2020年 02月 22日 ( 3 )

COVID-19:140例の解析からみたリンパ球と好酸球の関係

COVID-19:140例の解析からみたリンパ球と好酸球の関係_e0156318_822360.png まさかAllergyにCOVID-19の論文が掲載されるとは。好酸球にスポットをあてた研究ですね。これは、以前紹介したプレプリントの論文でも指摘されていました(以下の参考記事)。

・参考記事:COVID-19:好酸球減少がSARS-CoV-2陽性診断に寄与?

Zhang JJ, et al.
Clinical characteristics of 140 patients infected by SARS-CoV-2 in Wuhan, China.
Allergy. 2020 Feb 19. doi: 10.1111/all.14238.

 
背景:
 SARS-CoV-2感染による重症急性呼吸器症候群であるCOVID-19は世界中に拡大している。われわれは、SARS-CoV-2に感染した患者の臨床的特徴とアレルギーステータスを調べた。

方法:
 COVID-19の診断で武漢市第七医院に入院した患者140人の電子カルテから、背景、臨床所見、併存症、臨床データ、放射線学的データを抽出し、解析した。

結果:
 男女比はほぼ1:1だった(男性50.7%)。年齢中央値は57.0歳だった。全体の70%が50歳以上だった。入院したCOVID-19の患者は全員市中発症である。入院時、82人が非重症、56人が重症と診断された。
 発熱(91.7%)、咳嗽(75.0%)、倦怠感(75.0%)、消化器症状(39.6%)がもっともよくみられた症状である。基礎疾患としては高血圧(30.0%)、糖尿病(12.1%)が多かった。アレルギー疾患については、薬剤過敏症(11.4%)と蕁麻疹(1.4%)が報告された。喘息その他アレルギー疾患を報告した患者はいなかった。COPD(1.4%)と現喫煙者(1.4%)の存在はまれだった。
 134人(99.3%)は入院時に胸部画像検査で異常が確認された。両肺のGGOあるいは斑状影(89.6%)がよくみられた所見だった。
 リンパ球減少(75.4%)、好酸球減少症(52.9%)がほとんどの患者にみられた。3日目以降の血液検査において、血中好酸球数はリンパ球と正の相関をとった(重症例:r=0.486, p<0.001、非重症例:r=0.469, p<0.001)。血清D-ダイマー、CRP、プロカルシトニンは重症患者のほうが高かった(p<0.001)。
COVID-19:140例の解析からみたリンパ球と好酸球の関係_e0156318_15522760.png
(入院時初回検査所見:文献より改変引用)
COVID-19:140例の解析からみたリンパ球と好酸球の関係_e0156318_15594121.png
(好酸球とリンパ球:文献より引用)

結論:
 入院COVID-19患者140人の解析では、リンパ球減少症に好酸球減少症を合併していることが多かった。アレルギー疾患、喘息、COPDはSARS-CoV-2感染のリスク因子ではなかった。高齢者、併存症の数、血液検査における複数の異常は患者の重症度と関連していた。




by otowelt | 2020-02-22 16:01 | 感染症全般

COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播

COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播_e0156318_822360.png 1つの家族内クラスターから考察した、無症候性キャリアからの伝播について、JAMAの報告です。
 確かにこの推理が一番可能性が高そうですが、患者6が発生源の可能性もあると思います。

Yan Bai, et al.
Presumed Asymptomatic Carrier Transmission of COVID-19
JAMA. Published online February 21, 2020. doi:10.1001/jama.2020.2565


背景:
 SARS-CoV-2は中国武漢からアウトブレイクしたウイルス性肺炎の原因微生物である。ヒトヒト感染が報告されているが、われわれの知る限り、胸部CTが正常のSARS-CoV-2無症候性キャリアからの伝播については報告がない。

方法:

 2020年1月、河南省安陽市の第五人民病院に入院した発熱と呼吸器症状を訴える5人と1人の無症候性の家族内クラスターを登録した。全患者は胸部CTを撮影された。鼻咽頭スワブによるリアルタイムRT-PCRが検査された。

結果:
 無症候性キャリアの患者1は20歳女性で、武漢在住だが2020年1月10日河南省安陽市に旅行した。1月10日、彼女は親族である患者2、患者3と接触した。1月13日、彼女は5人の親族(患者2~6)に同行して、安養市の別の入院親族の見舞いに行った。ちなみにその病院ではCOVID-19の症例はいなかった。患者1の親族が発症し、彼女は隔離および観察下に置かれた。2月11日時点で、彼女は体温の上昇もなければ、自己申告での発熱や消化器症状、咳嗽・咽頭痛などの呼吸器症状もみっられず、主治医もこれを認知していない。胸部CTが1月27日、31日に撮影されたが、異常なかった。彼女の末梢血のCRPとリンパ球は正常だった。RT-PCRは1月26日に陰性だったが、1月28日に陽性となり、2月5日・8日は陰性だった。
 患者2~6は全員COVID-19を発症した。4人は女性で、年齢は42~57歳だった。これら親族の誰一人として武漢渡航歴はなく、また渡航者との濃厚接触歴もなかった(患者1を除く)。
 患者2~5は、1月23日~1月26日に発熱と呼吸器症状を訴え、同日入院となった。全例初日のRT-PCRでCOVID-19と診断された。患者6は1月17日に発熱と咽頭痛を訴え、地域のクリニックを受診したが、COVID-19の診断はくだされず、数日かけて軽快した。しかしその後1月24日に再度増悪し、1月26日にCOVID-19の診断で入院した。
 発症者は、胸部CTにおいて全員多発性GGOが観察され、1人は亜区域性の浸潤影と線維化を伴っていた。有症状者は末梢血のCRPが上昇しており、リンパ球が減少していた。
COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播_e0156318_10244270.png
(概要:文献より引用)

