2020年 02月 19日 ( 4 )

COVID-19:浙江省における62例の臨床的特徴

COVID-19:浙江省における62例の臨床的特徴_e0156318_2252711.png 武漢外、日本では湖北省の次に流行地域として指定された浙江省から、まとまった報告です。

Xiao-Wei Xu, et al.
Clinical findings in a group of patients infected with the 2019 novel coronavirus (SARS-Cov-2) outside of Wuhan, China: retrospective case series
BMJ 2020; 368 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.m606


目的:
 COVID-19の原因ウイルスであるSARS-CoV-2に感染した中国浙江省の患者の臨床的特徴を調べること。

デザイン:
 後ろ向きケースシリーズ。

セッティング:
 中国浙江省における7つの病院。

参加者:
 PCRでSARS-CoV-2と確定した62人の入院患者。データは2020年1月10日から2020年1月26日まで収集した。

治療:
 ほとんどの患者はインターフェロンα吸入(50μg1日2回)、ロピナビル/リトナビル(400mg/200mg1日2回)、ウミフェノビル(200mg1日2回)治療を受けていた。呼吸回数が30回/分を超えるケース、酸素飽和度が93%以下のケース、多発性の肺炎があり48時間以内に50%増加するケースでは、ステロイド(メチルプレドニゾロン40-80mg/日)およびガンマグロブリン(15-20g/日)が投与された。またほとんどの症例では、7日以上発熱が続く場合やCRP3mg/dL以上の場合に抗菌薬(キノロン、第2世代βラクタム系)が併用された。

主要アウトカム:
 標準化された症例報告フォーマットを用いて得られた、体温、曝露歴、潜伏期間などの臨床データ。情報が不明確な場合、杭州のワーキンググループが明確化のために患者の主治医に連絡した。

結果:
 62人が対象となった。25人(40%)は19~40歳、33人(53%)は41~65歳、若年層は2人(3%)がそれぞれ10歳、11歳、高年層は2人(3%)が65歳以上だった(年齢中央値41歳)。
 1人のみがICUに入室した。本ケースシリーズでは死亡例はなかった。本研究では、浙江省の感染患者は誰も武漢の海鮮市場に曝露歴はなかった。全例、ヒトヒト感染によって感染していた。20人(34%)に家族内発生がみられた。
 20人(32%)が基礎疾患を有していた。7人(11%)が肝疾患、5人(8%)が高血圧、1人(2%)がCOPD、糖尿病、腎疾患、脳血管疾患を有していた。
 入院時血液検査では、19人(31%)に白血球減少(<4000/μL)がみられ、26人(42%)にリンパ球減少がみられた(<1000/μL)。D-ダイマーは正常範囲だった(中央値0.2mg/L)。10人(16%)の患者でAST上昇がみられた。
 胸部画像検査では1人をのぞいて全例に異常がみられた。42人(84%)に両側の肺炎像がみられた。
 もっとも観察された初発症状は、発熱48人(77%)、咳嗽50人(81%)、喀痰35人(56%)、頭痛21人(34%)、筋肉痛あるいは倦怠感32人(52%)、下痢3人(8%)、血痰2人(3%)だった。2人(3%)のみが入院時に息切れを訴えていた。
 曝露から発症までの潜伏期間中央値は4日だった(IQR 3-5日)。発症から入院までの期間中央値は2日(IQR 2-4日)だった。
COVID-19:浙江省における62例の臨床的特徴_e0156318_21162267.png
(治療とアウトカム:文献より引用)

結論:
 2020年2月前半時点で、武漢でSARS-CoV-2に感染した初期患者と比較すると、浙江省の患者は比較的軽症だった。




by otowelt | 2020-02-19 21:04 | 感染症全般

COVID-19:医療従事者30例の臨床的特徴

COVID-19:医療従事者30例の臨床的特徴_e0156318_2252711.png 医療従事者のCOVID-19をまとめた報告です。

Liu M, et al.
Clinical characteristics of 30 medical workers infected with new coronavirus pneumonia.
Zhonghua Jie He He Hu Xi Za Zhi. 2020 Feb 17;43(0):E016. doi: 10.3760/cma.j.issn.1001-0939.2020.0016.


