2019年 10月 04日 ( 1 )

ATS/IDSA成人市中肺炎ガイドライン2019

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 全文が長いので、16のQ&Aサマリーを翻訳しました。

感想:
 ①Gram染色はルーチンにやるものと教わって育ったので違和感があるのですが・・・。
 ②フォローアップレントゲンなんて要りませんというのは以前から知られた知見ですが、呼吸器内科医としては「改善したことを患者さんに分かりやすく認識してもらう」「改善時のレントゲン写真を残しておく」という意義があるように思います。ダメでしょうか。
 ③世界的にレスピラトリーキノロンが流行っているのですね。

Metlay JP, et al.
Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Oct 1;200(7):e45-e67.


クエスチョン1:市中肺炎(CAP)の成人において、診断時に下気道分泌物のGram染色と培養をおこなうべきか?
 外来の成人CAPマネジメントでは、喀痰のGram染色と培養をルーチンにおこなわないことを推奨する(強い推奨)。入院の成人CAPマネジメントでは、治療前に喀痰のGram染色と培養をおこなうことを推奨する。対象となるのは、①重症CAP(特に挿管中の患者では強く推奨)、②MRSAや緑膿菌を標的とすべき患者(強く推奨)、また過去に同菌に罹患したことがある患者(特に呼吸器感染症)(条件付き推奨)、また90日以内に外来・入院を問わず抗菌薬点滴を受けたことがある入院患者(条件付き推奨)。

クエスチョン2:CAPの成人において、診断時に血液培養を採取すべきか?
 外来の成人CAPマネジメントでは、血液培養をおこなわないことを推奨する(強く推奨)。入院中の成人CAPマネジメントでは、血液培養をルーチンにおこなわないことを支持する(条件付き推奨)。入院中の成人CAPマネジメントでは、血液培養を推奨する対象は、①重症CAP(強く推奨)、②MRSAや緑膿菌を標的とすべき患者(強く推奨)、また過去に同菌に罹患したことがある患者(特に呼吸器感染症)(条件付き推奨)、また90日以内に外来・入院を問わず抗菌薬点滴を受けたことがある入院患者(条件付き推奨)。

クエスチョン3:CAPの成人において、レジオネラと肺炎球菌の尿中抗原テストは診断時におこなうべきか?
 外来の成人CAPマネジメントでは、レジオネラと肺炎球菌の尿中抗原テストをルーチンにおこなわないことを支持する(条件付き推奨)。ただし、重症CAPを除く(条件付き推奨)。
 成人CAPマネジメントでは、レジオネラと肺炎球菌の尿中抗原テストをルーチンにおこなわないことを支持するが、以下の場合を除く。①レジオネラのアウトブレイクや直近の旅行などと関連した疫学的因子がある場合(条件付き推奨)、②重症CAP(条件付き推奨)。
 成人重症CAPの場合、レジオネラ尿中抗原テスト、下気道分泌物のレジオネラ選択培地を用いた培養、レジオネラ拡散増幅検査を支持する(条件付き推奨)。

クエスチョン4:CAPの成人において、診断時にインフルエンザウイルスの検査を気道検体でおこなうべきか?
 地域にインフルエンザウイルスが流行している場合、迅速インフルエンザ分子アッセイ(拡散増幅検査など)をおこなうことを推奨する。これは、迅速インフルエンザ診断検査(抗原テストなど)よりも好ましい(強く推奨)。

クエスチョン5:CAPの成人において、治療開始を差し控えるために、血清プロカルシトニンと臨床判断の併用あるいは臨床判断単独は適用すべきか?
 初回血清プロカルシトニンの値にかかわらず、臨床的・放射線学的にCAPが疑われる成人に対して、経験的抗菌薬治療を開始するよう推奨する(強い推奨)。

クエスチョン6:CAPの成人において、外来または入院で治療開始すべきか決定するために、臨床予後予測指標と臨床判断の併用または臨床判断単独のいずれを適用すべきか?
 CAPの成人患者を入院治療するかどうか決定する上で、医師は、臨床判断に加えて、妥当性のある臨床予後予測指標を用いることを推奨する(条件付き推奨)。PSI(強く推奨)のほうがCURB-65(条件付き推奨)よりも好ましい。

クエスチョン7:CAPの成人において、一般病棟あるいはさらに高度な入院(ICU、step-down、telemetry unit)で治療を開始するかどうか決定するために、臨床予後予測指標と臨床判断の併用または臨床判断単独のいずれを適用すべきか?
 血管作動薬を要する低血圧あるいは人工呼吸器を要する呼吸不全がある患者は直接ICUへ入院することが望ましい(強く推奨)。
 血管作動薬や人工呼吸器の必要がない患者は、IDSA/ATS2007マイナー重症度基準と臨床判断を併用し、高度な入院治療が必要かどうか決定する(条件付き推奨)。

