2020年 02月 08日 ( 2 )

2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討

2019-nCoV肺炎138例の後ろ向き検討_e0156318_9124233.png 2019-nCoV関係の論文はだいたい目を通しているのですが、138例と規模の大きな報告が出たため、ブログでも紹介させていただこうと思います。
 全体の死亡率が4.3%で、138例のうちの16%がARDSにいたっている集団であることから、日本でこれから診ることになる臨床像とは少し異なるかもしれません。
 現状、ICU入室リスクが高いのは、呼吸困難や食思不振を訴えている高齢・基礎疾患のある患者さんのようです。
 
Wang D, et al.
Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus–Infected Pneumonia in Wuhan, China.
JAMA. 2020 Feb 7


背景:
 2019年12月に、新型コロナウイルス(2019-nCoV)による肺炎(NCIP)が中国武漢で発生した。多くの人へ感染しているが、感染者の臨床的特徴の情報は限られている。

目的:
 NCIPの疫学的、臨床的特徴を記述すること。

概要:
 2020年1月1日から1月28日まで武漢大学中南医院に入院したNCIPの連続患者138人の後ろ向き単施設報告である。最終データ追跡は2020年2月3日である。

主要アウトカム:
 疫学、背景、臨床、検査、画像、治療データが収集され、解析された。重症患者と非重症患者が比較された。同病棟の医療従事者や入院患者が集団感染し、疫学的リンクを追跡できる場合、病院関連の伝播が疑われた。

結果:
 NCIPの入院患者138人の年齢中央値は56歳(IQR 42-68歳、範囲22-92歳)で、75人(54.3%)が男性だった。病院関連の伝播は、医療従事者40人(29%)、入院患者17人(12.3%)だった。
 よくみられる症状は、発熱(136人[98.6%])、疲労(96人[69.6%])、乾性咳嗽(82人[59.4%])である。咽頭痛は 24人 (17.4%)、下痢は14人(10.1%)にみられた。
 リンパ球減少(リンパ球数中央値0.8 × 109/L [IQR 0.6-1.1])が97人(70.3%)に、PT延長(中央値13.0秒[IQR 12.3-13.7])が80人(58%)に、LDH上昇(中央値261 U/L [IQR 182-403])が55人(39.9%)にみられた。
 胸部CTでは、両肺の斑状影あるいはすりガラス陰影が全例でみられた。
 ほとんどの患者は抗ウイルス治療(オセルタミビル124人[89.9%])を受け、多くの患者が抗菌薬を投与された(モキシフロキサシン89人[64.4%]、セフトリアキソン34人[24.6%]、アジスロマイシン25人[18.1%])。全身性ステロイド治療は62人(44.9%)が受けていた。
 36人(26.1%)が合併症のためICU入室を余儀なくされた。そのうちARDSは22人(61.1%)、不整脈は16人(44.4%)、ショックは11人(30.6%)だった。
 初発症状から呼吸困難の発症までの期間の中央値は5.0日で、入院までの期間の中央値は7.0日、ARDSまでの期間の中央値は8.0日だった。ICUで治療された患者(36人)とICU外で治療された患者(102人)を比較すると、ICU患者は高齢で(年齢中央値66歳 vs 51歳)、基礎疾患を有する頻度が高く(26人 [72.2%] vs 38人 [37.3%])、呼吸困難(23人 [63.9%] vs 20人 [19.6%])や食思不振(24人 [66.7%] vs 31人 [30.4%])が多かった。
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(基礎疾患と症状:文献より引用)

 ICUで治療された36人のうち4人(11.1%)がハイフロー酸素療法を受け、15人(41.7%)が非侵襲性換気を受け、17人(47.2%)が挿管・人工呼吸管理を受けた(このうち4人がECMOへスイッチ)。APACHE IIは中央値 17(IQR 10-22)、SOFAは中央値5 (3-6)だった。
 2020年2月3日時点で、48人(34.1%)が退院し、6人(4.3%)が死亡したが、残りの患者は現在も入院中である。生存して退院した47人の入院期間中央値は10日(IQR 7.0-14.0)だった。
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(治療:文献より引用)

結論:
 中国武漢におけるNCIP138人の単施設報告で、病院関連の2019-nCoVの伝播が患者41%に疑われ、患者の26%がICUでのケアを受け、死亡率は4.3%だった。




by otowelt | 2020-02-08 09:26 | 感染症全般

本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解

 本の紹介です。2020年1月27日に亀田総合病院の中島啓先生が「レジデントのための 呼吸器診療最適解」という本を出版されました。胸部画像の本も出版されており、スーパー分かりやすいので一読ください。

■参考記事:書籍の紹介「胸部X 線・CT の読み方やさしくやさしく教えます!」

本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解_e0156318_1023162.png

発売日:2020年1月27日
単行本 : 388ページ
価格 : 5,720円 (税込)
出版社 : 医学書院
著者 : 中島 啓 先生 (亀田総合病院 呼吸器内科 部長)

本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解_e0156318_13141310.jpgAmazonから予約/購入する
 
本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解_e0156318_13141310.jpg出版社から予約/購入する

 中島先生のことは昔から存じ上げているのですが、私の中では、「東の呼吸器指導医」というイメージです。ちなみに「西の呼吸器指導医」は長尾大志先生です。え?私ですか?・・・私は「呼吸器コラム芸人」っていったところですかね。うううッ・・・!(嗚咽)
 
 この本、まず目についたのはフルカラー!ここに目がいくのは執筆者病ってやつです。「医学書院バブリーですな!」とゲスい考えがよぎってしまう、いかんいかん。本の内容ですよ、大事なのは。

 中島先生の本、おそらくはレジデント・若手医師向けに描かれていますが、マニュアルマニュアル感は全然なくて、「こいうところで躓くよね」というのを症例ごとに咀嚼反芻してくれる感じです。躓いて転んだ若手医師に、手を差し伸べる優しい語り口調。「コケてんじゃねー!立てゴルァ!」みたいな昭和時代の指導とは大違いです。
 
 1単元ごとに読むだけで1パールはかならず頭に入ってくる進め方になっています。近年のトピックもふまえ、大事なポイントも全部おさえてある。昼ごはん中に1単元目を通せば、おかずなしで白米が食べられる内容ですよ。
本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解_e0156318_1002869.png
 実際の症例の画像や写真が出てくるので、呼吸器専門医でも悩みがちな膠原病関連間質性肺疾患の単元なんかは、読み応えあります。

本の紹介:レジデントのための 呼吸器診療最適解_e0156318_1004011.png

 ここからは声をひそめますが、普段から相談できる、優しくて有能な呼吸器指導医がいない若手医師にとっては、この本そのものが呼吸器指導医になってくれるでしょう。この本をテーブルに置いて酒を飲んで愚痴を吐けとまではいいませんが、ローテートしている間は常にデスクに置いておくべき一冊ですね。




by otowelt | 2020-02-08 00:48 | その他