目的:
 SARS-CoV-2に感染した医療従事者の臨床的特徴を記述すること。

方法:
 江漢大学病院で2020年1月11日~2020年2月3日までに入院したCOVID-19の医療従事者30人が対象となった。臨床所見、検査所見、放射線学的特徴が調べられた。

結果:
 患者の内訳は男性が10人、女性が20人で、22人が医師、8人が看護師だった。年齢は21~59歳で、平均年齢は35±8歳だった。26が軽症だったが、4人が重症だった。1人は肺炎患者と1m以内の濃厚接触があった。平均累積曝露時間は2時間(1.5-2.7時間)だった。
 臨床症状は、発熱23人(76.7%)、頭痛16人(53.3%)、倦怠感あるいは筋肉痛21人(70%)、悪心9人(30%)、嘔吐あるいは下痢9人(30%)、咳嗽25人(83.3%)、呼吸困難14人(46.7%)だった。血液検査では、白血球減少(<4000/μL)が8人(26.7%)にみられた。リンパ球減少(<1000/μL)がみられたのは、12人(40%)だった。肝機能障害が7人(23.3%)にみられた。D-ダイマー上昇が5人(16.7)にみられた。
 健常者と比較すると、感染源の患者に対する曝露時間、BMI、発熱期間、白血球、肝逸脱酵素、LDH、D-ダイマーは有意に重症COVID-19患者で増加しており、リンパ球やアルブミンは有意に減少していた。
 胸部CTでは、斑状影と間質影が観察された。11人(36.7%)が片側の肺炎像、19人(63.37%)が両側の肺炎像、4人(13.3%)に片側GGOが観察された。
 感染予防に配慮した期間と比べて、重症感染症や両側肺炎は、感染予防に配慮していなかった期間のほうが多かった。

結論:
 医療従事者は感染リスクが高い。感染率は、接触時間が長いほど上昇する。重症患者はBMIが高く、発熱期間が長く、白血球・リンパ球・D-ダイマー、アルブミンに変動がみられた。





by otowelt | 2020-02-19 16:28 | 感染症全般

COVID-19:小児34例の臨床的特徴:撤回

COVID-19:小児34例の臨床的特徴:撤回_e0156318_2252711.png 小児例は9例が全例回復したという報告が先日ありましたが、今回は34例の報告です。

※2020年2月26日現在:論文は撤回されています。

Wang XF, et al.
Clinical and epidemiological characteristics of 34 children with 2019 novel coronavirus infection in Shenzhen.
Zhonghua Er Ke Za Zhi. 2020 Feb 17;58(0):E008. doi: 10.3760/cma.j.issn.0578-1310.2020.0008.


目的:
 SARS-CoV-2感染の小児の臨床所見や疫学の特徴を記述すること。

方法:
 2020年1月19日~2020年2月7日までに深圳市第三人民医院において、咽頭ぬぐい液のRT-PCRでCOVID-19と確定した小児34人を解析対象とした。臨床データと疫学について後ろ向きに調べた。

結果:
 34人のうち14人が男児で20人が女児だった。年齢中央値は8歳11ヶ月だった。基礎疾患を有する小児はいなかった。28人(82%)が家族内でアウトブレイクした症例だった。湖北省への渡航あるいは居住歴があったのは26人(76%)だった。22人(65%)が典型的COVID-19の病型で、9人(26%)は軽症、3人(8.8%)が無症候性だった。重症例、重篤例はいなかった。よくみられた症状は発熱(17人、50%)、咳嗽(13人、38%)だった。
 34人のうち、白血球は28人(82%)で正常だった。5人の末梢血白血球数が10,000/μL以上だった。1人に白血球減少がみられた。好中球減少とリンパ球減少はそれぞれ1人ずつみられた。CRPは1人、赤沈は5人で上昇していた。プロカルシトニンが上昇していたのは1人で、D-ダイマーは3人で上昇していた。LDHが400U/L以上だったのは10人だった。
 胸部CTでは、末梢優位の、多発性斑状あるいは結節性すりガラス陰影、浸潤影が観察された。
 20人がロピナビル/リトナビルで治療された。ステロイドと免疫グロブリンは誰も使用されなかった。
 全例回復して退院した。

