2020年 02月 21日 ( 4 )

COVID-19:武漢と上海の不安・行動変容

COVID-19:武漢と上海の不安・行動変容_e0156318_2252711.png こういったタイプの報告はいずれ出てくるだろうと思っていました。興味深く読みましたが、やはりプレプリント。
 プレプリントでたまに明らかなデマみたいな論文が出てくることがありますが、読んでみて怪しすぎると思ったものは紹介していません。
 直近では、COVID-19は生物兵器だというものがありましたね。

Mengcen Qian, et al.
Psychological responses, behavioral changes and public perceptions during the early phase of the COVID-19 outbreak in China: a population based cross-sectional survey
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.18.20024448


目的:
 SARS-CoV-2感染の脅威に対する心理的および行動的反応と、中国における一般認識との関連を調査すること。

デザイン:
 2020年2月1日~10日までのランダムな集団ベース電話調査。

場所:
 武漢と上海。
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(武漢:文献より引用)
COVID-19:武漢と上海の不安・行動変容_e0156318_22252558.png
(上海:文献より引用)

参加者:
 18歳以上の武漢市民510人、上海市民501人。

主要アウトカム:
 不安(GAD-7スケール)、規定された6行動。行動は、公共交通機関の回避や外出を控えるといった「回避行動」と、旅行プランの見直しや環境表面の清掃励行といった「とるべき行動」を調査。

結果:
 中等度あるいは重度の不安(GAD-7スコア10点以上)は武漢被験者の32.7%(167人)、上海被験者の20.4%(102人)にみられた。その頻度は武漢のほうが有意に高かった(p<0.001)。平均GAD-7スコアは武漢被験者7.1点、上海被験者5.1点だった(p<0.001)。
 事前に規定された6つの行動は、武漢被験者は78.6%(401人)、上海被験者は63.9%(320人)がとっていた。いずれの評価項目からも、武漢被験者はアウトブレイクに敏感であることが分かった。個々の特性で調整すると、ロジスティック回帰分析では中等度あるいは重度の不安は、危険性の意識(オッズ比1.6、95%信頼区間1.3-1.8)、疾患重症度(オッズ比1.6、95%信頼区間1.4-1.9)、情報信頼性の混乱(オッズ比1.6、95%信頼区間1.5-1.9)と関連がみられた。病気から身を守るための対策を講じる自信は、これらのリスクの低さと関連していた(オッズ比0.6、95%信頼区間0.5-0.7)。行動変容を予測する最も強力な予測因子は、危険性の意識(オッズ比1.2、95%信頼区間1.1-1.4)、情報信頼性の混乱(オッズ比1.1、95%信頼区間1.0-1.3)だった。

結論:
 COVID-19に対する精神的・行動学的反応は、アウトブレイクの段階で劇的に変化する。われわれの研究によれば、高い不安レベルに対処するために、正確かつ信頼できる情報を迅速に普及すべきと言える。




by otowelt | 2020-02-21 22:30 | 感染症全般

COVID-19:94例の胸部CT所見の推移

COVID-19:94例の胸部CT所見の推移_e0156318_2252711.png Radiologyから、COVID-19の94例の画像推移をまとめた報告です。

Bernheim A, et al.
Chest CT Findings in Coronavirus Disease-19 (COVID-19): Relationship to Duration of Infection
Radiology, Published Online:Feb 20 2020https://doi.org/10.1148/radiol.2020200463


方法:
 この後ろ向き研究では、2020年1月18日~2020年2月2日までに中国の4施設から121人の有症状COVID-19患者の胸部CT画像データを臨床症状と照らし合わせた。発症時期によって以下のように区分した。

・早期群:発症0~2日目(36人)
・中期群:発症3~5日目(33人)
・後期群:発症6~12日目(25人)


 基本的に連続患者を登録したが、18歳未満の症例は省いた。すべてのCT写真は、2人の独立した読影医によって解析された。発症時期が不明の症例27人をのぞいて、94人が解析対象となった。
COVID-19:94例の胸部CT所見の推移_e0156318_181573.png
(患者背景:文献より引用)

結果:
 特筆すべきことに、早期群の36人中20人(56%)が正常の胸部CT所見だった。症状発現から期間を経ると、胸部CTで浸潤影や両側・末梢優位、広範囲の肺野病変、線状影、crazy-paving pattern、revese halo signといった異常所見は頻度を増していった。早期群の患者では36人中10人(28%)、中期群の患者では33人中25人(76%)、後期群の患者では25人中22人(88%)に両側性の陰影が観察された。
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(浸潤影と葉分布:文献より引用)
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(陰影:文献より引用)
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(経時的変化:文献より引用)





by otowelt | 2020-02-21 18:24 | 感染症全般

COVID-19:鼻腔・咽頭のウイルス量の推移

COVID-19:鼻腔・咽頭のウイルス量の推移_e0156318_2252711.png NEJMの短報ですが、ウイルス量の推移はインフルエンザウイルスと類似のパターンと考えてよさそうです。

