2013年 05月 12日 ( 2 )

出版のお知らせ:「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス

個人的な宣伝で申し訳ありませんが、
『「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス』
という本を5月16日に出版します。
出版のお知らせ:「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス_e0156318_12482559.jpg
発売日:2013年5月16日
単行本:451ページ
価格:4,500円(税込4,750円)
出版社:シーニュ社
著者:倉原 優

出版のお知らせ:「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス_e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する (入荷がやや遅いかも)

出版のお知らせ:「寄り道」呼吸器診療 ―呼吸器科医が悩む疑問とそのエビデンス_e0156318_13141310.jpgシーニュ社から購入する


 この本は、初期研修医以降をターゲットにした内容になっています。臨床で出会う呼吸器科的な疑問をピックアップして書き上げたもので、文章は私のブログのテイストそのままになっています。たとえば以下のような内容について各項目ごとに3ページ程度書いています。全部で77の項目があります。

・気管支鏡時の抗菌薬にエビデンスはあるのか?
・気管支鏡時のリドカインのエビデンスは?
・結核患者さんとどのくらい接触したら自分にも感染してしまうのか?
・気管支喘息に対する吸入ステロイド薬はどれを使用したらよいのか?
・気管支喘息発作に対する全身性ステロイドの最適量は?
・慢性間質性肺疾患の患者さんに外科的肺生検は必要か?
・関節リウマチによる慢性間質性肺疾患とメトトレキサートによる薬剤性肺障害は鑑別可能か?
・慢性過敏性肺炎の治療にエビデンスはあるか?
・胸腔ドレーン抜去前のクランプテストにエビデンスはあるのか?
・再膨張性肺水腫を予防するためのエビデンスはあるのか?
・放射線肺炎に対するステロイド治療のエビデンスは?
・癌以外の呼吸困難感にモルヒネを使用してよいか?
・鎮咳薬で最も効果的なものは?
・吃逆の治療のエビデンスは?
・過換気症候群にペーパーバッグ療法はだめなのか?
  
・・・・・・・・・・・・などなど

 私は幼少期に交通事故に遭い、それから医師を目指しました。もともと頭の悪い人間で思うように成績が伸びず、中学生の頃は下から数えた方が早いような位置にいました。思い返せば、私は教えられたことにいつも疑問を抱くような性格で、ひねくれた考えばかり持っていました。ご存知の方もいると思いますが、私はどちらかといえばアウトローな呼吸器内科医です。1+1=2だと教えられても、どこか懐疑的でいるような人間です。思えばそういった性格がこの本を執筆する礎になったのかもしれません。

 医師免許を取得した後、私は京都府の病院で初期研修をおこないました。私の思考回路をいい意味で伸ばしてくれたのは、この病院でした。現在も臨床の第一線で活躍されている当時の指導医の先生方に心から感謝しています。

 私のブログは医学論文を毎日和訳して自分の勉強の足跡を残すためだけでなく、臨床で出会う疑問や懐疑心にヒントを与えることができる内容にしたいという思いがありました。どれだけ紆余曲折を経ようとも、患者さんに利益を与えることができればと思っています。同じような疑問を抱いた人が私のブログを訪れ、そのアクセス数は次第に増えていきました。そして、多くの人に知っていただけるブログに成長することができました。

 2012年10月に、シーニュ社から「本を書いてみませんか」とお誘いがありました。たかだか7年目の呼吸器内科医が世に送り出せる内容なんて知れてると思いましたが、シーニュ社の理念に惚れて本を執筆する決意をしました。下手な私の日本語の校正から全体のビジョンまでおんぶに抱っこの状態でした。私の患者さんの急変の際にはシーニュ社とのアポイントメントをドタキャンしたこともありました。半年かかって、ようやく出版にまでこぎつけることができました。

 私は、まだ研鑽を積む過程にいる身です。先輩の皆様にとっては「その意見は青い」「これはおかしい」と思われる部分もあるかもしれません。副題にある「エビデンス」と言うには参考にする材料が少ないテーマも多く、「こんなんでエビデンスって言っていいものか」と著者本人は内心冷や冷やしていますので、机の上で開く本ではなく、暇つぶしに寝っころがって読む本として手に取っていただければ嬉しく思います。コントラバーシャルなテーマに敢えて顔面から突っ込んでいった無謀な部分もありますので、「まったく仕方ないヤツだな」と御笑覧いただければ幸いです。

 なお、この書籍はあくまで一個人としての書籍であり、所属施設の見解ではないことを付け加えさせていただきます。

 私を呼吸器内科医として成長させてくれた出会った患者さん全てに、心から御礼を申し上げたいと思います。
 
 アメリカ胸部疾患学会までの間、ブログはほんの少しだけお休みをいただきたいと思います。今後も当ブログをなにとぞよろしくお願い申し上げます。


2013年5月12日

国立病院機構近畿中央胸部疾患センター
倉原 優


by otowelt | 2013-05-12 12:27 | その他

ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い

ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い_e0156318_23212863.jpg ステロイド使用と肺塞栓の症例対照研究です。リスクが高いといっても、実臨床では内服初期から全例塞栓の予防をおこなうのは現実的ではありません。

Danka J. F. Stuijver, et al.
Use of Oral Glucocorticoids and the Risk of Pulmonary Embolism
A Population-Based Case-Control Study
CHEST 2013; 143(5):1337–1342


背景:
 内因性のステロイド過剰は静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子と考えられる。外因性のステロイド使用がVTEのリスクかどうかはまだわかっていない。われわれはステロイドを使用している患者の症候性の肺塞栓症(PE)のリスクを定量化した。

方法:
 オランダの集団ベース薬局登録システム:PHARMO Record Linkage Systemによる症例対照研究を実施した。症例は4495人のPEで初回入院した1998年から2008年までの患者で、年齢・性別マッチした16802人のPEの既往のないコントロールを登録した。
ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い_e0156318_2391028.jpg
A:ステロイド開始のタイミング、B:ステロイド内服期間

結果:
 平均年齢はいずれも60歳で、57%が女性だった。
 PEのリスクは、ステロイド薬曝露から最初の30日に最も高かった(補正オッズ比5.9, 95%信頼区間 2.3-3.9)。また、1年超の長期使用者については、使用中はゆるやかにそのリスクは低下していった(オッズ比1.9、95%信頼区間1.3-2.9)。低用量ステロイド使用(プレドニゾン換算で1日用量5mg未満)は2倍のPEのリスク増加をもたらした(オッズ比1.8、95%信頼区間 1.3-2.4)。また、高用量(プレドニゾン換算で1日用量30mg超)は10倍のリスク増加をもたらした(オッズ比9.6、95%信頼区間 4.3-20.5)。
ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い_e0156318_23141272.jpg

 使用期間と使用量の層別化では、用量に関係なく直近でステロイド内服をはじめた患者でPEリスクは高かった。
ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い_e0156318_2316326.jpg
結論:
 経口ステロイド治療は、特にステロイド投与後初期1ヶ月の間でのPEのリスクを増加させるかもしれない。


by otowelt | 2013-05-12 00:02 | 内科一般