クエスチョン8:CAPの成人において、外来ではどの抗菌薬が経験的治療として推奨されるか?
 ①併存症(慢性の心疾患・肺疾患・肝疾患・腎疾患、糖尿病、アルコール中毒、悪性疾患、無脾症)あるいは抗菌薬耐性のリスク因子がない外来の健康な成人では、
 ■アモキシシリン1g1日3回(強く推奨) あるいは
 ■ドキシサイクリン100mg1日2回(条件付き推奨) あるいは
 ■マクロライド(アジスロマイシン500mg初日→250mg1日1回、あるいはクラリスロマイシン500mg1日2回、あるいはクラリスロマイシン[extended release]1000mg1日1回):ただしマクロライド耐性肺炎球菌が25%未満の地域に限る
 ②上記併存症がある患者では、
 ■併用療法
  ・アモキシシリン/クラブラン酸500mg/125mg1日3回、あるいはアモキシリン/クラブラン酸875mg/125mg1日2回、あるいはアモキシシリン/クラブラン酸2000mg/125mg1日2回、あるいはセファロスポリン(セフポドキシム200mg1日2回、あるいはセフロキシム500mg1日2回)
   +
  ・マクロライド(アジスロマイシン500mg初日→250mg1日1回、あるいはクラリスロマイシン500mg1日2回、あるいはクラリスロマイシン[extended release]1000mg1日1回)(強く推奨)あるいはドキシサイクリン100mg1日2回(条件付き推奨)
   または
 ■単独療法
  ・レスピラトリーキノロン(レボフロキサシン750mg1日1回、モキシフロキサシン400mg1日1回、ゲミフロキサシン320mg1日1回)(強く推奨)

クエスチョン9:MRSAや緑膿菌のリスク因子がないCAPの成人入院患者において、どの抗菌薬が経験的治療として推奨されるか?
 推奨9-1:MRSAや緑膿菌のリスク因子がない非重症CAPの成人入院患者において、以下の経験的治療レジメンを推奨する(優先順位なし)。
  ・β-ラクタム(アンピシリン+スルバクタム1.5~3g6時間ごと、セフォタキシム1~2g1日1回、セフトラリン600mg12時間ごと)+マクロライド(アジスロマイシン500mg1日1回あるいはクラリスロマイシン500mg1日2回)(強く推奨)
  ・レスピラトリーキノロン単剤(レボフロキサシン750mg1日1回、モキシフロキサシン400mg1日1回)(強く推奨)
 マクロライドやフルオロキノロンが禁忌であるCAPの成人に対しては、
  ・β-ラクタム(アンピシリン+スルバクタム1.5~3g6時間ごと、セフォタキシム1~2g1日1回、セフタロリン600mg12時間ごと)+ドキシサイクリン100mg1日2回(条件付き推奨)

 推奨9-2:MRSAや緑膿菌のリスク因子がない重症CAPの成人入院患者において、以下の経験的治療レジメンを推奨する。
  ・β-ラクタム(アンピシリン+スルバクタム1.5~3g6時間ごと、セフォタキシム1~2g1日1回、セフトラリン600mg12時間ごと)+マクロライド(アジスロマイシン500mg1日1回あるいはクラリスロマイシン500mg1日2回)(強く推奨)
  ・β-ラクタム(アンピシリン+スルバクタム1.5~3g6時間ごと、セフォタキシム1~2g1日1回、セフトラリン600mg12時間ごと)+レスピラトリーキノロン(レボフロキサシン750mg1日1回、モキシフロキサシン400mg1日1回)(強く推奨)

クエスチョン10:誤嚥性肺炎が疑われる成人の入院患者において、通常の経験的治療に加えて嫌気性菌をカバーすべきか?
 肺化膿症や膿胸が疑われる状況でなければ、誤嚥性肺炎を疑う場合であっても嫌気性菌カバーをルーチンに加えないことを支持する(条件付き推奨)。

※誤嚥性肺炎の多くに嫌気性菌が関与していないことがいくつかの研究で示されており(Am J Respir Crit Care Med. 2003 Jun 15;167(12):1650-4.、Chest. 1999 Jan;115(1):178-83.、Intensive Care Med. 1993;19(5):279-84.)、クリンダマイシンやβラクタム/βラクタマーゼ阻害薬といった嫌気性菌カバーの抗菌薬は、Clostridioides difficile感染症のリスクとなりうる。

