Multicenter Propensity Matched Analysis
PLoS ONE 7(11): e48748. doi:10.1371/journal.pone.0048748


背景:
 微生物学的な感染を有する重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの持続注射の臨床的効果についてはよくわかっていない。

方法:
 われわれは、レトロスペクティブにポルトガルICUにおいてコホート試験を計画した。569人の感染を有する成人重症患者で、ピペラシリン/タゾバクタムを投与した患者を2006年1月1日から2010年12月31日までの間抽出。ただしin vitroで感受性がある微生物による敗血症に陥った患者のみとした。傾向スコアを用い、交絡因子を補正。173人ずつの2群のマッチが可能となった。
 間欠的投与は、30分で点滴を滴下。これを1日複数回投与とした。
 持続投与は、4.5gをボーラス投与したのち、1日量を24時間で投与。

結果:
 全体の70.8%が呼吸器感染症であり、Gram陰性菌が81.8%であった。Pseudomonas aeruginosaが最も多く、起因菌の34.4%を占めた。
 ほとんどの患者がピペラシリン1日16gとタゾバクタム1日2gの投与を受けた。28日死亡率は両群とも同等で28.3%(p = 1.0)。ICUおよび院内死亡率は持続投与群と間欠的投与群で同等(23.7% vs. 20.2%, p = 0.512 and 41.6% vs. 40.5%, p = 0.913, respectively)。
重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの持続投与は間欠的投与と効果は同等_e0156318_911898.jpg

 SAPS II>42のサブグループ患者では、28日死亡率は持続投与群の方が低い傾向にあったが統計学的には有意ではなかった(31.4% vs. 35.2%、p = 0.66)。
 ICUを退室した患者のICU在室期間は両群で同等であった(12.0日 vs 11.5日)。

limitations:
・レトロスペクティブ試験であること
・大規模スタディであるが、ピペラシリン濃度測定ができなかったこと
・微生物のMICを記載していない
・上記2点のため効果と毒性の評価があいまいになってしまったこと
・抗菌薬投与日数のデータ、および再発についてのデータを解析していないこと

結論:
 感染を有する重症患者におけるピペラシリン/タゾバクタムの臨床的効果は、投与経路とは独立しており、持続投与でも間欠投与でも問題ない。

by otowelt | 2012-11-27 05:42 | 感染症全般

敗血症・敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に寄与

敗血症・敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に寄与_e0156318_21125789.jpgランダム化比較試験ではありませんが、興味深い論文です。

Park, Dae Won, et al.
Red blood cell transfusions are associated with lower mortality in patients with severe sepsis and septic shock: A propensity-matched analysis
Critical Care Medicine: December 2012 - Volume 40 - Issue 12 - p 3140–3145


目的:
 重症敗血症や敗血症性ショックの患者に対する輸血の効果を評価する。

デザイン・方法:
 2005年4月から2009年2月までのプロスペクティブ観察試験(Propensity-matched analysis)。韓国における22のICUで実施。
 1054人の市中発症の重症敗血症や敗血症性ショックの患者を登録。

結果:
 1054人の患者のうち、407人(38.6%)が輸血を受けた。輸血をうけた患者は男性が多く(59.6% vs. 52.6%; p = .028)、癌、外傷、腎疾患、肝疾患、血液疾患を有する率が高かった。また、皮膚軟部組織感染症が輸血群で高率であった。非輸血群では尿路感染症が多かった。
 輸血前の平均ヘモグロビン値は7.7 ± 1.2 g/dLであった。輸血された患者は、28日死亡率と院内死亡率が高かった(32.7% vs. 17.3%; p < .001, 41.3% vs. 20.3%; p < .001)。また、輸血は在院日数の長期化に関連(21日、IQR 10–35 vs. 13日、IQR 8–24 ; p < .001)。しかしながら、輸血を受けた群は収縮期血圧が低く(86.2 ± 27.8vs. 90.7 ± 26.3; p = .008)、APACHEIIスコアが高く(21.2 ± 7.4 vs. 17.4 ± 7.1; p <.001)、入院時SOFAスコアも高かった(8.6 ± 4.0vs. 6.9 ± 5.4; p < .001)。臓器機能も輸血群の方が概して悪かった。
 152人の傾向スコアによるマッチ患者との比較では、赤血球輸血は7日目の死亡率低下(9.2% vs. 27.0%; p < .001)、28日死亡率の低下(24.3% vs. 38.8%; p = .007)、院内死亡率の低下(31.6% vs. 42.8%;p = .044)。在院日数はやはり輸血群で有意に延長した(23日、IQR 11–39 vs.
13日、IQR 5–25; p < .001)。
 複数の因子を補正してCox比例ハザード解析したところ、赤血球輸血は7日目の死亡率低下(HR 0.42, 95%CI0.19–0.50, p = .026)、28日死亡率の低下(HR 0.43, 95% CI 0.29–0.62, p < .001)、院内死亡率の低下(HR 0.51, 95%CI 0.39–0.69, p < .001)に有意に相関していた。
 累積ハザードは、全体でも(HR 0.51, 95% CI 0.39–0.69,p < .001)、傾向マッチ患者でも(HR 0.35, 95% CI 0.23–0.53, p < .001)低下。
敗血症・敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に寄与_e0156318_2194265.jpg
結論:
 この観察試験では、市中発症の敗血症や敗血症性ショックに対する赤血球輸血は死亡率低下に関連していた。

by otowelt | 2012-11-27 00:11 | 集中治療