結論:
 小児のCOVID-19は非典型的になることがあるが、概して成人より軽症である。胸部CT検査は初期診断に有用である。小児例はおもに家族内のアウトブレイクに起因している。





by otowelt | 2020-02-19 11:38 | 感染症全般

COVID-19:主要薬剤のドッキング解析

COVID-19:主要薬剤のドッキング解析_e0156318_2252711.png 国内では国立国際医療センターの前例もあってか、重症例にはカレトラ®を用いることが主流になっているでしょうか。
 SNSでは「政府は新型インフルエンザ用に備蓄していたアビガン®という特効薬があることを隠蔽しようとしている」というデマが流れていますね。
 ちなみに、クリキシバンはもう使われていませんね。

Yu-Chuan Chang, et al.
Potential therapeutic agents for COVID-19 based on the analysis of protease and RNA polymerase docking.
Preprints, doi:10.20944/preprints202002.0242.v1


背景:
 2019年12月に、中国の武漢でCOVID-19感染が発生した。2020年2月14日の時点で、60,000人を超える症例と1,000人を超えるの死亡が報告されている。エビデンスのある抗ウイルス剤が入手できないため、医療専門家は支持療法に頼らざるをえない。しかし、現在の研究では、適切なウイルス抑制メカニズムを備えた薬剤を選択すると良好な結果が得られることが示唆されている。
 タイのラジャビティ病院では、感染症チームは抗インフルエンザ薬であるオセルタミビルと抗HIV薬であるロピナビル/リトナビルを組み合わせて使用し、重症患者を治療した。ロピナビルとリトナビルはどちらも、HIVプロテアーゼ阻害剤である。また、抗エボラウイルス薬であるレムデシビルは、多くの臨床試験において、in vitroでさまざまなRNAウイルスに対して有効であることが証明されている。

方法:
 この研究では、主要プロテアーゼである3CLプロテアーゼと、RNA複製の主要タンパクであるRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)を標的受容体として選択した。タンパクとリガンド間の結合親和性をシミュレートするため、2つのドッキングソフト、AutoDock Vina(バージョン1.1.2)およびRosettaCommons(バージョン3.11)を使用した。各リガンドに対して100回反復し、薬剤ごとの最終的な平均親和性スコアを得た。

結果:
 3CLプロテアーゼとドッキングする10リガンドの結果をみると、AutoDock Vinaの場合、インジナビルのドッキングスコアが最も低く、ロピナビル/リトナビルよりも優れていた。RosettaCommonsでは、10種類すべての薬物が同様のスコアだったが、アンプレナビル、アタザナビル、ダルナビルのパフォーマンスはわずかに優れていた。
COVID-19:主要薬剤のドッキング解析_e0156318_8521446.png
(3CLプロテアーゼ関連:文献より引用)

 AutoDock VinaとRosettaCommonsを使用したRdRpへの4リガンドのドッキングスコアをみると、レムデシビルは両ソフトで最良のドッキングパフォーマンスを発揮した。レムデシビルが他の薬剤候補と比較して最も安定したドッキング構造を有していると考えられる。
COVID-19:主要薬剤のドッキング解析_e0156318_854466.png
(RdRp関連:文献より引用)

結論:
 インジナビルとレムデシビルがタンパクポケットと親和性の高いドッキング構造を持ち、潜在的な治療薬になる可能性があることを明らかにした。





by otowelt | 2020-02-19 09:10 | 感染症全般