2020年 02月 18日 ( 4 )

COVID-19:SARS-CoV-2肺炎のシステマティックレビュー

COVID-19:SARS-CoV-2肺炎のシステマティックレビュー_e0156318_2252711.png データをまとめることは重要ですが、中途半端な時期で切っているので、致死的な症例が多い印象ですね。

Kai Qian, et al.
Clinical Characteristics of 2019 Novel Infected Coronavirus Pneumonia:A Systemic Review and Meta-analysis
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.14.20021535


背景:
 SARS-CoV-2感染による肺炎(NCIP)は、2019年12月に中国武漢でアウトブレイクした。2019年2月8日時点で、37287人の確定例と813人の死亡が中国で確認されている。感染率と死亡率が高いこの危険な肺炎についてすぐに解決する必要があるが、臨床的特徴に関するギャップがある。本研究は、NCIPの臨床的特徴を調べることを目的とした。

方法:
 2020年2月8日までの電子データベースを用いてシステマティックに検索をおこなった。Newcastle-Ottawaスケールにより質を評価し、Egger testにより出版バイアスを検定した。この単一アームメタアナリシスにおいて、固定効果モデルを用いて罹患率を算出した。地理的および研究の規模に応じてサブグループ解析を実施した。

・適格基準:
①NCIPに関する情報が掲載されている
②臨床試験あるいは連続症例
③文献から臨床データが抽出可能
④少なくとも3例以上の症例がある

結果:
 合計9研究、356人の患者が本研究に登録された。平均年齢は52.4歳で、221人(62.1%)が男性であった。症状の罹患率は、咽頭痛(12.2%、95%信頼区間0.087-0.167)、下痢(9.2%、95%信頼区間0.062-0.133)、頭痛(8.9%、95%信頼区間0.063-0.125)だった。発熱、咳嗽は頻度が高かったが、研究間での異質性が高かった。一方、5.7%(95%信頼区間0.027-0.114)の患者は、無症候性であったがRT-PCRで陽性と診断された。
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(症状プールデータ:文献より引用)

 胸部CT画像では、ほとんどの患者が両側びまん性のすりガラス陰影を呈しており、crazy-paving patternが8.6%(95%信頼区間0.048-0.148)で、11.5%(95%信頼区間0.064-0.197)は明らかなCT異常所見が観察されなかった。
 プールされた死亡率は8.9%だった(95%信頼区間0.062-0.126)

※本メタアナリシスで死亡率が高かった理由は、単一アームメタアナリシスであったこと、またアウトブレイク当初の致死的な症例が組み込まれており、現在報告されている2%台より高いことと記載されている。

結論:
 われわれの知る限り、これはNCIPの臨床的特徴をさらに詳しく説明した最初のエビデンスに基づいた研究であり、予防と治療に関する次の段階を議論する上で有益である。




by otowelt | 2020-02-18 21:32 | 感染症全般

COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?

COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?_e0156318_2252711.png プレプリントばかりですいません。役に立つレベルと言えるのだろうか。

Qilin Li, et al.
A simple laboratory parameter facilitates early identification of COVID-19 patients.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.13.20022830


背景:
 2020年2月11日までに、中国全土でSARS-CoV-2感染症と確定された患者数は4万人を超えて、いまだ増加し続けている。このアウトブレイクは、現在24ヶ国におよぶ。アウトブレイクのすぐ後に、発熱やその他呼吸器症状を伴う多数の患者が殺到し、CT検査および確定のためのPCR検査に待ち時間が生じた。結果、医師は検疫または治療上の決定について迅速な診断がくだせなかった。SARS-CoV-2患者のCT検査とPCR検査を優先すべき患者の同定には実用的バイオマーカーがあればよい。COVID-19の中国国家衛生委員会ガイドラインでは、白血球の減少、リンパ球の減少という2項目が推奨されている。ここでは、好酸球減少の有用性を提示する。