ディスカッション:
 まとめると、中国安陽市でみられたCOVID-19肺炎患者5人を含む家族内クラスターは、その発症前に武漢中心部から旅行してきた無症候性の家族1人と接触していた。これらの連続イベントから分かることは、コロナウイルスは無症候性キャリアから伝播するということである。
 患者1の潜伏期間は19日であり、過去の報告の0~24日のレンジの中の長い位置にある。彼女の初回RT-PCRは陰性だった。この検査には偽陰性があるが、基本的には偽陽性は考慮されない。ゆえに、2回目のRT-PCR結果は偽陽性とは考えにくく、家族内クラスターにおけるCOVID-19のコロナウイルスと考えるのが自然だろう。
 過去に10歳の小児が無症候性COVID-19感染症を有していたことが報告されているが、胸部CTでは異常がみられている(Lancet. 2020;395(10223):514-523.)。無症候性キャリアによる感染が推定される、本報告のような事案が再度起こるならば、COVID-19のヒトヒト感染を予防することは難しくなる。無症候性キャリアがCOVID-19の原因となるコロナウイルスを獲得および伝播させるメカニズムについては、さらなる研究が必要である。




by otowelt | 2020-02-22 10:18 | 感染症全般

COVID-19:武漢のICU入室例52例の後ろ向き観察研究

COVID-19:武漢のICU入室例52例の後ろ向き観察研究_e0156318_822360.png Lancet Respiratory Medicineから、武漢市金銀潭医院のICU症例をまとめた報告です。
 油断できないのはこういうデータがあるからですね…。一定のラインを超えると、かなり厳しいアウトカムが待っています。

Xiaobo Yang, et al.
Clinical course and outcomes of critically ill patients with SARS-CoV-2 pneumonia in Wuhan, China: a single-centered, retrospective, observational study.
Lancet Respir Med 2020, February 21, 2020


背景:
 2019年12月に武漢で発生したSARS-CoV-2による肺炎のアウトブレイクが続いている。重症患者についてのSARS-CoV-2感染症の情報は不足している。われわれは、SARS-CoV-2肺炎に罹患した重症患者の臨床経過とアウトカムを記述することとした。

方法:
 単施設後ろ向き観察研究において、2019年12月から2020年1月26日までに武漢市金銀潭医院のICUに入室した52人の重症SARS-CoV-2肺炎患者を登録した。
 重症患者は、人工呼吸器を要するかFiO2が最低でも60%以上要するICU入室者と定義された。
 背景、症状、検査データ、併存症、治療、臨床アウトカムが収集された。データは、生存者と非生存者で比較された。プライマリアウトカムは、2020年2月9日時点での28日死亡率とした。セカンダリアウトカムには、SARS-CoV-2関連ARDSおよび人工呼吸器装着を要した患者比率が含まれた。

結果:
 710人のSARS-CoV-2肺炎のうち、重症例52人が登録された。平均年齢は59.7±13.3歳で、35人(67%)が男性、21人(40%)が慢性疾患を有していた。
 51人(98%)に発熱、40人(77%)に咳嗽、33人(63.5%)に呼吸困難がみられた。
 32人(61.5%)は28日時点で死亡しており、非生存者のICU入室から死亡までの期間中央値は7日(IQR 3-11日)だった。
 生存者と比較すると非生存者は高齢で(64.6±11.2歳 vs 51.9±12.9歳)、ARDSに進展しやすく(26人[81%] vs 9人[45%])、人工呼吸器管理(侵襲性・非侵襲性のいずれも)を要しやすかった(30人[94%] vs 7人[35%])。P/F比中央値は生存者103.8(IQR66.6–126.7)、非生存者62.3(IQR 52.0–74.1)で、初日のAPACHE IIスコア中央値はそれぞれ14 (IQR 12–17)、18 (IQR 16–20)で、SOFAスコア中央値はそれぞれ4 (IQR3–4)、6 (IQR4–8)だった。
 ほとんどの患者が臓器傷害を合併し、35人(67%)にARDS、15人(29%)に急性腎傷害、12人(23%)に心損傷(高感度トロポニンIが>28 pg/mL)、15人(29%)に肝機能障害、1人(2%)に気胸がみられた。37人(71%)に人工呼吸器装着を要した。院内感染は7人(13.5%)の患者にみられた(カルバペネム耐性 Klebsiella pneumoniae血流感染が1人、気道感染症は5人[アスペルギルス、ESBL産生 Klebsiella pneumoniae、緑膿菌など])、尿路のCandida albicans感染が1人)。
COVID-19:武漢のICU入室例52例の後ろ向き観察研究_e0156318_902649.png
※表の一部に明らかな計算ミスがあったので、個人的に修正記載した。
(臨床所見:文献より引用)
COVID-19:武漢のICU入室例52例の後ろ向き観察研究_e0156318_955367.png
(生存曲線:文献より引用)

結論:
 SARS-CoV-2肺炎のある重症患者の死亡率は相当なものである。非生存者の生存期間はICU入室から1~2週間である。基礎疾患を有する高齢者(>65歳)、ARDSは死亡のリスクを上昇させる。SARS-CoV-2肺炎の重症度は、特に十分な人員やリソースがない場合に、病院の集中治療ケアに多大な負担となる。





by otowelt | 2020-02-22 08:39 | 感染症全般