2018年 06月 22日 ( 1 )

6分間歩行試験に思う

e0156318_10471371.png 6分間歩行試験(6MWT)は患者さんの、移動能力を調べて運動耐容能を評価する検査です。呼吸器内科では主に、COPDや間質性肺疾患(ILD)の運動耐容能を評価するためにおこなわれており、当院でも毎日複数の患者さんに6MWTが実施されています。

 6MWTは主に以下の目的で行われています。

・疾患によって運動能力がどの程度障害されているか知るため。
・患者さんにとってどの程度の運動が妥当であるか知るため。
・COPDやILDの重症度を評価するため、それによって日常生活がどのくらい障害されているか知るため
・労作時の呼吸困難や酸素飽和度の低下を調べるため、また酸素療法の必要性を判断するため。
・治療やリハビリテーションの効果を知るため。


※ATS(AmericanThoracic Society)のガイドライン1)では、パルスオキシメーターによる酸素飽和度測定は必要とされていませんが、日本では安全のために歩行時に酸素飽和度を測定するのが一般的です。また、特発性間質性肺炎では特定疾患の申請に際して6MWTの最低酸素飽和度の数値が必要になります。これは、6MWT における最低酸素飽和度がIPF の予後不良因子とされているためです2)

 トレッドミルのような強い運動負荷をかけるわけではありませんが、基本的に不安定狭心症や心筋梗塞のリスクが高い人は禁忌とされています。また、まったく歩行ができない介護を要する人にも6MWTは適用されません。当然です。

 6分間、ずっとどこかに向かって歩き続けるわけではなく、限られた直線コースを往復することでその距離が測定されます。しんどければ途中で休憩をとってもらっても構いません。呼吸困難感の程度の評価のために、当院では修正Borgスケールを用いています。リッカード尺度に代表される順序カテゴリー尺度とはちがい、おのおののポイント間は等間隔性を有すると考えられており、4点は2点の2倍、8点は4点の2倍という評価が可能で、同じ被験者における経時的な変化を検出するのに優れた呼吸困難感の指標だからです。

 さて、慢性呼吸器疾患だからといって運動耐容能評価のために常に6MWTを用いればよいわけではありません。もっとも注意されるべきは、変形性関節症や閉塞性動脈硬化症などを合併している進行性の歩行障害を併存している患者さんです。それらがコントロール不良の場合、6MWTの実施自体がほぼ無意味になります。

 変形性関節症の患者さんでも、その歩行距離・歩行速度が疾患の病態把握に有用で他の運動耐容能検査と相関性があるため3),4)、実施している病院もあります。しかし、整形外科疾患と呼吸器疾患の2つを有している場合、6MWTの結果がどちらの疾患の影響を反映しているのかまったく分かりません。ただでさえ、運動負荷強度の設定や再現性にバイアスがある検査なのに、評価疾患が2つあると、ワケがわからなくなってしまう。そのため、十分にコントロールされていない非呼吸器疾患がある患者さんでは、6MWTの評価は医療従事者の自己満足で終わってしまいます。

 フラフラで杖を突いている高齢者が「よーい、はじめ!」と6MWTをトライされる場合、さすがに定量的評価は厳しいだろうと思います。6分間歩行距離は、ワンポイントで評価するのではなく、経時的変化をみることが最も重要で、その日の膝の調子の良し悪しや、杖を買い替えただけでも変化することをわれわれは知っておかねばなりません。

 定量的評価という検査理念の上にあぐらをかかないようにしたいものです。これは、自らに対する戒めでもあります。


(参考文献)
1) ATS Committee on Proficiency Standards for Clinical Pulmonary Function Laboratories. ATS statement: guidelines for the six-minute walk test. Am J Respir Crit Care Med. 2002 Jul 1;166(1):111-7.
2) Nishiyama O, et al. A simple assessment of dyspnoea as a prognostic indicator in idiopathic pulmonary fibrosis. Eur Respir J. 2010 Nov;36(5):1067-72.
3) Kennedy DM, et al. Assessing stability and change of four performance measures: a longitudinal study evaluating outcome following total hip and knee arthroplasty. BMC Musculoskelet Disord. 2005 Jan 28;6:3.
4) Maly MR, et al. Determinants of self-report outcome measures in people with knee osteoarthritis. Arch Phys Med Rehabil. 2006 Jan;87(1):96-104.



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by otowelt | 2018-06-22 00:21 | びまん性肺疾患