方法:
 これは、2020年2月3日~2月7日までに武漢の発熱外来を受診した初診患者105人について解析した後ろ向き研究である。SARS-CoV-2の陽性・陰性とともに、臨床・検査所見を記録した。

結果:
 SARS-CoV-2陰性(SN)患者(53人)およびSARS-CoV-2陽性(SP)患者(52人)が登録された。両群の差は、単変量および多変量解析された。
 両郡で性差はなかった。SP患者(平均年齢57歳)は、SN患者(平均年齢51歳、p = 0.015)よりも高齢だった。また、SN患者は他の呼吸器病原体感染率が高かった(34% vs 9.6%、p =0.005)。臨床症状については群間差はなかった。
 ガイドラインで疑わしい患者を定義するために使用された、白血球およびリンパ球の減少についてはSN患者とSP患者で有意差はなかった。興味深いことに、大部分のSP患者(78.8%)で好酸球減少症(<20/μL)が観察されたが、SN患者では35.8%にとどまった(p <0.001)。
 白血球・リンパ球を用いるよりも、好酸球を判断材料に用いることで、感度・特異度が良好になった。
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(文献:COVID-19の血算の感度・特異度:文献より引用)

結論:
 好酸球減少を発熱および呼吸器症状と組み合わせることで、発熱外来でのトリアージに役立つかもしれない。




by otowelt | 2020-02-18 15:15 | 感染症全般

COVID-19:China CDCによる72314人の解析結果

COVID-19:China CDCによる72314人の解析結果_e0156318_2252711.png これまでで一番多い症例を報告したものです。

※2020年2月24日 JAMAに掲載されました。

Zunyou Wu, et al.
Characteristics of and Important Lessons From the Coronavirus Disease 2019 (COVID-19) Outbreak in China
Summary of a Report of 72314 Cases From the Chinese Center for Disease Control and Prevention
JAMA. Published online February 24, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2648


背景:
 中国湖北省武漢におけるCOVID-19のアウトブレイクは、世界的に流行した。そこで、われわれは2020年2月11日時点で診断された症例の記述的・探索的解析結果を報告する。

方法:
 2020年2月11日までにCOVID-19と診断された全症例をChina’s Infectious Disease Information Systemから抽出した。解析には以下のものが含まれた。①患者特性、②年齢分布、性差、③致死率および死亡率の計算、④ウイルスの広がりの地理的時間的分析、⑤流行曲線(エピカーブ)、⑥サブグループ解析。
 重症度は、軽症、中等症、重症に分類された。軽症は、肺炎がないか軽度であるものとした。中等症は、呼吸困難、呼吸数≧30回/分、酸素飽和度≦93%、P/F比<300、24~48時間以内の肺の浸潤影>50%とした。重症は、呼吸不全、敗血症性ショック、多臓器機能障害/不全とした。

結果:
 分析のために提供されたデータに基づくと、合計72314人の患者記録のうち、44672人(61.8%)が確定例、16186人(22.4%)が疑い例、10567人(14.6%)(湖北省のみ)が臨床診断例、889人(1.2%)が無症候例だった。確定例のうち、ほとんどが30~79歳(86.6%)であり、湖北省で診断されたのが74.7%、軽症例が80.9%だった。確定例では合計1023人の死亡があり、致死率は2.3%だった。9歳以下では死亡例はなかった。70~79歳での致死率は8.0%、80歳以上での致死率は14.8%だった。軽症または中等症での死亡例はなく、重症例での致死率は49.0%だった。致死率は基礎疾患のある患者で高かった。
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(患者背景:文献より引用)

 2019年12月以降、COVID-19は湖北省の外へ広がっており、2020年2月11日までに31省1386郡に影響を及ぼしている。流行曲線のピークは1月23日~26日あたりにあり、2月11日時点ではすでに減少に転じている。
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(流行曲線:文献より引用)

 合計1716人の医療従事者が感染し、武漢では1080人が感染した。医療従事者の感染例のうち、武漢では17.7%、湖北省では10.4%が中等症あるいは重症だった。5人(0.3%)が死亡した。