クエスチョン11:MRSAや緑膿菌のリスク因子あるCAPの成人において、入院では通常のCAPレジメンよりスペクトラムを広くすべきか?
 CAPの成人に対する抗菌薬カバー範囲を選択する上で、前分類である医療関連肺炎(HCAP)を使用しないよう推奨する(強く推奨)。
 MRSAや緑膿菌の地域レベルでのリスク因子が存在する場合にのみ、CAPの成人に対してMRSAや緑膿菌を経験的にカバーすることを推奨する(強く推奨)。MRSAに対する経験的治療オプションには、バンコマイシン(15mg/kg12時間ごと、TDM要)、リネゾリド(600mg12時間ごと)が含まれる。緑膿菌に対する経験的治療オプションには、ピペラシリン-タゾバクタム(4.5g6時間ごと)、セフェピム(2g8時間ごと)、セフタジジム(2g8時間ごと)、アズトレオナム(2g8時間ごと)、メロペネム(1g8時間ごと)、イミペネム(500mg6時間ごと)が含まれる。
 臨床医がCAPの成人に対して、臨床的リスク因子に基づいているものの地域疫学データがない状況でMRSAや緑膿菌をカバーしている場合、経験的治療の初期数日後にこれら病原体の治療継続を妥当化するために、病原体が存在するかどうかを調べるため培養データを得つつ経験的カバーを継続することを推奨する(強く推奨)。

クエスチョン12:入院患者において、CAPの成人にはステロイド治療をすべきか?
 非重症CAPの成人において、ステロイドをルーチンに使わないことを推奨する(強く推奨)。
 重症CAPの成人において、ステロイドをルーチンに使わないことを支持する(条件付き推奨)。
 重症インフルエンザ肺炎の成人において、ステロイドをルーチンに使わないことを支持する(条件付き推奨)。
 CAPおよび難治性敗血症性ショックの患者におけるステロイドの使用は、Surviving Sepsis Campaignの推奨事項を支持する。

※いくつかの重症CAPの研究において、ステロイドが死亡率を下げるとされているが、重症の定義がまちまちであり、一貫性がない。

クエスチョン13:インフルエンザ検査が陽性のCAPの成人において、抗ウイルス薬を含めた治療レジメンを行うべきか?
 入院を要するCAP患者でインフルエンザ検査が陽性の場合、診断前の症状の期間に関係なく、オセルタミビルなどの抗インフルエンザ治療を処方することを推奨する(強く推奨)。
 外来CAP患者でインフルエンザ検査が陽性の場合、診断前の症状の期間に関係なく、抗インフルエンザ治療を処方することを支持する(条件付き推奨)。
 
クエスチョン14:インフルエンザ検査が陽性のCAPの成人において、抗菌薬を含めた治療レジメンを行うべきか?
 外来でも入院でも、臨床的・放射線学的にCAPの根拠がある成人患者でインフルエンザ検査が陽性となった場合、通常の抗菌薬を用いた初期治療を推奨する(強く推奨)。

※2009H1N1インフルエンザで死亡した患者の剖検例のうち30%に細菌感染症を合併していた(Am J Pathol. 2010 Jul;177(1):166-75.)。黄色ブドウ球菌、肺炎球菌、インフルエンザ桿菌の順に多い。

クエスチョン15:入院・外来で改善しているCAPの成人において、抗菌薬の治療期間はどのくらいが適切か?
 抗菌薬の治療期間は、妥当性のある臨床的安定性(バイタルサインの異常[心拍数、呼吸数、血圧、酸素飽和度、体温]、摂食可能かどうか、正常な精神状態)に基づくべきであり、患者がこれを達成するまで継続する必要があるが、合計5日間以上とする(強く推奨)。

※5日未満の治療期間を支持するデータは不足しており、たとえ5日以内に症状が軽快しても本ガイドラインでは推奨するに至らない。
※MRSAや緑膿菌のCAPは5日ではなく7日でよい。


クエスチョン16:改善しているCAPの成人において、フォローアップの胸部画像検査は必要か?
 5~7日以内に症状が改善したCAPの成人に対して、フォローアップの胸部画像検査をルーチンに再検しないことを支持する(条件付き推奨)。

※本ガイドラインでは、肺癌を合併している患者が肺炎を起こしている場合、後日肺癌が見つかることもあるが・・・という論調で話が進んでいるが、論点は果たしてそこだろうか?


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by otowelt | 2019-10-04 00:43 | 感染症全般