Lirong Zou, et al.
SARS-CoV-2 Viral Load in Upper Respiratory Specimens of Infected Patients
NEJM, February 19, 2020, DOI: 10.1056/NEJMc2001737


概要:
 COVID-19の患者17人と濃厚接触者1人の、鼻腔と咽頭におけるウイルス量を経時的に調べた研究結果(CORRESPONDENCE)。18人(9人が男性、9人が女性、年齢中央値59歳[26-76歳])からの鼻腔・咽頭スワブ検体72を解析したもの。そのうち4人が二次感染例で、1人は無症状。
 ウイルス量は、発症初期からかなり高く、おおむね2週間かけて徐々に減少し陰性化に向かう傾向にあった。咽頭よりも鼻腔のほうが高いウイルス量であった。この結果は、SARS-CoV-2に感染した患者のウイルス排出パターンはインフルエンザ患者と類似しており、SARS-CoVとは異なるように見える。
 無症候性の濃厚接触者も、ウイルス量としては症候性患者のそれと類似しているため、無症候性または最小限の症候性であっても伝播する可能性が示唆される。
COVID-19:鼻腔・咽頭のウイルス量の推移_e0156318_17205869.png
(鼻・咽頭スワブのウイルス量:文献より引用)




by otowelt | 2020-02-21 15:39 | 感染症全般

COVID-19:SARS-CoV-2は病初期からTリンパ球が減少する

COVID-19:SARS-CoV-2は病初期からTリンパ球が減少する_e0156318_2252711.png SARSもMERSも、CD4・CD8陽性Tリンパ球は病初期から減少することが知られており、COVID-19も同様の推移のようです。

Guang Chen, et al.
Clinical and immunologic features in severe and moderate forms of Coronavirus Disease 2019.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.16.20023903


背景:
 2019年12月末以降、SARS-CoV-2による重症急性呼吸器症候群の肺炎例のアウトブレイクが武漢から始まり、中国全土、世界へと拡散した。今日まで、COVID-19の免疫学的特徴については報告されていない。

方法:
 単施設後ろ向き研究において、武漢同済医院でPCR確定SARS-CoV-2感染者を2019年12月19日~2020年1月27日まで同定した。免疫学的特徴だけでなく、臨床的、検査的、放射線学的特徴を11人の重症例と10人の中等症例で比較した。
 重症例はSpO2≦93%、呼吸数≧30回/分と定義され、それ以外を本文献では中等症とした。

結果:
 COVID-19患者21人のうち4人(19%)のみが海鮮市場の曝露歴を有していた。7人(33.3%)が基礎疾患を有していた。平均年齢は重症例63.9歳、中等症例51.4歳で、重症例の10人(90.9%)、中等症の7人(70.0%)が男性だった。よくみられた臨床症状は、発熱(100%、100%[それぞれ重症、中等症])、咳嗽(70%、90%)、倦怠感(100%、70%)、筋肉痛(50%、30%)だった。P/F比は重症例のほうが有意に低かった(122.9 vs 366.2)。リンパ球も重症例のほうが低かった(700/μL vs 1100/μL)。ALT、LDH、高感度CRP、フェリチンは重症例のほうが有意に高かった。入院時のIL-2R、TNF-α、IL-10も重症例のほうが高かった(1202.4 pg/mL vs 441.7 pg/mL, 10.9 pg/mL vs 7.5 pg/mL , 10.9 pg/mL vs 6.6 pg/mL)。総Tリンパ球数、CD4陽性T細胞数、CD8陽性T細胞数は、ほとんどすべての患者で減少しており、重症例のほうが中等症例よりも有意に低かった(332.5 vs 676.5、185.6 vs 359.2、124.3 vs 272.0)。CD4陽性T細胞のインターフェロンγ発現は、重症例のほうが低い傾向だった(14.6% vs 23.6%)。

結論:
 SARS-CoV-2は早期にTリンパ球、特にCD4陽性T細胞を侵すかもしれない。これによりインターフェロンγ産生が減少し、重症度と関連する可能性がある。臨床的特徴とともに、Tリンパ球の減少やサイトカインの上昇を含む初期の免疫学的指標は、COVID-19の予後に関する潜在的なバイオマーカーとして役立つ可能性がある。




by otowelt | 2020-02-21 03:46 | 感染症全般