SARS・MERSとの比較:(JAMA論文化後に追記)
 SARSやMERSと比較すると共通点と相違点がある。共通点として動物由来であることが挙げられる。SARSは動物に由来する新型のコロナウイルスで中国広東省の市場から発生した。MERSも同様に動物(コウモリ→ラクダ)に由来してサウジアラビアで発生した新型のコロナウイルスであった。SARS、MERS、COVID-19はいずれも発熱、咳嗽などを主症状とした下気道感染を発症し、高齢者や基礎疾患のある患者で重症になる。特異的な治療法は見出されていない現状がある。相違点として、SARSは29ヶ国8096人に感染し774人が死亡した(致死率9.6%)。MERSは2494人の感染のうち858人が死亡した(致死率34.4%)。COVID-19は致死率は低いが、感染者が多いために死亡数が増大した。COVID-19の致死率は母数の問題がある。すなわち、全感染者が診断されていない可能性がある。湖北省での死亡率2.9%であるものの、それ以外の地域では0.4%と乖離が生じている。また、SARSやMERSでは多くの二次感染は病院内で発生した。COVID-19でも病院内での感染は散発的に発生したものの、全体としての影響は軽微である。湖北省以外での20省では1183のクラスターが報告されており、それぞれのクラスターは2~4人と少数だった(88%)。クラスターの64%は家族内クラスターである。基本再生産数はまだはっきりとしていないが、SARSやMERSよりは感染伝播が速やかである。


結論:
 COVID-19エピデミックは、湖北省から中国本土全体へ30日以内ですみやかに拡大した。多くの人々が長期休暇から戻ってきたため、中国は流行のリバウンドに備える必要がある。




by otowelt | 2020-02-18 07:57 | 感染症全般

肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性

肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性_e0156318_1611888.png 当院では、フルオロキノロンを肺MAC症に用いる場合、シタフロキサシン(グレースビット®)を用いることが多いです。今回の検討では入っていませんね。
 過去の報告でも、フルオロキノロンは肺MAC症の代替レジメンとして有望であることが示唆されています(J Infect Chemother. 2012 Apr;18(2):146-51.)。シタフロキサシンについては慶應義塾大学のグループから有効性が報告されています(Open Forum Infect Dis. 2019 Mar 7;6(4):ofz108)。

Khadawardi H, et al.
Clinical efficacy and safety of fluoroquinolone containing regimens in patients with Mycobacterium avium complex (MAC) pulmonary disease
European Respiratory Journal 2020; DOI: 10.1183/13993003.01240-2019


方法:
 カナダのトロントにおけるクリニックで2003年7月~2016年12月までの18歳以上の肺MAC症の患者が登録された(ATS/IDSA基準を満たしたもの)。最低でも2ヶ月以上の処方を受けた場合に、投与されたものと定義した。
 後ろ向きに、標準3剤治療(マクロライド-リファマイシン-エタンブトール)またはフルオロキノロン(シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン)を含有3剤併用レジメンを受けた場合の2群に分けて解析した。

結果:
 300人の肺MAC症の患者がスクリーニングされ、103人が解析基準を満たした。61人が標準治療群、42人がフルオロキノロン含有治療群に該当した。
 フルオロキノロン群になった患者は、リファマイシンの副作用(21%)、リファマイシンの肝障害や薬物相互作用の回避(33%)、エタンブトールの副作用(12%)などが原因であった。
 喀痰培養陰性化率は、標準治療群で64%、フルオロキノロン群で60%であった。それぞれ治療期間中央値は、8ヶ月、10ヶ月だった。
 治療中断に陥った副作用の頻度はフルオロキノロン含有治療群のほうが多かった(19% vs 3%、p=0.008)。
肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性_e0156318_17195596.png
(文献より改変引用)

結論:
 フルオロキノロンを含む3剤治療レジメンは、おおむねリファマイシンのかわりとして用いられることが多く、副作用は多いものの治療効果は標準治療群と同等である。



by otowelt | 2020-02-18 00:43 | 抗酸菌感染症