2013年 05月 23日 ( 6 )

患者の好みの音楽をかけることで人工呼吸管理下の不安が軽減

患者の好みの音楽をかけることで人工呼吸管理下の不安が軽減_e0156318_23342079.jpg せん妄対策の観点からも、最近は音楽やラジオをかけているICUが多いように思います。先のATSでも音楽に関する演題がありましたね。

ATS2013:ウィーニング時に音楽をかけることで不安を軽減できる

Effects of Patient-DirectedMusic Intervention on Anxiety and Sedative Exposure in Critically Ill Patients Receiving Mechanical Ventilatory Support
A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2013;doi:10.1001/jama.2013.5670.


背景:
 鎮静薬の代替としてたとえば音楽は人工呼吸器管理下にある患者の不安をやわらげることができるかもしれない。

目的:
 人口呼吸管理下にある重症患者個人が好む音楽が不安を軽減し、鎮静薬への曝露をも減らすことができるかどうか検証すること。

方法:
 2006年9月から2011年3月までの間、5病院、12のICUから373人の患者を登録した。86%が白人で、52%が女性、平均年齢は59歳だった。平均APACHE IIIスコアは63点であった。音楽療法士が介入し、患者が好む音楽をかける群(126人)、ノイズキャンセルヘッドホンを装着する群(122人)、通常ケア群(125人)の3群に割り付けられた。
 主要アウトカムは、日々の不安アセスメント(VASスコア)および鎮静薬への曝露とした。

結果:
 患者が好む音楽をかける群では、音楽は1日平均79.8分かけた。ノイズキャンセルヘッドホン群では、ヘッドホンを1日平均34.0分装着した。混合モデル解析では、どの時期においても好みの音楽をかけた患者は不安スコアが通常ケア群より低かった(P = .003)。また音楽群において、試験5日目までに不安は36.5%減少した。また、鎮静薬の曝露についても音楽群で有意に減少した。通常ケア群と比較して、音楽群では鎮静薬強度の減少(−0.18ポイント/日 [95%信頼区間 −0.36 to −0.004]、P = .05)および頻度の減少(−0.21ポイント/日 [95%信頼区間 −0.37 to −0.05]、P = .01)がみられた。この傾向は、ヘッドホン群との比較でも同等であった(P = .04)。
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結論:
 急性期の人工呼吸管理を受けているICU患者において、好みの音楽をかけることは不安や鎮静薬の曝露の軽減をもたらすことができる。


by otowelt | 2013-05-23 22:51 | 集中治療

REDUCE試験:COPD急性増悪における5日間の短期的全身性ステロイドは14日間に非劣性

REDUCE試験:COPD急性増悪における5日間の短期的全身性ステロイドは14日間に非劣性_e0156318_13254455.jpg 自著(「寄り道」呼吸器診療)の中で、2011年のコクランレビュー(Walters JA, et al. Cochrane Database Syst Rev. 2011 Oct 5;(10):CD006897.)を加味して、「COPD急性増悪に対する全身性ステロイドは10日程度が妥当か」と書いた後にREDUCE試験が発表されました。短い方がベターである点は賛成です。

Jörg D. Leuppi, et al.
Short-term vs Conventional Glucocorticoid Therapy in Acute Exacerbations of Chronic Obstructive Pulmonary Disease
The REDUCE Randomized Clinical Trial
JAMA. 2013 doi:10.1001/jama.2013.5023.


背景:
 国際的ガイドラインでは、COPDの急性増悪時の経口ステロイド(プレドニゾロン30~40mg)は7~14日間投与することが支持されている。しかしながら、適切な用量や治療期間は不明である。

目的:
 COPD急性増悪に対する短期的な全身性ステロイド(5日間)が非短期間(14日間)の治療に非劣性であることを検証する。

方法:
 2006年3月~2011年2月にCOPDの急性増悪でスイスの5施設の救急部を受診した314人が登録された。患者はプレドニゾロン40mg/日の5日間投与群あるいは14日間投与群にランダムに割り付けられた。いずれも初回ステロイド投与は静注でおこない、2回目以降は経口で薬剤が投与された。5日間群では6日目以降にプラセボが使用された。非劣性条件を5日間群におけるCOPD再増悪の頻度が65%を超えないこと、許容限界値のハザード比1.515と設定。プライマリエンドポイントは、180日以内のCOPDの増悪とした。

結果:
 試験期間中に、314人中289人(92%)が入院した。311人がITT解析、296人がper protocol解析の対象。
 ITT解析における5日間群の14日間群に対する180日以内のCOPD増悪のハザード比は0.95(90%信頼区間0.70~1.29、p=0.006)、per protocol解析におけるハザード比は0.93(90%信頼区間 0.68~1.26、p=0.005)だった。これは非劣性の範囲内であった。
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 5日間群および14日間群の180日以内の推計COPD増悪頻度はそれぞれ37.2%(95%信頼区間29.5~44.9%)、38.4%(95%信頼区間30.6~46.3%)だった。
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 死亡までの期間、増悪または死亡、およびこれらの混合アウトカムについては両群で差は観察されなかった。
 高血糖や高血圧などの治療関連有害事象に有意差はなかった。

