2019年 09月 05日 ( 1 )

polymicrobialの膿胸は死亡のリスク

e0156318_10322082.jpg BUN、年齢、膿性・非膿性、院内感染、栄養(アルブミン)が膿胸の予後予測因子として知られており、これらをRAPIDスコアを呼びます(Chest. 2014 Apr;145(4):848-855)。実臨床で毎回つけているわけではありませんが、呼吸器科医はこれらの因子が予後予測因子になるのは体感的にわかるはずです。

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(RAPIDスコア)

 そんな手探りの膿胸疫学の分野において、倉敷中央病院から貴重な報告がありました。個人的には半数に歯科疾患を合併していたのが興味深かったです。

Yamazaki A, et al.
Polymicrobial etiology as a prognostic factor for empyema in addition to the renal, age, purulence, infection source, and dietary factors score
Respiratory Investigation, https://doi.org/10.1016/j.resinv.2019.06.008


背景:
 膿胸は、世界的に高い死亡率を有する重要な疾患である。しかしながら、微生物学的所見と予後予測因子についてはほとんど検討されておらず、これら因子に関するデータは不足している。

方法:
 われわれ倉敷中央病院に2007年5月から2015年9月までに入院した16歳以上の膿胸患者について、後ろ向きに解析し、前向きにデータを収集した。
 膿胸の診断基準は、①膿性胸水であること、②胸水培養が陽性であること、③胸水Gram染色が陽性であること、とした。
 胸水から微生物学的所見(培養所見)が得られた患者のみを登録した。患者背景、微生物学的所見、治療、アウトカムについてデータを集め、院内死亡の予測因子をアセスメントした。

結果:
 71人の患者が登録された(男性が47人、年齢中央値74歳)。8人(11%)が膿胸治療中に死亡にいたった。全体の51%が歯科疾患を合併しており、肝疾患・悪性疾患では死亡例が多かった。
 もっともよくみられた細菌は、Streptococcus anginosusグループ(S. constellatus, S. intermedius, 菌種同定にいたらなかったS. anginosusグループ) (37%)で、嫌気性菌(Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micraなど)(30%)がそれにつづいた。院内死亡率は11%だった。多変量解析において、polymicrobialの膿胸(オッズ比8.25、95%信頼区間1.08-62.90)、RAPIDスコア(オッズ比6.89、95%信頼区間1.73-27.40)は有意な院内死亡予測因子だった。polymicrobialの膿胸において、もっともよくみられた細菌の組み合わせは、S. anginosusグループと嫌気性菌であったが、菌の組み合わせとアウトカムの間には関連性は観察されなかった。生存群と非生存群の間に治療の有意な差はなかったが、外科手術を受けた患者全員が生存していた。

結論:
 S. anginosusグループと嫌気性菌は膿胸の病原菌としてよくみられ、RAPIDスコアだけでなく、polymicrobialの膿胸も死亡の独立予測因子だった。外科手術は死亡を防ぐ治療オプションになるかもしれない。



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by otowelt | 2019-09-05 00:33 | 感染症全般