結論:
 COPD急性増悪患者に対する5日間の全身性ステロイド治療は、14日間の治療に比べ180日以内のCOPD再増悪について非劣性だった。


by otowelt | 2013-05-23 13:29 | 気管支喘息・COPD

ATS 2013:目次

ATS 2013:目次_e0156318_141062.jpg
現在フィラデルフィアでアメリカ胸部疾患学会(ATS)の総会が開催中です。ページが複数にわたるため目次を作成します。



ATS 2013 目次
●感染症
・大きな道路の近くに住む小児ほど呼吸器感染症を起こしやすい
・慢性緑膿菌感染を有する気管支拡張症に対してプロミキシンのネブライザー吸入が有効
・呼気に電子鼻を用いることで侵襲性肺アスペルギルス症を早期診断できる可能性がある
・入院を要する肺炎へのアジスロマイシンは循環器系副作用をやや上昇させるが総死亡率は低下させる
・長期血液透析患者の市中肺炎は医療ケア関連肺炎として扱わなくてよい?
・クロファジミン含有レジメンは多剤耐性結核に有効
・PET-CT検査で検証した潜在性結核感染と肺門部リンパ節炎の関連
・非結核性抗酸菌症に対するリネゾリドの使用
・リファンピシンの妥当な用量は?
・胸水中プロカルシトニンの有用性
・胸水中ADAが100IU/Lを超える場合、結核性胸膜炎は考えにくい

●閉塞性肺疾患
・ベルギーにおける気管支拡張症の長期生存解析データ
・中等度の気管支喘息に対するチオトロピウム吸入は吸入ステロイド薬への上乗せ効果がある
・COPD患者の6分間歩行距離370m未満は死亡の独立予測因子
・重度の気腫に対する気管支鏡的肺容積減量コイル(LVRC)は短期的・長期的にも有効
・COPD患者の身体活動レベルを増進させるための歩数計プログラム
・抑うつのあるCOPD患者ではインターロイキン6が重要な役割を持つ
・ショウガが気管支喘息に効く!?

●粉塵曝露
・世界貿易センタービル倒壊後の粉塵曝露患者における炎症と気道抵抗の関連
・世界貿易センタービル倒壊後の粉塵曝露によるサルコイドの呼吸機能とバイオマーカー

●サルコイドーシス
・サルコイドーシス患者の末梢血および気管支肺胞洗浄液ではTh17/Treg細胞比が上昇する
・慢性サルコイドーシスに対してウステキヌマブおよびゴリムマブはプラセボと比べても効果が乏しい
・線維化を伴う肺サルコイドーシスの急性増悪は、気管支拡張症患者や抗TNF治療を受けている患者に多い

●びまん性肺疾患
・特発性器質化肺炎は肺胞腔内にフィブリン沈着が高度である場合に再発しやすい
・関節リウマチによる間質性肺疾患では機能的減衰とMMP-7上昇がみられる
・関節リウマチによる間質性肺疾患における胸部HRCTのdefinite UIPパターンは、特異度は高いが感度は低い
・安静時動脈血酸素飽和度の変化は特発性肺線維症の予後予測因子である
・間質性肺疾患の診断に外科的肺生検が不要な症例
・ベースラインの6分間歩行距離が短い間質性肺疾患患者は呼吸リハビリテーションによる恩恵が大きい
・リンパ脈管リンパ筋腫症において血清VEGF-D値は疾患重症度や乳び胸と関連
・特発性肺線維症の臨床試験における肺活量と臨床的エンドポイントの解離
・特発性肺線維症の総死亡率を検証する試験は実現不可能かもしれない
・特発性肺胞蛋白症における全肺洗浄は吸入GM-CSF治療よりも再発リスクが高い
・関節リウマチによる間質性肺疾患の急性増悪のリスク因子
・クライオプローブにおける診断能
・特発性肺線維症におけるPINPOINT治療の有効性
・MUC5Bと特発性肺線維症の関連
・プロトンポンプ阻害薬は特発性肺線維症の生存期間を延長、DDAH阻害メカニズムが関与か
・テロメア長が短いと特発性肺線維症の生存期間が短縮

●集中治療
・Yステントの気管支鏡的挿入案
・血清ナトリウム値の異常はICU患者の死亡リスクを上昇させる
・ハイフローネーザルカニューラの使用により抜管後呼吸不全の再挿管を予防できる
・肺炎患者において過剰な水分バランスはアウトカムを不良にする
・ウィーニング時に音楽をかけることで不安を軽減できる
・ICUにおける非薬剤性のせん妄は予後不良

●その他
・CTガイド下生検による気胸に対する対側吸引法
・睡眠呼吸障害とAlzheimer病に発症の因果関係があるかもしれない
・マシテンタンは肺高血圧症の死亡・入院リスクを減少
・インターロイキン6と肺癌の関連
・血液検査を用いなくともLightの基準と同等の診断能が可能
・非小細胞肺癌における外科手術の人種差



by otowelt | 2013-05-23 12:00 | 呼吸器その他

ATS2013:ショウガが気管支喘息に効く!?

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ショウガと気管支喘息の緩和の関係については過去にもいくつか報告されています。
・Kuo PL, et al. Ginger suppresses phthalate ester-induced airway remodeling. J Agric Food Chem. 2011 Apr 13;59(7):3429-38.
・Ahui ML, et al. Ginger prevents Th2-mediated immune responses in a mouse model of airway inflammation. Int Immunopharmacol. 2008 Dec 10;8(12):1626-32.


ただし、検索した限りではいまだヒトに対する臨床試験で効果があったという報告はありません。

E.A. Townsend, et al.
Active Constituents Of Ginger Potentiate β-Agonist-Induced Relaxation Of Airway Smooth Muscle
ATS 2013, May 19, Poster Discussion Session


概要:
 アセチルコリン誘発性気道収縮が導入されたヒト、モルモットの気道平滑筋細胞が、イソプロテレノール、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、6-ショウガオールによって弛緩するかどうか調べた試験を報告する。イソプロテレノールの添加により、用量依存性に気道平滑筋細胞収縮は抑制されたが、6-ジンゲロール、8-ジンゲロール、6-ショウガオールを添加した場合にその効果が高くなった。6-ショウガオールの添加効果が最も大きかった。8-ジンゲロール、6-ジンゲロール、6-ショウガオールは、コントロールの0.2%DMSOと比較して強くPDEを阻害することがわかった(P<0.01)。この結果は、ショウガの天然成分がPDE4やPLCβの活性化を阻害し、cAMPを活性化することで、β遮断薬の気道平滑筋の弛緩作用を増強することを示唆するものである。気管支喘息治療にショウガを加えることで症状が改善する可能性があると考えられた。


by otowelt | 2013-05-23 08:58 | 気管支喘息・COPD

ATS2013:ICUにおける非薬剤性のせん妄は予後不良

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S.B. Patel, et al.
Survival In Drug Related Versus Non-Drug Related Delirium
ATS 2013, May 22, Mini Symposium


概要:
 ICUにおけるせん妄は予後が悪いが、鎮静薬などの薬剤によるICUせん妄と薬剤に関連しないせん妄が同等の予後かどうかは不明である。そこでわれわれはクロスオーバー試験を102人の人工呼吸器を奏装着した患者でおこなった。せん妄のない患者、薬剤誘発性せん妄の患者、非薬剤性のせん妄の患者で人工呼吸器非装着期間は、25.4日、25.5日、12.6日(p<0.001)だった。ICU非在室期間はそれぞれ23.1日、23.9日、5.7日だった(p<0.001)。せん妄がない場合や薬剤性のせん妄の場合、在宅への退院が有意に多かった(p<0.001)。非薬剤性のせん妄における1年時の死亡率は有意に高かった(p<0.001)。ペアワイズ比較では、せん妄がない場合と薬剤性のせん妄の場合ではアウトカムに差がみられなかった。


by otowelt | 2013-05-23 01:18 | 集中治療

ATS2013:抑うつのあるCOPD患者ではインターロイキン6が重要な役割を持つ

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H.C. Strollo, et al.
Systemic Inflammation Associated With Depression In COPD Independent Of Airflow Obstruction Severity
ATS 2013, May 22, Mini Symposium


背景:
 抑うつはCOPDの重要な合併症である。COPDに関連した全身性の炎症は、COPDとその合併症にとって潜在的な介在因子と考えられている。抑うつとインターロイキン6といったバイオマーカーなどの関連性についてはまだよくわかっていない。

方法:
 ピッツバーグ大学のSCCORコホートにおいて450人の喫煙者にBeck Depression Inventory (BDI) (score ≥ 10は抑うつありと定義)を受けてもらい、本試験に登録した。またSGRQスコア、UCSD息切れアンケートを登録者は受けた。気管支拡張薬投与後の呼吸機能検査、胸部CT検査による半定量的visual emphysema score、血清インターロイキン6(ELISA)が検査された。

結果:
 登録者は235人が男性(37人が抑うつあり)、215人が女性(49人が抑うつあり)、平均年齢65.3歳、平均BMIは28.0だった。GOLD分類では、Gold 0 (43.6%), GOLD 1 (15.6%), GOLD 2 (26.9%), GOLD 3/4 (7.1%), GOLD分類不能(6.9%)だった。単変量解析では、BDIは有意に一秒量(%予測値)の低下およびインターロイキン6の上昇と関連(抑うつあり:2.428 pg/ml ± 3.30、抑うつなし:1.790 pg/ml ± 1.82)していた。またBDIは高いSGRQスコア、UCSDスコアとも関連していた。年齢、BMIはBDIとは有意に関連していなかった。ステップワイズ回帰では低い一秒量(%予測値)は最も抑うつ症状の増加と関連していた(p=0.0031)。
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結論:
 抑うつのあるCOPD患者において血清インターロイキン6は上昇している。これらの結果は全身性の炎症バイオマーカーがCOPDの抑うつに関連していることを示唆するものである。


by otowelt | 2013-05-23 00:50 | 気管支喘息・COPD